靴紐を結び直すためにしゃがみ込んでいた。犬が道と間違えて僕の懐に飛び込んできた。ふわふわとして犬は暖かかった。しばらくの間、犬は間違いに気づかないようだった。鼻を鳴らし、匂いを嗅ぎ、立ち止まり、座り込み、歩き出し、警戒し、興味を示し、まわってみせた。「ありがとう。まちがえてくれて」心の中で犬に感謝しながら、僕はずっと道の振りをしていた。ふわふわとした犬の体に癒されながら、僕はどんどん元気になっていくようだった。(ああ。犬ってこんなにすごいんだな)自分が道になって初めて犬の力を知ったような気がした。曲がり角の向こうから、誰かを呼ぶ声がした。犬の耳が激しく反応している。尾を立てて僕の頬をピシャリと弾いた。飼い主の声で正しい道を思い出したようだった。犬は勢いよく僕の中から抜け出した。「ありがとう。助かったよ」
いつの間にか靴紐はきつく結ばれていた。
いつの間にか靴紐はきつく結ばれていた。
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