イタグレブリーダー・ヨーロッパのイタリアングレーハウンド。

ヨーロッパから6頭のIGを輸入しました。出産や老犬のこと。家族として大切に育てています。

何ねんぶりだろう?ヒヤっとしたお産。

2024年09月11日 | Weblog

イノセントの犬舎登録をして30年目となりました。登録して1年ほど経ってから、ブリーダーのお仕事をさせていただくようになりました。現在住んでいる家を探した時も、犬を遊ばせたい~との気持ちから庭がある家を選びました。

繁殖をするようになってから、最初の数年間は、安産のママ犬たちに恵まれて順風満帆でした。安産だけでなく多産系のワンコ達ばかりで、しかも母乳が沢山出て有り余ってしまうほどのママ犬達~私は余った母乳を搾る、搾乳係りでした。他のブリさん達からは、あなたはラッキーね。今に現実に引き戻されるよとイヤミを言われました。

ペットショップの裏側は・・パピーミルから仕入れる犬は、半分は身体が弱かったり、スタッフが夕方に帰ってしまうので夜中は誰も世話をしません。次の日に出勤すると、弱っていた子犬が死んでいるのは日常茶飯事の時代でした その当時は生後35日で引き取っていたのですから。まだお乳を飲んでいる赤ちゃんですよ。ひどい時代でした。

私はその現実を知ってから、ショップに子犬を卸すのではなく自分で飼い主を見つけようと、パソコンを勉強して自分のH・P、イノセントパピーを作りました(今は無くなっています)

ブリーダーで繁殖をして行くうちに、他のブリさん達の言葉の意味が分かるようになりました。現実に引き戻されたのです。お産に向いている子と、そうでない子がいます。向いている子だと安産で子育ても子離れも上手です。向いていない子は、分離不安症になっていきむことができなくなり、難産になりました。ブリーダーを始めて6~7年たった頃に初めて難産に遭遇し、自分では産むことができない子に陣痛促進剤を打って出産しました。そのママは、子育ても苦手でした。お乳の出も悪かったです。

それまでが順調すぎて天狗になっていたので・・それはそれで勉強になりました。分離不安症の子・シルビァは、その後はお産をさせるのはやめました。イヤなことを人間の都合でさせるのは残酷です。それでも美しい子です。その子の娘を1匹残しました。

しかし~残した子が成犬になり赤ちゃんを産んでもらう時、その娘も母犬と同じように分離不安のような状態になり、いきむのですが、それが弱くて自力で産むことができず帝王切開での出産となりました。初めての経験でした。先生曰く、帝王切開は一番安心なお産です!とおっしゃっていました。

産まれた子犬は4匹とも無事で元気でした。しかし、家に戻って麻酔も覚めていない冷たい身体で横たわっている姿に、申し訳ない気持ちで可哀想でたまらなくなりました。ヨレヨレの母犬の姿は痛々しいばかり。仔犬達は無邪気にお乳をほおばっていました。

しかし母犬は食べることも気持ちが悪いようで拒みました。私は、何でもよいから食べてちょうだいね~と人間の食べ物も与えました。そうしないと母乳が出ませんから。それに答えて食べてはくれるのですが、ことごとく吐きました。

結果的に4匹の子犬たちの母乳は足りずに、私は人口哺乳で育てました。このような経験を経て、お産に向いていない子に産ませてはいけない安産・多産系・小産系は、ある程度母親から遺伝する。ドッグフードを食べない子(これは育て方にもよります)には出産はさせない。など他にも色々とありますが、この2匹の母子からの繁殖はこの時点でやめました。この二匹は、生涯仲良く常にくっついて生活し幸せな犬生を送りました。

安産ばかりを経験して天狗になりかけていた私に、この2匹の親子は身をもって試練を与えてくれました。この時の経験はずっと忘れることなく私の心の中に留まっています。

その時から月日が経ち~現在ママ犬として産んでくれているのは、安産の神様のようなジュリアと、輸入犬・オペラの子孫たちです。健康であることを念頭に置いています。こちらの系統になってからは、お産で病院のお世話になったことはありません。

そこで、やっと今日のタイトルです。何年ぶかな~今回のお産は、病院に行くことが頭をよぎりました。しかも日曜日の未明から陣痛が始まったので、行くとしたら初めての病院・夜間救急病院です。

出産の予定日が来ても生まれる気配がないので、もしかしたら、想像しているよりも頭数が少ないかも?と思いました。頭数が多いと、出産が早まる傾向があります。少ないと、遅くなります。

