眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

恐ろしく他人

2019-04-23 03:07:51 | 短歌/折句/あいうえお作文
鬼めいた
猛スピードで
敵を抜く
謎めいたツー
シャドーの男
 
「おもてなし」
 
 
ありふれた
人生と肩
触れ合って
ラーメンを食う
一夜もあった
 
「アジフライ」
 
 
海老となり
駒をさばいた
真夜中の
二人の会話
他言は無用
 
「エゴマ豚」
 
 
汗ばんだ
記憶にぬっと
踏み入れた
ために打たれる
一時の雨
 
「秋舞台」
 
 
 
恐ろしく他人(折句)
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遠い雨傘

2019-04-23 02:21:02 | 夢追い

 

 大きな傘を買った。

 誰でも入っておいで。

 

 雨に困った通行人が訪れて苦しい一時期を他人の傘の下で凌いだ。大きな傘には困った人たちを受け入れる十分な大きさがあった。どこからでも入ることができる、自由で寛容な傘だった。強まるばかりの雨の中を、傘を持たない顔見知りが挨拶一つで訪れて、僅かに気まずい一時期を大きな傘の下で過ごした。しばらく顔を見ていなかった友人が、傘の大きさにいつの間にか含まれて立っていた。

「やあ、久しぶり」

「ああ、ほんと久しぶりの雨だね」

「よかったね。大きな傘を買えるようになったんだね」

「ありがとう。それほどでもないよ」

 本当にそんな風に思っているのか。久しぶりに会ったのだから、余計な波風は立てない方がいい。それが江戸仕草というものかどうかは知らないが、小さな傘を携えた人とそれ違う時、僕は傘を大胆に高く持ち上げた。それは傘下にいる人や猫たちを守る管理者責任のようなものだ。

 

「あそこから、地下に下りますので」

「では、また。お元気で」

「あなたも」

 雨はまだまだ降り止まない。みんなはそれぞれ帰るところを告げて去っていった。

 誰でも入っておいで。

 どこからでも入ることのできる、開かれた傘を持っていた。入り口はあらゆる方向に開かれていた。君は少し離れた場所から、こちらを見つめている。

 

(どうして入ればいいの)

 あらゆる扉が開かれているというのに、君は足を踏み入れようとしないばかりが、近寄ることさえためらっている。どうして、君はそんなに離れて立っているのか。今度は、君の番だった。最初から、君の居場所は、この傘の中に含まれている。最初に作ったのは君の居場所の方だった。その上に大きな傘を買ったのかもしれなかった。

「誰でも入っておいで」

 その中に君が入っていないことはあり得ないことだった。君だけが入っていないことなど、間違っていることだった。

(どこから入ればいいと言うの?)

 ただ真っ直ぐこちらに向かってくればいいじゃないか。どうして、そんなに簡単なことが、君にはわからないのだ。君だけに理解できないというのだ。

 君は相変わらず、少し離れた場所からこちらを見つめている。あるいは、ただ眺めているだけだったのだろうか。長い雨の中を。

 

 

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