物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

『量子力学の冒険』3

2019-02-11 12:15:57 | 物理学

『量子力学の冒険』のつづきを、さらに昨日の日曜日に読んだ。これは4章と5章である。第4章はde Broglieの電子の波動性の仮説からSchr"odingerの波動方程式である。それから第5章は波動方程式とマトリックス力学の等価性である。

さらに、第6章のBornの確率解釈のところまで読んだ。これで、この書をほとんど読んだことになる。

特に力が入っていると感じたのは、波動方程式とマトリックス力学の数学的な同等性を示すところである。こんなに詳しく同等性を示してある本ははじめてである。その同等性はもちろん知っていたのだが。

まだ完全に読み終わっているわけではないが、実質的にはほとんど読み終わったと言ってもいいだろう。この本をもっと簡略にした本を書くことができればいいのだが。

私自身は結構、外国語にも関心があるので、それについてのこの本の中の外国語についての言及は楽しませてもらったが、そういうリマークが嫌いな人もいるだろうし、そういうちょっと、量子力学の本筋からはずれた、気を散らされるようなことがないほうがいいのではないか。 

そういう判断をしている。量子力学は量子力学で閉じているほうが望ましい。

私などは学生のときに、1年半にわたって量子力学の講義を聞き、また4年生になって、セミナーで1年間、量子力学の本を読み、またさらに教師として30年以上にわたって、量子力学について教えてきた。

しかし、『量子力学の冒険』を書いた人たちは長い人でも7年間、短い人では1年間の学習である。もっともそれが30人以上の人々の経験を結集して、この本を書いた。

一人の人(たとえば私)の長期間の経験と、短い期間だが、多数の人の経験とがある意味では等価だという感じをもつ。一人の人間なら、長い期間かかる認識が多数の人だと比較的短期間に経験できると思う(注)。

それに、量子力学について、わかったところだけでも、自分がある種の発表として人前で話すことは貴重な経験であろう。

『量子力学の冒険』(ヒッポファミリクラブ)はそういう意味で世界的にもあまりない、貴重な本といえるだろう。もっともそれを読みこなせる人は私のような専門家を除いてどれくらいいるのだろうか。

ある意味では、私などはこの分野の専門家であるが、それでも読んで得るところがある。すくなくとも量子力学の面白さをもう一度、新たに体験させてもらった。

生きているうちに一度は量子力学のテクストを書きたいと思っているが、その希望が叶うのかどうかは私自身にもわからない。

この本には書かれていないが、量子力学で重要なことの一つにスピン角運動量まで含めた「角運動量」がある。これはある程度専門家にならないと、重要性が理解できないことであろう。

(注)統計力学で「相平均」が「時間平均」と同等だとみなすという話があるが、これに似ている。『量子力学の冒険』を書いた人たちが相平均であり、私が時間平均にあたる。