土曜日・7日の午後10時頃、生まれる様子・ウロウロしたりカリカリと巣作りの行動が見られないのでママ犬と一緒に寝ました。電気はつけたままです。

そしたら夜中の2時ころからママ犬が起きて、部屋の中をウロウロしました。来た来た∼この時を待っていたよ。私は、予定日を過ぎていたので、不安がなくなり嬉しかったです。

しかし~そこからが長かったウロウロやカキカキはするのですが、いきみが弱いです。いきみというのは、ウ~ンと踏ん張って赤ちゃんを出すために 息むことです。3時30分からいきみが来ますが、まだ弱い。

陣痛が始まって2時間ほど経つので疲れただろうと、ミルクを飲む?と言ったら、飲みたいしぐさをしました。与えると、美味しそうに飲みました(オリゴ糖と粉ミルクをミックスした)その後はいきみの感覚が短くなって、5時10分に強いいきみと共に破水しました。羊水のような体液が⇒どばっ!と出てきました。そうなることにより産道を滑らかにして胎児が産道を通りやすくします。

よかった~破水した。これで胎児が出てくるのは近いわ。上手~上手~とお腹を優しくなぜました。その後5時20分に、ピンポン玉くらいの大きさの膜が出てきました。これは、前回出た破水と同じ膜なのか?それとも胎児を包んでいる膜で、この中に胎児が入っているかもしれない。

胎児の身体が降りてきたらいきみに合わせて引っ張りますが・・・ピンポン玉だけ出た状態で進展がありません。10分~20分経ちました。どうしよう~ 何十回経験しても、決断を迷う時はあります。

ピンポン玉が、3つも4つも出てくる子もいますので、判断が難かしいです。

胎児の身体が降りていないし、いきみもないので陣痛に合わせて引っ張ることもできませんでした。そうしているうちに、ママ犬はピンポン玉を舐め始めました。ずっと舐めていて、とうとうピンポン玉を噛んで破りました。

ピンポン玉を破ると羊水が流れ落ちて、ママ犬はますます舐め読けました。そこに長い筋が残っているので、これは胎児が入っていた膜かもしれないと・・引っ張っりました。そしたら、かすかに胎盤が付いてきました。

こりゃ~大変だ 羊膜が破れた状態で胎児が子宮の中に戻ってしまった。噛んで破ったピンポン玉は、胎児を包んでいた羊膜だったのです。胎児は羊膜内に包まれた状態で胎盤と繋がっていて、その胎盤から栄養をもらっています。羊膜が破れたら外に出してあげなくては危険です。そのまま母犬の胎内に戻ってしまったら、呼吸ができなくて死んでしまいます。

とにかく早くこの世に出してあげなくちゃ。ママ犬に、早く強い息みが来たら・胎児が見えてきたら・・私が出してあげるから。祈るような気持ちで息みを待ちました。しかしママ犬は、流れてくる羊水を舐めることに集中しています。この時点から、いきみがピタっ!となくなりました。

何年ぶりだろう? 私は夜間救急病院へ行こうかと頭をよぎりました。10年以上前にも同じことがありました。その時は4匹の胎児がいて・・他の姉弟と産まれる順番が入れ替わってしまい・・一番最後に産まれてきました。そして・・すでに亡くなっていました。子宮の中をくるくる回っているうちに、呼吸ができなくなって死亡したのです。

救急病院へ行くとしても、すでに朝方5時半を回っていました。行く前にハウスに入っているワンズを一旦出して動かせて(排泄です)朝ご飯をあげなくちゃ。病院へ行ったら、当分の間は戻ってこれないですから。

そこで2階で寝ている主人を呼びました。ママ犬に動きがあったら教えてねと。そして急いでワンズたちにご飯をあげて、排便を片付けて、それから主人の朝食を作りました。朝食を整えてから、主人と見張り番を交代しました。

主人は犬のことは何も分かりません。どうだった?と聞くと、なんかウ~ンと身体を動かしているから、出産は近い気がすると。

このママちゃんはすごかった 2時頃から産気付いて陣痛も来ていて身体はへとへと。疲れているのに、他のワンズ達と同じように、朝ご飯をペロッ と平らげました。苦しいはずなのにありえない行動です。その姿を見て、もしかしたら私が思っているよりもワンのほうが気丈なのかもしれない。ご飯を食べて体力も回復したから、このまま上手に産めるかもしれないと。。。自分が育てた犬を信じようと・・病院を一旦頭から外しました。

