よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

今野由梨、「ベンチャーに生きる」

2006年07月22日 | No Book, No Life
ダイヤルサービスの今野由梨さんと南青山でお会いした。その折、彼女の著書「ベンチャーに生きる~私のチャレンジ半生記~」をサイン入りでいただく。大著されたサインには名前とともに、「完全燃焼」と。

さて、一度はお会いしたいと思っていた矢先、ベテランの会に呼ばれてプレゼンテーションをしたら、なんと今野由梨さんはベテランの会のメンバーで、会場で挨拶することに。それが縁で、会うことになった。ただし、ミエミエの営業目的ではなく彼女のWay of Life、その基盤となってきた素地、スピリットのようなものをