KAWAYU EMC スタッフのひとコマ(弟子屈町・川湯温泉・阿寒摩周国立公園・屈斜路湖・摩周湖など)

川湯エコミュージアムセンターの職員が写す日々の季節の移ろい、出来事をどうぞ Kawayu EMC staff diary

月が消えた!

2014-10-09 13:08:48 | アイヌつれづれ(about Ainu)

みなさま、

昨晩は3年ぶりとなる皆既月食をご堪能いただけましたでしょうか?

 

いつもの流れ?ですと、ココで画像をドカン!とご覧いただくのですが、

天体写真担当のスタッフが本日不在のため(笑)

後日お見せ…できるかどうかもお約束できませんが、まあ、そんな状況です。

 

今では、ずーっと先の年まで日付けの断定はもちろんのこと、

月の出や部分月食の始まりと終わり、皆既月食の時間までが分刻みで判明しているわけですが、

そのようなことが理解されていなかった時代に生きていた人たちは、

さぞかし驚いたことでしょうね。

 

アイヌの人たちが暮らす地(アイヌモシリ)では、

太陽も月も、本来は「天体」という意味で「チュ」と呼んでいたとか。

 

その後、太陽はそのまま「チュ」といい、

月のことは“暗い天体”ということで、「クネ(暗い)チュ」と使い分けるようになったようです。

 

日食は彗星の出現や地震などと並んで、

アイヌの人たちを恐怖に陥れた自然現象でした。

 

それはそうですよね。

あるとき突然、雲に隠れるわけでもないのに太陽が消えていくなんて…。

 

魔物に飲みこまれつつあるに違いない!と思い込み、

祈りを捧げたり、踊り狂ったりと、それはそれは必死だったようすが記録にも多く残っています。

「太陽が・死ぬ」「太陽の・心臓が・病む」「太陽が・飲まれた」など、表現もさまざまです。

 

一方で、月食はと言うと、

「月が・死ぬ」「月が・飲まれる」といったように日食同様の表現が見られるものの、

なんとなく冷静な対応です(笑)

 

どうも、日食に比べて月食は見る機会が多かったこと、

(頻度的には日食の方が多いですが、

月食は月の見られるところなら地球上のどこからでも観望できるのに対し、

日食は条件があるため)

食の時間が長くゆっくりとした変化だったから、あまり慌てなかったのではないかとみられています。

 

ちなみに、

「月が青く見えれば吉兆、赤く見えれば…」という言い伝えもあったようですが、

皆さんは何色に見えたでしょうか?

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川湯エコミュージアムセンター  http://www6.marimo.or.jp/k_emc/ 

 


下の空を司る神の妹

2014-09-28 09:59:55 | アイヌつれづれ(about Ainu)

近ごろは、少々見慣れてしまった感がある虹の出現です。

 

屈斜路湖畔にあるコタンの露天風呂では今朝、

虹をみながらの湯浴みが楽しめました。

 

昔のアイヌの人たちは、

ラヨチ(虹のアイヌ語)を神の渡る橋と信じていました。

しかも、どちらかというと魔神が下りてくるためのもので、

人間を呑みこもうと追いかけてくるとして、

とても恐れていたといいます。

 

ちなみに、ラヨチとは下の空を司る神の妹です。

アイヌの人たちの考えでは、天上に向かって六層の世界があり、

人間が住む地から近い所から順に、

まず「霧の空」があり、その上に「下の空」、その上に「雲の空」、

その次が「本当の雲の空」と続き、「星の空」があり、最も高いところには

神々の国である「上天」があるとされています。

 

そんなラヨチが結婚する前に、

本当は白色で作らなければならない布物を、

いろいろな色の布きれを集めて作ってしまったため神々の怒りに触れてしまい、

罰として魔物にされてしまったとか。

 

確かに、虹が出現するときの周囲には、

不釣り合いなほど黒い雲が残っていることが多く見受けられます。

 

到底人間の力が及ばない自然現象に対し、

美しさよりも不気味さのほうが上回ったのだろうと思います。

 

皆さんには、どのように感じられるでしょうか。

 

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魔除け

2014-07-11 13:10:30 | アイヌつれづれ(about Ainu)

キンムトーやポンポン山でたくさん見かけた、この植物。

 

つる性の植物で、

他の植物にからみつきながら伸びていきます。

 

