眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

レクイエム

2011-09-15 01:51:26 | ショートピース
硝子の向こう側では、青白い光が激しく散っているのが見える。回転と共に演奏は狂おしいばかりの熱を帯びて、いよいよ香りが立ち上ってきた。壮大なオーケストラの演奏が終わると、静寂の扉を開けてついに主役が飛び出してくる。テーブルの上に載った豚さんは、今が食べ頃だ。 #twnovel

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やや侍

2011-09-15 01:19:50 | ショートピース
「そんな人はおりませんな」鑑定士は慎重に刀を抜き取ると一点の染みも見落とさぬ目で見つめた。人を切ったことがない者などいるものか。「おかしい」一点の曇りも見つけられず、首をひねった。「私はずっとひとりきりでした」侍は静かに口を開くと刀の表面にその眼光を合わせた。 #twnovel   

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カラー

2011-09-13 03:29:46 | ショートピース
「俺たちは案外綺麗じゃないか」売り尽くされて肩の荷を下ろしたイエローハンガーが言った。「ヒーローみたいじゃないか」ブルーハンガーが言う隣にはレッドとグリーンが肩を並べている。「写真を撮ろう」皆が並ぶ。「虹みたいね」モノクロハンガーが言う。店の外は長い雨だった。 #twnovel   
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石ころ  

2011-09-09 19:40:33 | ショートピース
歩く度に石がひっかかり躓いた。蹴飛ばして先に進むとまたひっかかり、蹴飛ばすと先生が腹で受け止めた。「何かの罠ですか?」「いいえ、これはチャンスです」僕はそれから蹴飛ばすことをやめて拾うことにした。石はよく見ると光って見え、集めているといつの間にか友達になった。 #twnovel  

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星のレストラン 

2011-09-09 03:09:34 | ショートピース
「もう1つもらってもいい?」既に火星や水星を平らげた後だったが、まだ満足できずにフードファイターは尋ねたのだった。「どうぞ。いくらでも」姉は答えた。「でもあと4つになっちゃうよ」弟は心配そうに言ったがもう手は次の星に伸びていた。いいの。「次の銀河を見つけるから」 #twnovel

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永眠 

2011-09-09 02:47:37 | ショートピース
止まったままの時計を直しも捨てもせず、長い間部屋の片隅に放置している。それでもある瞬間にはそれは真実の時を指していて、私を錯覚と期待の中に誘い込むことがある。長い旅を終えた父は、両手を胸に木箱の中で目を閉じていた。そして、突然、いびきをかき始めたのでした。 #twnovel   

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幻の犬

2011-09-08 03:09:34 | ショートピース
まあかわいいねとありもしない頭を撫でれば、犬も犬でうれしそうにキャリーバッグに飛び掛り愛想を振りまいている。かわいそうに犬も飼い主に似てしまったのだろう。私はおかしな犬とおばあさんと別れて家路を急いだ。ここは犬の散歩道。壁には「犬のフン大歓迎」と書かれている。 #twnovel

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旅の始まり 

2011-09-01 21:23:08 | ショートピース
列車が動き出すのを待って本を開くと活字と風景が同時に流れ出す。いつも結末は終点に間に合わないためいつまでも物語は同じ道筋を繰り返し辿るだけだった。「しおりなさい」ある時、駅長さんが本を傷つけずに印を残す紙切れをくれた。「ありがとう」それは新しい旅の切符だった。 #twnovel

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しあわせ 

2011-09-01 20:21:04 | ショートピース
テーブルの上にはフランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、様々な言葉が飾られていて、「さあ、どれでもあなたは好きに口にすることができるのよ。」けれども、こんなにたくさん並んだテーブルを見るのは彼は初めてだった。うれしさと戸惑いが交錯して、まだ手を伸ばせない。 #twnovel   

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裸電球

2011-09-01 19:31:07 | ショートピース
何年振りのことか60Wの電球が、突然切れた。オンになったスイッチと暗い部屋の中を照らし合わせて確信を持ちながら、その一瞬前に微かに聞いたかもしれない特別な音の記憶は揺らいだままだった。首都トリポリを支配下に置いた反政府勢力は、カダフィ大佐の拠点を制圧し終えた。 #twnovel

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さよならを合図に

2011-09-01 03:09:39 | ショートピース
雲の下の人を見下ろし「俺たちも早くメジャーに上がりたいな」と落ちるのを中断していた雨粒はつぶやいた。「試合が終わることを待ってるくせに」もう一粒が応戦する。九回裏アスレチックス松井が待望のさよならホームランを打つと、それをサインに雨たちは地上に向かって降りた。 #twnovel

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SEVEN 

2011-09-01 02:29:50 | ショートピース
道を歩いているとセブンイレブンを見つけた。フランスパンの端から端まで歩いて行くと冷凍庫があって、中にたこやきを見つけて取り出した。観察した後、元に戻して扉を閉めるとすっかり雲って中の様子は見えなくなった。「お見送りの方はお下がりください」店員さんの声が聞こえた。 #twnovel  

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スローライフ

2011-09-01 02:06:24 | ショートピース
ゆっくり歩こう。吊橋の上を牛が渡るように、少しも進んでいないように見える足取りで投票箱へ向かう我々を人々が見守る。ゆっくりと開こう。一夏を費やして朝顔が花開くように、あたかも時間が止まっているように見える慎重さで一枚の紙に触れる指先を、人々が我慢強く見つめる。 #twnovel

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クラウド・シャンプー

2011-09-01 01:25:00 | ショートピース
在庫を抱える必要から解放された町には銀行も図書館もなくなって、ゆとりと自然の増えた散歩道をいつものように全力で駆け抜けた男は、家に着くと早速シャワーのスイッチを入れる。頭を差し出すとインターネットから直接シャンプーが注がれる。男は昨日、単身越してきたところだ。 #twnovel 

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