よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

サービス化する社会

2009年04月25日 | ビジネス&社会起業


過去40年間、ほぼ一貫して先進国ではサービス経済の占有比率が増しつつある。モノを製造しても、その価値はサービスを通してユーザに届けられることが増えている。

2007年の世界労働機構(ILO)によると、人類史上初めて世界レベルでサービスの雇用(42%)が、農業雇用(36.1%)や工業雇用(21.9%)を逆転したと伝えている。



日本でも、所有から利用へ、そして所有価値から経験価値へのシフト現象は明らか。

たとえば、ソフトウェアそのものを欲するのではなく、ソフトウェアがもたらす機能をだけを使いたいユーザは、ソフトウェアの所有権を買うのではなく、利用権のみを活用する。SaaSやクラウド・コンピューティングの方向に向かう。

衰退産業とされている農業でも、田舎⇔都市の人的資源交流サービス、経験価値交換サービスと眺め直せば、新しい行き方も生まれる。農工大の学生がとりくんでいる黒森もりもり倶楽部はその一例。

千葉県がんセンターでも、医師、看護師、検査技師、医療機器メーカー、薬品メーカーが、坩堝のごとく熱くなってがん治療というサービスのイノベーションづくりにまい進している。行政セクターやNPOセクターが提供するソリューションも基本的にはサービス。

サービスと社会に関係をどうとらえるのかによって、視点はまったく異なってくるが、ホリスティックに眺めれば、やはり社会というのはサービス・システム化しつつある。

さて、サービスの特徴をまとめてみる。

その1:経験共有性→ユーザとベンダーが経験を共有してサービスを創る。
その2:瞬時性→モノとして後に残らない。
その3:共進性→ユーザとベンダーがともにかかわってサービスは高度化する。
その4:自己組織性→サービスは自己組織的である。
その5:オートポイエーシス性→サービスは自己創造的である。
その6:偏満性→あらゆる場でサービスは生まれ、伝搬する。

6つの特徴が示唆することは、知識、情念、志が濃く集積、集約される場にイノベーションは創発されるいうこと。こないだの週刊ダイアモンドの社会起業家特集で紹介された社会起業事例も、ほとんどこれら6つの特徴が浮き彫りになっている。

そしてサービス・イノベーションの場は、中央研究所、企業、お役所、家庭、学校、町のそのへん、田舎のそのへん、ネットの中などなど、「場」はどこでもいい。秩序とカオスの堺目あたりが「場」となる。よく眺めれば、そんな境界領域の場はそんじょそこらにたくさんある。

今回の不況(恐慌)下では地下茎(リボゾーム)のように裏舞台ではサービス化現象はあまり目立つことなく着々と脈を張り巡らせている。経済が回復してきたら、一気に地下から芽を伸ばし、幹となりたくさんの花を咲かせることになるんだろう。