折句ラッシュ・クリスマス

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、縦読み
クジラうえリクエストした水族館マダイが歌うスローバラード、クリスマス

懐かしさは非日常か

2019-09-11 21:20:00 | 【創作note】
扇風機の風が懐かしかった

懐かしさは非日常か

不意に感じた懐かしさは非日常だ
毎日懐かしんでばかりいれば
それは日常ではないだろうか

扇風機の風はいつでもあったが
それはいつもあるものではなく
今日は突然に懐かしい風だった

懐かしい音がしていた
昭和の家の中に来たようだった

ラジオから流れ始めた
ジャニス・ジョップリンを
古びた扇風機の音が干渉していた
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みつけた

2019-09-11 05:32:00 | 【創作note】
書くことがみつかった時には
しあわせな気分になれる
僕がその時みつけたのは
話し相手みたいなもの

書くことをみつけた僕は
読者をみつけたということだ

僕はいま話しかけているんだ

君だよ
そう 
君なんだよ
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トーキング・ドリブラー

2019-09-11 03:38:02 | ワンゴール

「君はどうしてピッチの上に立ち続けているのかね?」

「監督、その質問は簡単すぎます。一つのゴールを上げるためですよ」

「それだけかね?」

「それだけは忘れてはならない、基本の仕事になります」

「わかってはいるようだな。少し安心したよ」

「わかっていることと実践することは別です。わかってさえいればいつかは可能になるものですが」

「いつになるのかな? 早く結果を見せてくれないかな」

「そう急ぐことはありません。ゴールというのは、三十秒もあれば容易く奪えるものです。あと何分残っているんですか?」

「では、そろそろ決まるはずだな」

「理屈通りに進まないのがサッカーです。大切なのは、むしろ気持ちの方です」

「君はそれを持っているのかね?」

「勿論です。そうでなければ、このピッチに立つことはできなかったでしょう。いかなる監督も、送り出すことはないでしょう」

「ゴールに対する執着はあるんだね?」

「誰よりも強く、僕はそれを持っています」

「では、その目的は何かね?」

「それは一つの祝福のため、一杯の美酒のためです」

「酒を飲むためか?」

「どんなに憎しみや失望を重ねた後でも、たった一つの微笑みで許してしまうことがあるんです」

「何をそんなに憎むことがあるのかね? 相手のゴールキーパーかね?」

「監督、僕は恋の話をしたつもりですよ。どうしてわかってもらえないんですか?」

「どうしてわからなければならないのかね? 君は試合に集中できていないじゃないのか?」

「僕はマシンのように集中することはできません。そういうタイプのストライカーじゃないんです。もっと創造的なタイプだと思っています」

「それでゴールにつながると言うなら、私も文句は言わないよ」

「それで。許すどころか、愛してしまうことさえあるのです」

「まあ、あってもいいさ。君の個性を全否定するつもりはない」

「とても割に合わないはずなのに。ネガティブなすべてと一つの微笑みとでは、バランスが取れないんですよ」

「フォーメーションの崩れた戦術のようなものかもしれないな」

「だから、監督。一つの試合の中で、決められるゴールはそう多くあるわけがないということです」

「どれだけ取ってくれても、私は構わないよ。そのためにも、まずは一点が必要なんだが」

「でも、みんなその数少ない瞬間のために、色んなものを犠牲にできるんです。それが、いつもすごいなと思うんです」

「みんなの期待に答えるのが、君の役目だぞ」

「一生の内で、数えられるくらいの誕生日やクリスマスを楽しみにして、それ以外の延々と繰り返される日常に耐え続けることができるのは、なぜでしょうか?」

「そんなことを考えながら、君はいつもゴールに向かっているのかね? 確かに君は興味深い選手だ」

「数少ないものの内に期待だけを膨らますことは可能だと思うのです」

「私は今、君のゴールに期待している。そして、期待する自分をまだ信じてもいるわけだ」

「だから僕は早くゴールを決めたいと思っているし、一つでなくても、それがたくさんあってもいいと思います」

「まずは一つのゴールが見たい。試合の中で、それは最も重い意味を持つ」

「開始早々、それは生まれることもあるし、ラストワンプレーでようやく生まれるという場合もあります」

「そして、なかなか生まれないという場合も、多々ある。今ここで行われているゲームのように」

「僕たちには喜ぶための準備ができています。それは滅多にないことのような大騒ぎをして、喜ぶでしょう」

「それは選手だけの喜びではない。みんなの喜びでもあるのだろう」

「そうです。僕たちは、喜びを大きく表現することによって、喜びそのものを大きくしているんです」

「いつその喜びが見られるのかね。私も早く喜びたいんだ」

「一つのゴールはとても大きなものです」

「そのゴールを早く見せてくれよ」

「今まであきらめていたものが蘇ったり、少しも振り向いてくれなかったものが、突然に振り向いて駆け寄ってきたりもします」

「そのゴールを早く見せろってんだよ」

「急ぎすぎてはいけません」

「ゆっくりしすぎても同じことさ」

「でも、それはとてもずるいと思うんです」

「何がずるいと言うんだ? 手でも使ったら、それは反則だが」

「急に寝返るみたいなのはずるいですよ」

「また愛の話か」

「信じ続けていられなかったのが手の平を返すみたいなのがずるい」

「夢があるとも言えないかね。それだってファンタジーだよ」

「ファンタジー?」

「色々な解釈は成り立つという意味だよ」

「ボールに魔法をかければ、しつこいディフェンスを手玉に取ることもできるでしょうね」

「攻撃には創造性が必要だ。遊び心と言ってもいい」

「僕はボールをさらします。敵はそこにボールがあると思って足を伸ばしてきます。誘導の魔法です。僕は足が届くよりも前に、ボールを逃がします。敵の足が伸びたそこにはもう空き地があるだけです」

