「急に1000万カットなんて生活が成り立たんよ」
「そうだ!そうだ!」
「ビール1杯いくらすると思ってんだ!」
「ビールなんて飲まなくていい」
「そうだ。ワインにしなさい!」
役員会は荒れに荒れた。
「ワインの方が高いだろうが」
「それはものによるんじゃないの?」
「そうだ!そうだ!」
「パチスロ1日いくらになると思ってんだ?」
「ギャンブルじゃないか。いくらでも足りませんよ」
「1000万も突然すぎるでしょう!」
「そうだ!そうだ!」
役員会は大荒れとなった。1000万の不満が会議室全体を揺るがしている。意見をまとめることは至難の業である。
「ハンバーガー1ついくらだと思ってるんだ!」
「食パン食べてる方が健康的ではないですか」
「そういう問題じゃない!」
「あいつら牛丼食わせとけよ」
「そうだ! 職員のボーナスカットしろ!」
「そうだ! バイトの時給下げろ!」
「まあまあ、そこはコンプラですから……」
議長が過激な発言を宥めようとする。しかし、荒れ放題となった役員会を制御するには力量が足りない。その後も役員たちから次々と不満の声が噴き出す。
「ロボットにさせればいい」
「そうだ!そうだ!」
「何にせよ1000万も突然減らすなら明確な根拠を示してくれなきゃ」
「その通りだ!」
「CD1枚いくらすると思ってるんだ!」
「そんなものは必要ですか。圧縮すればいいのでは?」
「円盤が好きなんだよ!」
「そうだ!そうだ!」
荒れ果てた役員会に終わりはみえなかった。突然の1000万カット。それを容易く飲み込んでみせるほど素直な人間は一人としていなかった。けれども、突然、ノックもなく会議室のドアが開いた。
「はい、みんなそのまま、動くな!」
「何だお前たちは?」
「東京トップ特権突入部だ!」
「コーヒー1杯いくらすると思ってるんだ!」
空気の読めない役員が席を立って机を叩いた。すぐさま問題の役員を突入部が囲い取り押さえた。
「引っ立てろ!」
「へいよ!」
「おい! 抵抗するな!」
「何をするんだ! 私が何をした?」
「じたばたするんじゃない! 観念しろ!」
「何もしてないだろうが!」