「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

知床の最高峰、羅臼岳に登る

2010-08-12 19:40:22 | 道東の山々
                                    (写真:知床連山 右端が羅臼岳 登山前日の夕方撮影)

斜里岳に登った翌日の8月10日(火)、知床・最高峰の羅臼岳(1660m)に。

夜明けの空は高曇りで、知床連山がくっきりとその姿を刻んでいた。天気予報は曇りながらも、これなら青空になるぞと確信。

午前5時、薄暗い森に入る。トラツグミやクマゲラの啼く声に励まされて、テンポ良く登る。

湿度が高いのか、汗が滝のように流れて、長袖シャツと帽子を脱ぐ。

小さな標識に目を凝らすと、「ヒグマ出没地帯。餌となるアリの巣が多いので注意」とのこと。

クマのレストラン街は40分ほど続く。前後に登山者が多く、仲良く談笑しながら進むと不安感はなく。


(写真:この先はクマのえさ場)

水場の弥三吉水で喉を潤すと、そのおいしさに生気が蘇る。

登山口から1時間50分ほどで、極楽平。真正面に目指す羅臼岳が凛々しくそびえ立つ。


(写真:極楽平と羅臼岳)

平坦な極楽平は短く、仙人坂で喘ぎ、銀冷水にて熱りを鎮める。極楽平から1時間ほどで大沢入口に着く。

斜度のきつい涸れ沢だが、両端は可憐なお花畑。チングルマはすでに花を散らしていたが、チシマクモマグサやエゾヒメクワガタが咲いていた。

「千島雲間草」という北方の天空をイメージする語感がなんとも素敵だ。

エゾヒメクワガタは普通は青紫色。ここではピンクや白花が多いというのも興味津々だ。

心地良く吹き抜ける風が、汗をさらっていった。


(写真:チシマクモマグサ)


(写真:白いエゾヒメクワガタ)

大沢を登りつめたら、一気に視界が広がる、羅臼平。

向かって左を登れば三ツ峰から硫黄山への縦走路。右を登れば羅臼岳へ。

めまぐるしく往来する雲は三ツ峰を避けるが、羅臼岳を隠す。残念そうな登山者の顔と顔。

しかし、15分ほど登ると…

羅臼岳を覆っていた雲が消え、剥き出しの岩塊が青空に拳を突き上げた。


(写真:羅臼平 背景は三ツ峰)


(写真:雲が去り岩塊の山頂が顔を出す)

ごつごつとした岩塊を両手両足を使って、慎重に登る。小さな花々が多く、集まる蝶にほっとする。

その中に、天然記念物の高山蝶・カラフトルリシジミを見つけた。

雄だと瑠璃色が際立つが、これは雌。地味なせいか、誰も関心を示さない。

来し方を振り返ると、雲海の遠くに国後島が小さく頭を出していた。ズームするとピントが合わず、しっかりと心に刻む。

高度を稼ぐにつれて、向かいの三ツ峰の大きさを知る。さらに奥に連なるサシルイ岳から硫黄山までの展望を得た。

憧れの知床連山が今、目の前に。


(写真:羅臼平と三ツ峰、奥にサシルイ岳や硫黄山も見える)


(写真:高山蝶カラフトルリシジミ ♀ )


(写真:高度を上げてズームイン 左奥の鋭鋒が硫黄山)


頂上直下で進行方向右側の海別岳、斜里岳方向を望むが、雲が多くすっきりとしない。

それだけに、登る道筋で知床連山先端の硫黄山までの眺望を得られたのは、なんとも幸運なこと。

仰ぎ見る狭い山頂では、10人ほどが盛んに写真を撮っていた。山々を隠そうとする雲流との時を巡る競争だ。


(写真:直下から仰ぎ見る山頂)


(写真:海別岳、斜里岳方向は雲が多く眺望を得ず)

登山口から4時間半ほどで山頂に立つ。自分の唇から、「着いた!」という声が素直に飛び出した。

前日、斜里岳で出会った人たちの姿を見つけあって、この感動を分かち合う。

激しい雲流に嫌な予感も。写真を何枚か撮っているうちに、不安が的中して山頂は真っ白になってしまった。

穏やかだった風も強く荒れて、狭い頂きでは立ち上がるだけでヨロヨロとする。

強風を避けるために岩場を一段下がって待機するも、45分ほどの滞在で下山した。

一瞬のチャンスに恵まれた幸運に感謝し、次の目標は三ツ峰からサシルイ岳までと、意欲を確かにした。


(写真:羅臼岳山頂)

■登山記録:2010年8月10日(火)
05時00分:岩尾別登山口から入山
05時35分:「650岩峰まで熊注意」の標識
05時40分:オホーツク展望台
06時15分:650岩峰
06時35分:弥三吉水
06時50分:極楽平
07時10分:仙人坂
07時30分:銀冷水
07時55分:大沢入口
08時25分:羅臼平
09時35分:山頂  上り4時間35分

10時20分:下山開始
13時30分:登山口に戻る 下り3時間10分

ホテル地の涯 
山奥の一軒宿で登山口に位置する。朝4時40分に着いたら登山者用の駐車スペースは満車。ホテルの人が違法駐車に目を光らしていたが、日帰り入浴をお願いしたら気持ちよく駐車OK。親切心溢れる地の涯で熱いお湯が疲れを吹き飛ばしてくれた。800円。

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