日本語ではイケマ。

生馬とか活馬という漢字が充てられます。

 

このイケマという名は、アイヌ語のイケマが転用されたものともいわれます。

「イ=それの、ケマ=足」を言い表しますが、

“それ”とは、カムイ=神を指していて、

つまりは神の足=植物の足=根を示しているのです。

 

アイヌの人たちは、独特の臭いをもつこの植物の根を、

食料としても、薬用としても、そして魔除けとしても大いに利用しました。

 

病気がはやったときには病魔除けとして。

悪い夢を見たときには夢祓いとして。

家族の中に遠方へ出かける者がいるときは、安全を祈って必ず身に着けさせたといいます。

 

アイヌ語では「ペヌプ」、「汁・もつ・もの」を意味します。

そのとおり、枝葉を切ると白い汁が出てきます。

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1年の後半スタート!

2014-07-01 10:47:51 | アイヌつれづれ(about Ainu)

きょうから7月ですね!

 

…ということは、今年も半分の月が去って行ってしまい、

残すところあと6か月!?

 

屈斜路周辺に暮らしていた、

先住民族アイヌの人たちの表現だと、

現暦の7月は「モマ・ウタ・チュ〈女性もよく働く月〉」だそうです。

 

昔のアイヌの人たちは、

男女の分担をしっかりと分けていて、

山猟や魚漁は男性、山菜や木の実の採集などは女性の仕事とされてきました。

 

7月は、ハマナスの実も入り始めるし、

女性が食料をもっとも多く採取できる月-だというわけです。

 

最近だと、ハマナスの実が付き始めるのは、もう少し遅い時期になりますが、

いまは花が盛りを迎えています。

北海道内でよく見られるハマナス

 

白バージョンもあります

 

八重ハマナスは、

自生している一重ハマナスの稀な変異としてなくはないようですが、

ほとんどが外来園芸種として輸入されています。

 

ハマという名前が示すとおり、

海岸の砂丘や草地、山地のれき地で多く見られるこのハマナス。

中国地方の日本海側から北海道にかけて広く分布しているようです。

 

北海道では、

“北海道の花”に指定されているほどよく見られますが、

兵庫県などでは絶滅危惧種になっているとか。

 

たまには、

ゆっくり観察してみるのもいいのでは?

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素性の良い木

2014-06-19 14:11:37 | アイヌつれづれ(about Ainu)

昨日のブログに掲載した画像は、

職業体験に来ている弟子屈高校生が撮影してくれたのですが、

そのうちの1枚が、

静かな反響を呼んでいるようなので(笑)

追加情報です。

 大きいものでは長さが40センチにもなる葉っぱが特徴的なこの樹木は、

ホオノキ(ホウノキとも呼ばれる)です。

 

ちょうどクリーム色の花が咲いているのですが、

葉っぱと同様に、こちらも花びらとしてはビッグサイズです。

 

モクレン科の樹木だけあって、

上品な香りが漂っています。

 

花の真ん中から飛び出しているのが果実なのですが、

もちろんこちらも大きめです。

 

このあと、だんだんと赤みがかり、

いずれは褐色へと変化していきます。

 

以前拾った実がセンターに展示してあるので計測してみたところ、

17センチくらいありました。

 

先住民族アイヌの人たちは、

しばしば樹木を擬人化した表現をするのですが、

ホオノキは「柔らかくて素性の良い木」となります。

 

細工がしやすいため、

弓矢の矢を入れる筒(アイヌ語で「イカヨプ」)や小刀の鞘、槍の柄などを作ったそうです。

 

樹高が20メートルほどになるので、

花も上のほうにつくことが多く、

なかなかアイレベルで見ることがムズカシイのですが、

これはおススメ。

 

川湯エコミュージアムセンターの近くにある川湯自然保護官事務所のすぐそばに

立ってます。

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さわやかに、6月スタート♪

2014-06-01 11:38:55 | アイヌつれづれ(about Ainu)

みなさ~ん。

今日から6月ですね。

 

移りゆく1日ということでは、ほかの日となんら変わりありませんが、

区切りとして設けられていると、

毎月の「ついたち」というのは、ちょっと気が引き締まる感じが(私としては)します。

 

古今東西、

人は月の満ち欠けだとか、

動物や植物の動きなどで時間や季節の流れを感じてきました。

 

北海道の先住民族アイヌの人たちにも、

独特の表現があったようです。

 

