分岐点がわからないなどというと、道が分かれるところ(地点)だろ?とか言われそうだが、そういう意味ではない。
複素解析とか昔は関数論といわれた数学の分野がある。そこで使われる専門用語に分岐点(branch point)というのがある。
そして、その分岐点と関連してリーマン面がある。このリーマン面と関連して分岐点が定義されることが多いのだが、その説明がなんだか持って回ったような定義でよくわからなかった。
すべての複素解析の本を読んでみたわけではないので、一言でわかるような説明をしたテクストもあるのかもしれないが、ほとんどのテクストは伝統的な説明で、そのような説明できちんと分岐点のことがわかる人もおられるのだろうと思うと世の中には頭のいい人がなんと多いのだろうと感心する。
私などは「わからん、わからん」といつも頭を抱えていた。よく出てくる例としてy^{2}=xという関数があるが、これはy=\sqrt{x}とy=-\sqrt{x}にかきかえることもできる。すわなち、ある x の値に対して y の値は2つあるわけである。
こういうときに関数を1価に表すために2枚のリーマン面を考える。そしてそれで関数を1価の形に表すことができる。ところがx=0のところとx=無限大のところはもともと2価ではなくて、x=0とy=0とは1対1になっている。
こういう点を分岐点というのである。一般に多価関数である関数がある特定の点ではその多価性がない、特別な点がある。そういう点を分岐点という。
現在の私の分岐点という専門用語の定義の理解はこのようである。この理解については『数学散歩』『物理数学散歩』(国土社)に書いておいた。
このことは実は私の存じあげていた故安倍斉先生の『応用関数論』(森北出版)から学んだことである。