病院へ行ったとしたら、帝王切開となります。現在は陣痛促進剤などは使わずに安全策です。元気でご飯を平らげるママ犬に手術させるのではなく、自分で産むことを選んであげたい

朝ご飯を食べたのが6時10分。それから寄り添っていると、息みが再び始まりました。やった~ 自分で産めます。問題は、さっき一旦産まれかけて胎内に戻った子が、先に出て来るかどうか。

段々と息みが強くなって、胎児が少しづつ出てきました。黒い頭のようなものが。ママ犬はお産ハウスの中には入らずに、隅っこの・・私が入れない場所で息んでいます。おいで~出してあげるから~ と近づいて触ろうとすると、ママ犬は私の手に歯を当てて嫌がりました。いつもは従順な子ですが、それほど痛くて触られたくなかったのです。

しかし早く出してあげなくちゃ。私は優しく近づいて出てきている上半身をつかんで、息みに合わせてやさしく引っ張りました。その子は先程の子と同じ胎児でした。顔の膜はなくなり、息はしていませんでした。口を半開きにして、母犬のしっぽのほうを向いて出てきました。

全身が出てきた時、立派な大きな胎盤が付いていました。顔の羊膜ははがれていましたが、下半身は羊膜に包まれていました。大きな男の子で、体重は188gです。ピクリとも動かない仮死状態でした。

しかしここからが私の出番。あなたを助けるのが私の仕事 仮死状態の時間が短ければ、息を吹き返す確率は高いです。仔犬のお腹の色が紫(蘇生は難しい)だと危ないですが、ピンクに近かったので、この子は大丈夫  生きてると確信しました。

それからへその緒を切り、お口の中の羊水を吸い取り、心臓と全身のマッサージをしました。頭と首を固定して強く振ります。そうしているうちに⇒ ピー と元気な産声をあげました。助かった!キミは立派で強い男の子です

私が必死に蘇生している間~主人は新聞を見ながら、優雅に朝食を食べていました。昭和のオヤジです。仕事をすることしか頭にない世代。仕事以外のことは奥さんがするのが当たり前の時代の人です。でも・・何の口出しもせず文句も言わず、黙っておとなしくしているので、それでよいのです。

5時20分に一度はこの世に生まれそうになって・・顔の部分の羊膜がはがれたまま子宮に戻ってしまったブルーの男の子。その一時間後に、他の兄妹よりも先に産道に再び現れたから助かったと思います。他の兄妹が先に出てきたら、命が途切れていたかもしれないです。

人間もそうですが、生まれる瞬間は赤ちゃんも苦しみながら産道を旋回しながら全身を使って生まれてきます。犬もそうです、このブルーの子が自分の全身を使ってこの世に生まれてきたのです。

10年以上前に同じ経験をしたときは、胎内に戻ってしまった子が亡くなってしまったので、他の兄妹たちを押しのけて出てくる力がなかったからです。教訓を忘れないです。

今回のブルー君は、すごい生命力のある強い子と言えます。 

手前がブルー君です。

ブルー君が生まれて45分後に、レッドの女の子が生まれてきました。

レッドちゃんは、一気に全身がポンと出てきました。192gの大きな女の子でした。

とても元気がよくて、笑える存在です。

今回のママは3頭だろうと予測していましたが。ふたを開けると2頭の出産でした。2頭を産んだ時点でお腹を触り確認しました。3頭目は居なかったです。たまにハズれることもあるさ。

たくさん産んでくれれば、予約いただいている方々とご縁ができるので嬉しいのですが。でも今回の出産で、お産の大変さ・怖さを・・忘れかけていたことを再び教えられたので、頭数がどうのこうの・・の気持ちが吹き飛びました。母子ともに健康で安産であることが、どんなに素晴らしいことか。

ママちゃんは産みたくて生んでいるのではないです。人間の意思でしていることです。それに答えてくれるだけでも、どんなに有難く感謝しなくてはならないのか。本当に、ありがとうねの気持ちです。

そして、パピーを覗きたくて興味津々のワタチ👇

ママちゃんは、見ちゃダメ!来ないで!と低い声で唸っています。

覗いているのは、もうすぐ出産の予定のママです。このママちゃんもお腹は大きくないです。体重も増えないので1~2匹です。

贅沢は言いません。ママもパピーちゃんも無事に安産であることを願うのみです。

長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。

犬の出産が必ずしも安産ではなく、命がけであることをお伝えしたくて、経過を書かせていただきました。私も翌日は身体も精神も疲れており、一日中休んでおりました。

 

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