去年か一昨年だったと思うが、圀府寺司著『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書)を読んだ。ユダヤ教は偶像崇拝を禁じている。描くことも見ることも禁じてきた民の「美術をめぐる静かな闘争」の物語、と銘打つだけに、なかなかに面白い内容だった。
実は、私的に一番興味深かったのは、序章「緋の十字」である。それによると、ベラスケスは「コンベルソ」(改宗したユダヤ人)だった可能性があるという。「ベラスケスの(サンティアゴ騎士団への)入会審査記録においては彼が貴族の家系であったことも、純粋なキリスト教徒の家系であったことも証明されておらず、結局、国王フェリペ4世の勅命により超法規的な例外措置として入会を許されていたらしいことがわかってきた」とのこと。
※参考↓:『西洋美術研究4』(大高保二郎:「封印された野望-ベラスケス 平民から貴族へ」)
http://www.sangensha.co.jp/allbooks/index/070J.htm
今回「プラド美術館展-ベラスケスと絵画の栄光」を観て、珍しく図録(ハードカバーが重い!)を買ったのも、その詳細への興味もあったのだが、残念ながら展覧会でも図録でも触れてはいなかった。まぁ、そーゆーものなのでしょうね、きっと