「そして後はシュートを打つんだな」

「僕はボールを保持しながら自由に空き地を駆けて行きます。敵はどうにかするため体ごとぶつかってきます。一瞬早く、僕は身をかわし、敵の今いた場所に移動しています。入れ替わりの魔法です。敵がぶつかったのはドリブラーの残像です」

「あとはシュートを打つだけだな」

「僕は次の空き地を求めて、ドリブルを続けるというわけです」

「シュート、シュート! 打たないとゴールは生まれないぞ!」

「ゴールの後には勝利、勝利の後には美酒が待っています」

「そうだ。そのために、我々は勝たねばならない」

「でも僕は素直に喜ぶことができない。どうしてもそこにいないもののことが目についてしまうんです」

「みんながいるというわけにはいかないだろう」

「どうして君がいないのだろう? どうしてあれは僕のゴールにならなかったのだろう?」

「君は無い物ねだりが過ぎるんじゃないのか?」

「あるものに感謝すべきだと言うんですか?」

「不在ばかりを見るのは現実的な態度とは言えない。存在を肯定的に見る方がより前向きだろう。我々は、現戦力だけで瞬間瞬間を戦っていかなければならないのだ」

「それはそうですが。僕はそのように割り切ることができません」

「それでも試合は続いていく。考えているだけでは、一つのゴールさえ生まれないだろう。時間はないのだよ。瞬間瞬間が、こうしている間に過去へ過去へと変換されていくのだ」

「僕はその酒を、素直に美味しいと言って飲むことができない」

「ひねくれながら飲みたまえ。素直な酒が良い酒というのでもない。それにまだ勝つことも決まっていないぞ。君がちゃんと仕事をしてくれないと」

「話せば長くなります」

「話すよりも、そろそろ本来の仕事にも集中してくれないかね」

「話すことは色々とあるんです」

「わかるよ。まだ言い足りなそうな顔だ」

「みんな質問することが得意です。好きなんでしょうね。どうして、どうして、どうして……。君は、どうして……」

「問うことは話のきっかけでもあるからな」

「けれども、本気で答え始めた時には、みんな僕の前からいなくなっているんです。問うだけ問うて、本当はそんなに僕のことに興味はなかったんです。その時、僕がどれだけ本気で答えようとしていたか……。それから、僕は質問者をまるで信じられなくなった」

「だったら君はちゃんと聞いてやるんだな。君はその大切さを理解できるだろう」

「僕に何を求めているんですか?」

「ワン・ツーだよ。君はその時、出し手になる。だが、出すだけじゃない。出した瞬間に走り出す。受け手はすぐに囲まれて窮地に陥っている。その時、君はフリーでいることが大事だ。味方はすぐに君の存在に気づく。君に向けて折り返しパスを出す。君は出し手から、すぐに受け手へと変身する。それは新しい君の武器になる」

「ワン・ツーですね」

「そうだ。その後にするべきことはわかるか?」

「僕はドリブルを続けます」

「そうだ。そしてシュートを打て! さあ、右サイドのトミーからロングパスが入って来るぞ!」

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B15

2019-09-11 03:16:40 | リトル・メルヘン
 上り詰めることを夢に見たはずだったが、重力に逆らって駆け上がる元気は既に失われていた。もう、疲れたのだ。かつては強く軽蔑していた言葉に、今は共感さえ抱くようになった。私は地下へと続く階段を下りた。駆け下りるとなると足は軽やかに弾んだ。いつからか、楽なことばかり選ぶようになっていた。地下4階まで下りていくと、誰かが猫のような勢いで階段を駆け上がってきた。
 
 ランドセルを背負った少年が駆け上がってくる。2段飛ばし3段飛ばし、自分の限界を探る冒険に足を伸ばしながら、駆け上がってくる。「危ないよ!」私の目からはサーカスのように映る。「危なくないよ!」すぐさま言い返した。すれ違いながら、少年は私の背丈を越えてしまう。早いな……。私の忠告は過去の残骸として階段に転がっている。振り返って少年の後ろ姿を見上げた。その時、ランドセルは大きな翼のようにみえた。
 
 アンコールを待っているの、と女は言った。上から3段目の中央へ腰を下ろして、女はただ1人演奏が再開される時を信じて待っていた。「みんなとっくに帰ってしまったけど、私はまだ待っているの」女は私の知らないアーティストの名を口にした。小さい頃からのファンだと言う。虫の音1つ聞こえてこなかった。「夏が終わるまでね」冗談めいた言葉が階段の上に響いた。私は笑いながら地下7階を通り過ぎた。もう10月だった。
 
 それから誰にも会わなかった。下りるところまで下りてしまった。そう思うと突然足が震えるのがわかった。地下15階まで下りた時、視界は行き詰まった。その先には扉があったが、扉の前には埃を被った机や骨の折れた椅子、破れたソファーや毛むくじゃらの縫いぐるみが積み上げられ、バリケードになっていた。大切な宝物か、あるいは不都合な真実が隠されているのかもしれない。その時、右腕を伸ばした熊の1つがウインクをしたので、私は扉から目を背けた。階段を見上げるとドラムの音がこぼれてくるようだった。
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