うどんと言えば天ぷらだろうか。いや、うどんと言えば焼き鳥だ。いやいや、うどんと言えばフライだろう。いやいや、うどんと言えばパンだよ。うどんの隣に置いておきたいものは、人それぞれかもしれない。
メインのうどんを注文すると先に進み、小皿の上に何かしらの天ぷらを選んで置く。並んでいる天ぷらは、適当な数と種類があることが望ましい。(少なすぎては残り物のようで寂しく、多すぎてはアマゾンの倉庫のようで手に余ってしまう)数種類みえる天ぷらの中から1つ、2つと自分の意思で選ぶことが楽しい。前はこれだったけど、今日は(今日も)これにしよう。今日はこれだけども、今度はあれにしよう。目に映るものは多くとも、すべてを置けないことはわかっている。何かを選ぶということは、何かを選ばないことでもある。喜びの中には切なさも含まれるということだ。これは職探しでも、パン選びでも、共通して言えることかもしれない。
「dカードはお持ちですか? 楽天ポイントはお持ちですか? gooアカウントはお持ちですか? 目覚めの悪い日はありますか? 現在の回線速度に満足してますか? 殴ってやりたい上司はいますか? 暑くないですか? 該当するところに丸をつけてください」
うどんを食べるだけでも、ある程度の意思表示は必要になる。それが現代的な飲食・サービスのあり方なのだろう。
「ぶっかけと、海老、かしわ……、1300円とちょっとになります」
「おーい! 出汁はどこや?」
「か、かえるが出たー!」
店内は外国人観光客の姿も多く、活気にあふれている。所々にセルフならではのカオスもあって、それも含めてうどんの醍醐味であるかもしれない。いずれにしろ、僕はまた日曜日にうどんを食べに来るだろう。あの角の街中華が定休日だから。