いまの時期、道の両脇にたくさん咲いています。
和琴半島自然探勝路でも一番目につきます。
アイヌの人たちにとって、
重要な植物のひとつであったトリカブトは、
北海道全域で、基本、〈スルク〉と呼ばれていたそうです。
自身もアイヌである知里真志保氏が著したアイヌ語辞典によると、
各地での呼び名が19種類も収録されています。
日本語の命名由来は、
舞楽の装束として頭にかぶる鳥兜に似ているから、
鶏冠(ニワトリのとさか)に似ているからなどと言われています。
確かに、その姿形は高いプライドを感じさせるに十分な品が備わっています。
〈スルク〉とは、トリカブトの「根」のことを指しますが、
中には、「(触れたものにからんで身動きできなくする)根」とか
「(それに付いて急がせる)根」などと、
さらなる形容詞(それも意味深な)を含む言い方もあるらしく…。
アイヌの人たちにとって、
重要な植物のひとつであった理由は、
このトリカブトによって狩猟の際に使う毒矢が作られたからです。
トリカブトを採取するときにはイナウ(木で作った幣)を捧げる
産地によって毒の強弱が違う(○○産は強いことで有名)
毒矢の作り方はコレコレこうする
トリカブトの根以外に、○○とか○○の毒を加える
毒の効果の確かめ方はこうやる…などなど、
トリカブトの扱い方に関する伝承や記録は比較的多く残っています。
ちなみに、
アイヌの人たちの物語(ユーカラ)では、トリカブトは女神として登場します。
キムンカムイ(アイヌ語でヒグマのこと)を仕留めたときは、
「右手をスルクカムイ(トリカブトの女神)、左手を松ヤニの女神がとってくれて、
アイヌの国に連れてきてくれた」という言い方をします。
矢の先にくぼみを作ってその中にトリカブトの毒を塗り付けるわけですが、
そのものだけでは付きが悪い。
なので、ノリの役目として松ヤニを用い、粘り気を出すということです。
よって、トリカブトと松ヤニはいつもセットです。
ところで。
巨体のヒグマを倒せるくらいの毒を持つトリカブトですから、
そんな毒が体内を回ったヒグマの肉をアイヌの人たちが口にして大丈夫だったのでしょうか?
そこが自然界で生成される毒と、
人工的に作られる毒との違いともいわれています。
トリカブトの毒矢が当たった箇所を中心に、
ほんのちょっと大きめにえぐりとれば問題なかったそうです。
このトリカブトの根は、
適切な処置を施されたうえで漢方薬としても用いられています。
生かすも殺すもトリカブト…ということですね。
***
川湯エコミュージアムセンター http://www6.marimo.or.jp/k_emc/
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます