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眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

おじいさんの焼き飯

2019-08-22 22:45:00 | 忘れものがかり
心身が疲れて始めることができない
疲れることは傷つくことだ
おつかれさまを繰り返す度に
随分と傷ついてしまった

何かの助けが必要な時に
おじいさんは焼き飯を作ってくれる

箸を持つことは億劫だけど
スプーンくらいは持つことができる
辛くとも一口をすくって口に運ぶ

「ああ。おじいさんの焼き飯だ」

ぎこちなくとも一口をすくって口に運ぶ
一口を味わうと自然ともう一口へと動く

「ありがとう。おじいさん」

おじいさんの焼き飯を口に運びながら
僕は少しずつ自分を取り戻していく

「ああ。やっぱりこれなんだ」

一口一口おじいさんの手による
作品を取り込みながら
僕は少しずつ元気になって行く

「ありがとう。おじいさん。思い出したよ」

一口一口
ほんの小さな仕草を繰り返しながら
生き物は生きていくんだね

「おじいさん。僕はもう大丈夫だよ」
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あられ花火

2019-08-13 04:17:00 | 忘れものがかり
「あられが好き」

あの子は言った
今ならその気持ちにも
寄り添うことができそうだ

一口あられを口に放り込む
一瞬の旨味を残し消えていく

なんて儚い 

夏空に広がる打ち上げ花火みたい
(ああ、生きてるんだ)
その刹那に生を実感するようになった

「あられが好き」

あの子はそう言って
僕の前から去っていった
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チャーハン・オードブル

2019-08-05 03:24:00 | 忘れものがかり
肉を回り野菜を回り
ごはんに帰ってくる
そんな道を通れば
どこかで迷いどこかで誤る
だからチャーハンがよかった
純粋に一気にかきこめる
チャーハンが一番だった



昼は焼きめしが好きだった
腕力が衰えてから
母は焼きめしを作らなくなった



キッチンにフライパンがあった頃
僕は自分で焼きめしを作った
最初に作ったのは
姉が教えてくれたシーチキン焼きめし



パスタが自慢の店の壁に
焼きめしを見つけた
カレーを挟んだ
三行下には
えびピラフ



初めて訪れる
町の中華屋さんで
a定食を頼んだ
(本当はチャーハンがよかった)
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思い出の味

2019-08-05 03:17:00 | 忘れものがかり
3日がすぎて
あの味のことが思い出された

普通のラーメン
ちっちゃなチャーシューにもやし
平皿に盛られた白ご飯
小海老の天ぷらに塩が添えられ
端っこのささやかなキャベツには
サウザンアイランドドレッシング

750円の日替わりランチ
6月の酷い雨の日に
町の中華に駆け込んだ
木曜日
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本は読まない方がいい

2019-07-24 15:59:49 | 忘れものがかり
本を閉じるのが好きだった
閉じた瞬間
現実の世界が帰ってくるが
意識の半分は本の中に残っている
そんな宙ぶらりんが心地よい
 
 昼休みに学校を抜け出して
 異世界に迷い込んでいる
 帰ることは帰るけれど
 そんなに急いで
 帰らなくてもいい
 無理をして
 帰らなくてもいい
 こっちが楽しければ
 こっちでもいい
 あちらに本当の世界が
 (もう一つの世界)
 あると思えれば心に余裕が持てる
 
読み終えてしまえば
そこにある世界は閉じてしまう
 
読まずにおけば
ずっと大丈夫
 
いつでもいつまでも
 
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シナプス

2019-07-12 04:13:09 | 忘れものがかり
「そこを通らせてください」
あなたは穏やかに言った
 
 通りたいの?
 そのために
 自分は何ができるだろう
 
(そこをどけ!)
もしもそう言われていたら
僕は動けなかっただろう
 
誰かの希望のために
自分の選べる答えを
導き出す
    0.5秒
 
あなたは
楽しい想像の時間をくれた
 
「どうぞ」
 
僕は自ら一歩動くことで
あなたの道をひらいた
 
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キスもできない

2019-06-24 01:35:39 | 忘れものがかり
一歩も動けないまま
ずっとソファーの上にいた
抵抗し難い魔力が
まぶたを重くし
全身を縛りつけていた
 
「ちゃんとしなきゃ」
 
奮い立つ魂のレジスタンスが
魔の手をすり抜けながら
淀んだ部屋の中に
細い人間の道を照らした
 
「正しい場所で眠るんだ」
 
公正なベッドの上に
ようやくたどり着けた
 
誰からも許される眠りが
与えられた時
もう完全に醒めていた
 
「僕はどこへ行ったのだろう」
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牛になった先生

2019-06-24 00:45:34 | 忘れものがかり
初めて牛歩戦術を見た時は
ショックだった
考え得る戦術があのようなものしかないのか
 
子供の目から見ても
優れた戦術には思えなかった
まとまって皆が同じ戦術をとっているのだから
その場においては最強と思われているのか
それが賢い大人たちの出した答えなのか
 
なるべく前に進まないように頑張りながら
それでもゆっくりゆっくり前に進んでいく
そんな消極的な前進が何かを決めるため
何かを決めないための有効な戦術なのだ
 
壊れた秒針のように挟まった昆虫のように
同じところに止まっているようで
よくよく見ればゆっくりとある方向に進んでいる
 
一度入ったら決して逆行することは許されない
得体の知れない輪の中に取り込まれた
大人たちの横顔がどこか悲しげに見えた
 
 
「嫌だよー!」
 
本当は行きたくなかった
保育園へと引っ張られる強い力
 
大きな手をふりほどくことは
 
とてもできなかった
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シャドー・レター

2019-06-23 22:54:32 | 忘れものがかり
拍手はできない
君にサインは求めない
ファンレターは送れない
 
陰ながらしか
応援することができない
 
いつも見ている
君の力を信じている
しあわせを願っている
 
私がいることを
忘れないで
 
 
      風車の八代
 
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元気カプセル

2019-06-22 21:18:49 | 忘れものがかり
こっそりと掘り始めた穴は
秘密を埋めるためのもの
他の者にばれないように
深く深く深く
鼻先を土で汚して
 
私たちは
いつまでも元気ではいられない
犬はずっと先を見越しながら
完食にみせかけて残しておいた
好物を深い穴の中にしっかりと埋める
 
人の気配を察知すると振り返って見る
「見てないよ」
見つかったとしても態度には出さず
あとからこっそり場所を移すのは
今ある信頼関係を大事にするから
 
その時が来るまで
決して掘り返すことはない
土の上に雨が降る 足跡がつく
幾つもの季節が通り過ぎる
その内に埋めた場所も
鼻を汚した苦労も忘れてしまう
 
みんな忘れるほどに
今の私たちは元気だ
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ずっと一緒

2019-06-19 16:01:20 | 忘れものがかり
一日が大事だった
一日疎かにすれば
すぐに崩壊しそう
 
ほんの一日
会わなければ
何日も何日も
会わないようで
 
苦しい
 
何日も何日も
何日も会えなければ
千年も遅れてしまったよう
もう顔も思い出せない
 
(取り戻すにはどれほどの時が必要だろう)
 
 
 
「やあ。久しぶり」
 
変わっているのに変わっていない
 
おかしいな……
 
ほんの一日すごしたら
 
ずっと一緒にいたみたいだ
 
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ぼくだけの世界

2019-06-17 03:31:56 | 忘れものがかり
誰もいない部屋の中に
ぼくがいる
 
誰かいませんか?
はーいぼくだよ
なんだまたお前か
そういうお前もお前だけどな
 
「うちの人は?」
「いまは誰もいません」
 
出直してくるよ
 
バイバーイ!
 
あの人
なんかお父さんそっくり
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雨猫

2019-06-15 21:16:33 | 忘れものがかり
雨が降っているのに
窓を閉められないのは
誘いのすきだった
 
少しずつ少しずつ
細かく入り込んでは
私をひっかき始めた
 
雨粒の一つ一つが
猫だったのだ
 
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チャイルド・ルーム

2019-06-14 21:16:43 | 忘れものがかり
散らかりすぎた部屋に
心を折られて
何も手がつけられない
 
優先順位?
 
理屈っぽい話はごめんだ
 
古いアルバムをみつけ
時が止まる
 
私はどこ?
 
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上を向いて歩いて行こう

2019-06-04 17:29:08 | 忘れものがかり
雲を見ていると
描かずにはいられない
ずっと頭から離れないから
描かずにいられない
 
描き終わるとすっと消える
 
しばらく行くと新しい雲が現れる
見てしまったから
やっぱり描かずにいられない
 
いつもいつも
今までになかった雲
雲、雲、雲……
 
描き終えてすっと消える
 
その時 一瞬だけ
 
青空がみえる
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