現暦の5月(旧暦4月)は「モキウタ チュプ」=静かなる採取月

現暦の6月(旧暦5月)は「シキウタ チュプ」=大いに採取できる月

そしてシキウタ・チュプは「サク チュプ」=夏の始まりです。

 

大いに採取できるモノ、

その主役は「ハル イッケウ」=食料の背骨と称されたオオウバユリの鱗茎です。

 

オオウバユリは花が咲くようになるまで、

数年~10年ほどかかるといわれていますが、

鱗茎を採るのは花が咲かないうちのものです。

 

この“ユリ根”からは、良質なデンプンが多く採れるのです。

一番粉、二番粉、そしてデンプン滓に至るまで、

ムダなく利用されました。

 

1882(明治15)年ごろ、西川北洋によって描かれたアイヌ風俗絵巻の中にも、

オオウバユリを採集するアイヌ女性たちの姿があります。

 

オオウバユリ掘りだけでなく、

山菜を採りに行くときなどは1人で行くことはなく、

たいていは3人から5人くらいの女性で出かけたとか。

 

わいわい、がやがや賑やかに、

キムンカムイ(ヒグマ)と遭遇しないための対策でもあったと思われますが、

それ以上に、若い人と年上の人がともに行動することで、

探し方や採り方、処理の仕方などが受け継がれていく、大切な時間だったのでしょう。

 

オオウバユリの葉を見るたびに、

遠い昔のひとときに、思いを馳せてしまいます。

* 

周辺は、日に日に緑が濃くなってきています。

植物の生命力を感じに、

森の中に出かけてみませんか!

 

センターでは、

リアルタイムな情報を用意してお待ちしておりますので、

ぜひお立ち寄りくださいね!

 

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クンネ レク カムイ

2014-04-20 11:12:29 | アイヌつれづれ(about Ainu)

ここのところ、

道路ではエゾリスたちが横切ることが多いので、

より慎重な走行を心掛けております。

 

そんなわけで、

前方、左右をキョロキョロしながら進んでいたところ…。

 

んっ?

むむっ?

えっ??????

 

何か…

枝とは違う何かが視界に入ったぞ???

 

気持ち的には大急ぎで、

が、動きは慎重に…。

 

で、目の前には−

ホントに?

マジで?

 

野生で、かつカメラに収められるくらいの距離で見られたのは初めてです!

アイヌ語で「クンネ(夜) レク(鳴く) カムイ(神)」=エゾフクロウ。

そういえば、アイヌの人たちは、

「クマの居所を鳴き声で教えてくれる鳥だ」と。

 

クマ…???

鳴いていたわけではないから、

大丈夫だよね…?

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春告獣

2014-04-04 10:24:34 | アイヌつれづれ(about Ainu)

今朝はまどろみの中、

心地よい音が耳に届き、目が覚めました。

 

何か月ぶりかの雨-。

春を告げる音。

雪解けが一気に進みそうです。

 

山の中のどこかで、

この冬に生まれたエペレ(子グマ)たちも、

初めて見る雨をフシギそうに眺めているかもしれないなあ…

思わず、そんなことを考えてしまいます。

 

先住民族アイヌの人たちは、

ヒグマのことを「キムンカムイ」と呼びました。

キムンは山、カムイは神のことです。

 

日本国内の陸上で暮らす動物としては、最大級の大きさを誇るヒグマ。

それでいて、冬の間は食べ物を口にすることなく穴にこもり、

おまけに出産という偉業をやってのけるこの動物を、

アイヌの人たちが「神」と称賛したのは、十分すぎるほど理解できます。

 

アイヌの人たちは、

自分たちにとって有益なものにしか名前を付けなかったといわれています。

 

植物を例にとるとわかりやすいかもしれませんが、

たとえば「トマ」というのは、「エゾエンゴサクの根茎」“だけ”を指します。

根茎は食料としたためです。

花そのものを愛でるというよりは、

実用的なものとしての利用価値のほうが高かったのでしょう。

 

で。ヒグマです。

アイヌの人たちはヒグマに対し、

1歳のクマ

2歳のクマ

3歳のクマ…から始まり、

おとなしいクマ

冬が来ても穴に入らずに山野をうろついているクマ

胴や手足の長い性悪のクマ…などに至るまで、

分かっているだけでも80以上の呼び方を使っていたとか。

 

それだけ、アイヌの人たちとヒグマの間には

強い関係があったのです。

 

-と、そんなことを書き始めるともっともっと長くなるので、

今日はこのへんで止めておきます(笑)。

 

そんなヒグマたちも、そろそろ目覚めの時期だなあ…と思いながら、

通勤道を車で走っていると、

あと、数百メートルで川湯温泉街に入るというあたりで…

 

むむっ?

