山浦清美のお気楽トーク

省エネ、農業、飛行機、ボウリングのことなどテーマ限定なしのお気楽トークができればと思っております。

TPPについて(20)-強いものが生き残るのか、生き残ったものが強いのか?

2013-07-29 | 農業

 テレビで、あるIT企業が農業に進出したケースが紹介されました。そのインタビューの中で、「今までの農業は家庭菜園の延長みたいなもので、果たして産業といえるのか?」と疑問を呈しておられました。そして、「強い農業となって勝ち残れるようにならなければならない。」と・・・。

 一方で、佐賀県唐津市在住の農民作家である山下惣一さんは、「生き残ったものが強いのだ。何としても生き残ってみせる。」と仰っておられます。

 かつて地球上には恐竜が繁栄していました。これは強いものの代表といえるでしょう。しかし、環境の変化に適応できずに絶滅したことはよく知られているところです。その後の地球上には、環境の激変に耐えて生き残ったものが繁栄しております。人類もその一つで、今や地球上にのさばり、他の生物を圧倒し、あまつさえ地球環境を破壊するにまでに至っております。

 恐竜は他の生き物を圧倒する強さで、当時の地球上にのさばっていたものと思われます。その強さの所為で、絶滅に追いやられた種は一つや二つではすまないでしょう。巨大な生き物は、その生命を維持するために大量の食料を必要とします。何らかの原因で食料が絶たれたとき、一番弱いのが巨大な生き物なのです。弱小の生き物は、少量の食料で生きていけるように効率的に出来ております。

 さて、強い農業を目指すといわれております。大規模経営であったり、スマートアグリであったりするのでしょうか。大規模経営で利益を大きくするためには、単一作物を作付けせざるを得ないでしょう。スマートアグリにしても、慣行農業に比べると格段に初期コストが掛るでしょう。となると高収益性の作物に限られることになります。収益があがる作物が、そんなに沢山あるとも思えません。行き着く先は、結局のところ価格競争といったことになります。それはそれで勝手にやってくださる分については文句を言う筋合いにはありませんが、弱いと言われている現在の農業を巻き込み、そして淘汰することの無いように願いたいものです。

 食卓に並ぶ食べ物はバラエティーに富んでおります。当然のこととして、大規模経営やスマートアグリが見向きもしない作物の方が多いでしょう。それを一体誰が作るのでしょうか。全て輸入品で賄うということでしょうか。そんなことはあり得ません。儲かりもしないものをわざわざ日本人のために作る奇特な方がいるとは思えません。

 やはり、日本の食卓は日本人の手で守るしかないのです。勝ち残れるような強い農業だけでは、日本の食卓は守れません。先のIT企業が馬鹿にした家庭菜園の延長みたいな農業があったればこそ、何とか維持できてきたという側面があるということも見逃せないと思います。いわゆる自給的な零細農家は、実に多くの作物を栽培しております。自家消費で余った分については、直売所で販売するなどして地域の食卓を豊にしております。山下惣一さんが提唱されている地産地消(地域の人達が、地域の農家を喰い支える)といった関係が、ある意味本来の農業のあり方ではなかったのではないかと思います。このような農業は、とてもではありませんが産業といえるものではありません。果たして、農業は産業でなければならないのかといった疑問を持っております。

 強い農業といわれるものが恐竜のような末路を辿らないことを祈るばかりです。

<参考> 「TPPについて(13)-攻めの農業って?」「TPPについて(16)-高付加価値農産物について」「TPPについて(17)-農業の経営規模拡大の行き着く果ては?」「TPPについて(18)-六次産業化とはいうものの・・・」「スマートアグリについて」「スマートアグリについて(2)」「スマートアグリについて(3)