下駄箱を開けるとあふれ出てくる
何足もの靴
革靴 長靴 スニーカー
ほとんど履いた形跡がないものもある
クローゼットを開けるとあふれ出てくる
ハンカチ ハンカチ ハンカチ
どれだけ手を洗うことがあるのか
靴下 靴下 靴下 靴下 靴下
どれだけ履いたら穴があくというのか
どこまでも
きっと父はどこまでも歩くつもりだった
地球を何周も何周も何周も
それでももっともっと遠くまで
歩いて行くつもりだった
引出を開けるとあふれ出してくる
メモ メモ メモ メモ メモ
次の引出にも 次の引出にも
その次にも メモ メモ メモ メモ メモ
どれだけアイデアが眠っているというのか
どこまでも
きっと父はどこまでも想像するつもりだった
閃いて閃いて閃いて
書き留めて書き留めて書き留めて
いつも残す術がないと不安で
不安で不安で不安で
心は地球よりもずっとずっと大きい
フリマのように品を広げた母
「一つ持って行く?」
新品にみえるハンカチを一つ選んだ
(どうせ僕は使わないだろうけど)
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