一旦は通り過ぎてしまった車を慌ててバックさせてしまいました。

 

実は、明日4月5日から5月11日まで、

北海道では「ヒグマ注意特別月間」となっているのです。

 

山菜採りやハイキングなどで、

人間が山に入る機会が増えるこの時季は、

ヒグマと遭遇する機会も増えるわけです。

 

私としては、

ヒグマに対しても「人間注意特別月間」を広報してあげないと…と思うのですが。

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カパッチリ・カムイ

2014-03-17 12:29:43 | アイヌつれづれ(about Ainu)

通勤途中で、目があいました(笑)

1700年代後半から1800年代前半にかけて相次いで発行された蝦夷地の古い記録

=「蝦夷図説(蝦夷島奇観)」「蝦夷草紙」「東遊記」などによると、

蝦夷地はワシの尾羽の産地で、諸国諸大名の弓の矢羽に使うために移出され、

それがアイヌの手によって捕られたことが記されています。

 

オオワシはアイヌ語で「kapatcir カパッチリ」とか「kapatcir kamuy カパッチリカムイ(ワシ・神)」といい、

カワウソやテン、アザラシ、ラッコなどの皮やクマの皮、胆などと並び、

本州向けに交易された狩猟物とともに軽物と呼ばれ、

アイヌが生産し高値で取引される商品でした。

松前藩や幕府によって専売品とされましたが、集荷は場所請負人が行っていたため、

しばしば不正の対象にもなったとか。

軽物のほとんどを生産できる蝦夷地の東部地域は交易の一大拠点であり、

ゆえに自立的なアイヌ社会が保持されたといわれます。

 

当時、1羽分の尾羽を1尻、10尻を1把、1把が米4斗(1俵)から8斗に相当したといいますから、

いかに価値の高いものとして扱われたかがうかがえます。

 

ちなみに、カムイと称されたオオワシに対し、

同じワシでもオジロワシにはカムイと呼ばれていた記録は見当たりません。

どうやら尾羽の枚数がオオワシは14枚でオジロワシは2枚少ない12枚ということが

影響しているようだとも伝えられていますが、

はたして…!?

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コタン コロ カムイ

2014-03-07 12:16:05 | アイヌつれづれ(about Ainu)

すみません。

シマフクロウの話になると、黙っていられないスタッフSです。

 

昨日に続き、

シマフクロウの話におつきあいくださいm(_ _)m

 

シマフクロウのシマとは、

“縞”模様…ではなく、北海道という“島”という意味なんですよ。

みなさん、ご存じでしたか?

 

先住民族アイヌの人たちは、

「コタン コロ カムイ」(集落の守り神)と呼びます。

(地域によっては、「モシリコロ カムイ/大地を守る神」とも)

 

自然界の動物や植物、気象現象など、

あらゆるものをカムイと崇めてきたアイヌの人たちは、

その優位に順番など付けませんが、

ツートップだけは暗黙の了解で決まっています。

 

シマフクロウとヒグマ(「キムンカムイ」)です。

 

圧倒的な存在感に加え、

真っ暗闇でも目や耳がきくシマフクロウは、

アイヌの人たちが寝静まったあとの集落を、

しっかりどっしり見守ってくれるのです。

 

昔は道内各地で姿を見ることができたといいますが、

住む森がなくなり、エサとなる魚が住む川がなくなりつつある今、

道東を中心に140羽ほどしか生息していないとみられています。

 

人間と絶妙な距離を保ちながら暮らしていたであろうようすは、

もはや想像するしかできないわけで、

つくづくその時代がうらやましくてなりません。

 

ところで。

北海道の民芸品店では木彫りのフクロウが多く並んでいます。

 2種類あるって、ご存じでしたか?

 

頭にツノみたいなものが立っているのは、シマフクロウ。

耳のような羽毛(羽角)を表しています。

 一方、頭の部分がツルンとしているのが、エゾフクロウ。

 

興味があったら、見比べてみてはいかがでしょうか?

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