よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

OracleのSun買収後のシナリオ~MySQL~

2009年04月21日 | オープンソース物語


米Oracleが米Sun Microsystemsを買収することで両社が合意した。Sunが抱えてきたコマーシャル・オープンソースMySQLのポジションを中心として買収の経緯と今後をざっと眺めてみる。

上のチャートでみるとOracleとMySQLを足してエンタープライズ向けデータベース・ソフトのシェアは推計52パーセントを超える。2009年では当然この数値を超えている。これでOracleはデータベースい領域でガリバーの地位を確保し、マイクロソフトのSQLサーバの頭を押さえこんだこととなる。

今回このシナリオが現実化したと宣託(oracle)されたわけだ笑)

2006年2月、サンフランシスコでOSBC(Open Source Business Conference)に参加した。その場で、OralceがMySQLに買収を仕掛け、Martin Mickos氏が断ったという実話を直接聞いた。そこで近くにいたSugarCRM社長のジョンに「で、この話どう思う?」と聞くと、ニヤッと笑ってうなづきながら、"It's a good news"との返事。

あれから3年、宣託主のOracleはMySQLを買い予定は調和された。過去の背景をざっと洗ってみる。

Oracle社は,MySQLの主要データベース・エンジン2つを買収してきた。だが、前述のとおりOracleは3年前の2006年にMySQLの買収を試みて失敗。

そんなOracleの野望をしり目に、2008年にSunは、火事場泥棒ではないが、オープンソース・データベースの大手であるMySQLを10億ドルで買収した。

SunのCEO,リバータリアン(Libertarian)のJonathan Schwartzの戦略は、MySQLを加えて企業価値を高め、いずれSunの転売にとりかかるだろうと予測していた。もちろん、最有力買い手はOracleだ。ちなみに、当時SugarCRMの経営陣も僕と同じ見方をしていた。

MySQLは,オープンソース・アプリケーション・プラットフォームの代表的な組み合わせ「LAMP」のMに挙げられるデータベース。Sunが手がけるオープンソース・ソフトウエアは,Java,Open Office,NetBeansなどがあるが,それにMySQLが加わることになった。SunはMySQLの買収によって「Webエコノミーのプラットフォームを提供するリーダーであり続ける」ことを狙ったのだ。

そしてMySQLを飲んだSunがOracleによって買収されるというのが今回の構図。

Oracleの一大収益源は保守サービスにある。しかし、保守サービスビジネスを拡大するためにMySQLを保有するSunを抱き込んだわけではない。MySQLの売り上げの多くは保守サービスで、100億円程度。Oracleから見ればこの額はたいしたものではない。

ここで注意したのが、データベース主要製品の市場占有率の変化とMySQLのS字カーブ上でポジショニング。MySQLの普及過程はキャズムを越えてEarly Majorityに達しており、ユーザ普及度で比較優位を確立している。しかもプロプラ陣営と比較しても、急速にミドル・ローエンド市場を食ってきたのだ。

Late Majorityに達すると企業価値が上がり過ぎる。Early Majorityがコマーシャル・オープンソースの買い時、売り時の旬なのだ。



MySQLはM&Aの目玉(企業価値創出の源泉)として、美味しいポジションを確立してきたのだ。

急速に伸びてきているMySQLを有するSunを買収することによりOracleは;

・MySQLの顧客基盤をまるごとゲット
・MySQLをラインアップに入れてコントロールすることにより、カニバるのを回避
・ハイエンドはプロプラ10g、ミドル・ローエンドはコマーシャル・オープンソースのMySQLを充てることで市データベース市場における支配権を確立できる

さて、ここからが問題。エンタープライズ向けオープンソース界隈はどうなるのか。いくつかMOT的にグランド・シナリオを見たててみる。

(1)MySQL自体の機能向上にとっては足かせとなる。その結果、いやけを感じたMySQLオープンソースエディションのコミュニティは分裂する。このあたりITPro高橋信頼さんもちょっと書いている

(2)データベース系コマーシャル・オープンソースの大型M&A,業界再編を受け、次の材料は言語系、アプリ系コマーシャル・オープンソースとなる。「L→A→M→P→X」

(3)Pはphp。Xはどこか?アプリレーヤーのSugarCRMなどのコマーシャル・オープンソース陣営はシュリンクした経済情勢ではIPOは無理と踏んでおり、M&Aのイグジットに走りだす。相手はどこか?と聞くのはヤボ。予見して早めに対応することが肝心だ。経営者も従業員も。アライアンス先も含めてである・・。



オープンソース版MySQLユーザの心境やいかに?プロプラ帝国Oracleを毛嫌いしている連中が多いので、上の写真のような心境だろう。