「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

ニセコ連峰の西端 雷電山に登る

2008-08-11 20:13:47 | 羊蹄・ニセコ周辺の山々
(写真:雷電山・天狗岩から望む寿都湾と狩場山)

8月10日の登山記録:
ニセコ連峰の西端、山々が日本海に落ちていく。雷電山の登山口は国道から3キロ入った一軒宿の朝日温泉。ノウサギとイタチが車の前に飛び出した。野趣漂う山奥だ。
宿には「登山者の駐車はご遠慮ください」との張り紙があった。ロマンスグレーの主人に「日帰り入浴しますので」と駐車の許可を得てから、暗い森に入る。広葉樹にトドマツ、アカエゾマツが混ざる道を40分ほど登ると、稜線の天狗岩に出る。右手に寿都湾と道南の名峰・狩場山。左手に岩内湾と積丹半島の山々。日本海に切り込む断崖の妙。早朝の独り占めの絶景に息を呑む。

(写真:断崖の向こうに積丹半島)

ゆったりと高度を上げていくと、山麓にぽっかりと浮かぶコックリ湖が。行く手には、目指す雷電山も姿を見せる。まだまだ、かなり高度差がある。841m地点のポコに「中山」という標識。ここから1203.6mの「前雷電」まで、幾つかのピークを下ったり上ったりと、なかなかの登り応え。しかも、背丈を越えるハイマツと笹の勢いが強く、見通しがよくない。クマと出会い頭の衝突だけはご勘弁と思ったら、かすかな獣臭が漂う。ホイッスルを吹きながら進むと色づいたナナカマド。秋を先取りする山の気配にほっと癒される。

(写真:森に浮かぶコックリ湖)


(写真:コックリ湖にズームイン)


(写真:雷電山)


(写真:ウラジロナナカマド)

すっかり、獣臭を忘れたころ、足元にクマの糞。握り拳より小さめの塊が数個。「ありゃー」と、がっくりする。よく見ると、ひとつに登山者の踏み跡。きょうの先行者はいないと思うので、あまり新しくはないな。
気を取り直し、念のためホイッスルを吹きながら進む。その存在を忘れた頃、またまたクマの落し物。ここはクマさんの通り道なのか。

(写真:クマの落し物。左の塊に登山靴の跡

前雷電で先行の夫婦に追いつく。「良かった。ほかに登っている人がいて」と感謝される。いないと思っていた先行者に、こちらも感謝。クマの落し物がふたつあって、心地がよくなかったとのこと。彼らは踏んでないそうで、やはり、今日のものではないと安心する。少し進むとエゾオヤマリンドウがまとまって咲いていた。晩夏の花に出会い、ここでも季節が進む足音を感じる。

(写真:エゾオヤマリンドウ)

平坦な稜線をたどり、30分で山頂に。一等三角点の展望を期待したが、ハイマツの丈が高く、高度感と見晴らしは、いまひとつ。ここから先は、目国内山や岩内岳への縦走路が続く。岩内岳から来た男性が合流する。5時間かかったという。リュックを置いて5分ほど進むと、ニセコの山並みの展望を得る。湿地の花、タチギボウシも。笹の勢いが強いが、かつては山頂付近に広がる湿原地帯だったのだろう。
斜面は、コガネギク、ウメバチソウ、ナガバキタアザミのお花畑。たくさんのベニヒカゲが飛び交う。夏の終わりに小さな命が輝いていた。

(写真:雷電山の山頂1211.7m)


(写真:タチギボウシ)


(写真:ナガバキタアザミとベニヒカゲ)


(写真:目国内山とニセコアンヌプリ。羊蹄山は雲の中)

山頂に20分ほど滞在して、下山。正午すぎに4人の団体と出会う。岩内岳まで縦走するという。きょうの登山者は合計8人ということになる。ニセコの奥に控える静かな山だ。
クマの落し物を数えながら降りていくと、ひとつ増えていた。
温泉の主人に報告すると、クマ情報はずいぶんと久しぶりのこと。野趣あふれる秘湯につかりながら、クマの楽園にお邪魔した緊張感を癒しに換えた。


(写真:登山口の朝日温泉)

※07時20分:入山
 08時05分:天狗岩
 08時45分:中山
 10時15分:前雷電
 10時50分:山頂
 11時15分:下山開始
 14時20分:登山口に戻る

朝日温泉:600円。野趣満点。脱サラの主人が数年前に再建した秘湯。宿の裏手が登山口。露天風呂に視線の注意が必要。