goo blog サービス終了のお知らせ 

眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

円盤来襲(折句の扉)

2018-02-06 01:28:08 | 折句の扉
ノイズが交じりはじめて間もなく
虹色バスが途切れた

神々しい声が謎のメッセージを残して無音になる
真夜中だというのに外から轟音
ついにその時がやってきたのだ

彼らは着陸した

カーテンの向こう側で
円盤から放たれる圧倒的な光
来ると思っていた 必ず来ると思っていたんだ
来ると思っていたことを君は誰かに伝えたいと思う

ニュース速報が怖くてテレビをつけられない
少しもカーテンには触れず 
君は無言のまま折句の扉を開く

今しても仕方のないことだけをしたいと思う

こんな時に招かれる言葉

できあがった歌に 何の力があるだろう

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鬼の間(折句の扉)

2018-02-05 11:48:17 | 折句の扉
鬼のいる間に君の身も置かれていた
鬼は鬼と向き合っている
どうやら向こうからは見えないらしい

「ちょうどわしがお前さんくらいの頃」
年長の鬼の方が何かを語り始めようとしていた
若い鬼は目を合わせようともしなかった 少しも


君は構わず折句の扉を開いた
鬼のいる間は君のいる間
鬼は鬼で君には君のすべきことがあった
扉の向こうから逃げ場を求めるように
言葉たちが流れ込んでくる
先に届いたものに触れようと試みる

何か妙だった 言葉が指にかからないのだ
鬼の間が空気を汚し言葉の純粋性を損ねているのだ

「わしもそうだったんだよ。ちょうどお前さんくらいの頃」
年長の鬼は接点を求めて歩み寄ろうとしていた
若い鬼は目を合わさない


鬼のすみかに君が来てしまったのか
どちらからでもなくいつからか
君のすみかと鬼のすみかが交わっているのか
ただ季節的なことなのかもしれない

「お前さんも大変だろう」


折句の扉は開かれており
言葉はいくらでも入り込んでくるが
それはただ流れ過ぎるだけのものだった


ゆっくりと若い鬼の方に近づく

君は若い鬼の俯く先をのぞき見た

手の中にあるのは美しい湖だった
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解放地点より(折句の扉)

2018-02-05 01:32:39 | 折句の扉
運転席と助手席の間に挟まれて僕は不安に押しつぶされそうだった。多くの働き手の中に紛れていれば目立たないものが、1人や2人であるとごまかしが利かない。現場に着くと重い作業が待っていた。小さな物でも連続して運べば体力を奪われるが、重い物ではフィジカルの弱さが明白に見えてしまう。高そうな家具の片方を僕は持つことになった。落とさないように注意はしていたが、どうにも持ち手が安定せず途中でバランスを崩してしまった。傾いた家具がもう一方を持っていた社員の人の頭を打った。ゴツンと音が聞こえた。
「殺すぞ!」
 すぐ様、前蹴りが飛んできて僕の下腹部を打った。
「ううっ……」
 痛い。僕はその場から消え去りたかった。いなくなって自由になりたかった。けれども、日払いの給料がなければ食べることもままならないような状況だった。黙ってとどまることを僕は選んだ。心は折れそうだった。つなぎ止めるために、代わりに言葉を折るのだ。痛さを言葉に乗せて歌に変えるのだ。そのために今日が、この痛みがあると思えるほどの歌を、たくさんたくさん、作るのだ。肉体はまだここに残したまま、僕は折句の扉を開こう。馬鹿野郎。シロイルカ。焼き豆腐。そこかしこ……。
 作業が終わるとドライバーはよくわからない場所で僕を解放した。どこでもいい。解放されたことだけがただただうれしかった。履いてきた靴を車の中に忘れてきたことに気がついた。サインをもらった伝票がポケットの中にある。これさえあれば、この日あった事の分だけのお金はもらうことができる。どこに向かって歩いているのだろう。
「駅はどこですか?」
「どこの駅ですか?」
 通行人は反対にきき返してきた。
 ここはいったいどこなのだろう。自分の住む街からどれくらい遠い場所まで来たのだろう。疲れた足を引きずって歩いた。果物屋さんはもう店を閉めるところだ。さまよう内にすっかり闇に包まれてしまった。家路へ向かう確かな人々の足音が聞こえる。きっと向こうかもしれない。人が多く進む方に駅はあるのかもしれない。僕はもう誰にもたずねなかった。その先に開ける風景を信じて、汚れた靴で歩き続けた。


そんなでも
こんなでもまあ
稼がねば
死んでたまるか
こんなところで

折句 短歌「そこかしこ」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鬼の扉

2018-01-31 05:09:16 | 折句の扉
君は鬼について考えていた

鬼とは何だろう

友達か敵か

ならば退治すべきものか

鬼はいるのか

それとも架空の存在か

架空のものは存在しないのか

「鬼のようにパンが届いたよ」

そう言って誰かが笑った

折句の扉はまだ開かない

鬼が門番として立っている

結論のない鬼を 君は見ていた
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする