奈良県明日香村内には、古代から続く多くの古道が存在しています。
その古道を散策していると、要所には「道標」が立っています。
古道の傍らには、行先や目的地までの距離を記したものや旅人の安全を祈願するための「お地蔵さま」が彫られた道標等を見ることができます。
その道標の殆どが近世に建立されたもので、年号が記されたものもあります。
これから、飛鳥にある「道標あれこれ」を何回かに分けて紹介したいと思います。※参考資料 「飛鳥の道標」(明日香村文化財課)
最初に「道標」の本来の意味ですが、通行人のために道の方向や目的地までの距離を知らせる標識のことです。案内板や立て札、石碑、塚などのような人工物や、目に付きやすい自然物(特徴のある木、岩、山など)を指すこともあります。
今回紹介する道標は石碑です。村内には、60基の道標が確認されています。石碑には、地蔵型・角柱型・自然石型・板碑型・常夜灯型があります。
「飛鳥の道標」を参考にしながら、現在55基を見学してきました。
今回は、その中でも珍しい道標を紹介したいと思います。
1 江戸時代に書かれた立派な字が見られる道標
〇明日香村飛鳥にある「角柱型道標」です
飛鳥寺の東門前にあり、飛鳥時代に創建された飛鳥寺の礎石の上に立っています。四面には、立派な字が彫られていて東面には「飛鳥大佛」と記してあります。
1792年に建立されたもので、村内では5番目に古い道標です。以前は、東へ約50mの所に建てられていました。礎石の上に立つ道標は、大変珍しいと思います。
〇明日香村越にある「常夜灯型道標」です
越集落の古道にあり、村内では唯一の常夜灯型道標です。四面に字が彫られていて、北面には「左 おかてら はせ とふのミ祢 いせ」。東面には「右 ちはら ごせ 古んかうさん」と記してあります。上部の四面には「仏様」の像が彫ってあります。
この道標は、1858年に建立されたもので、、幕末の名石工と言われた「丹波佐吉」の作と言われています。彫刻や字の素晴らしさは、道標というよりは、もはや芸術品だと思います。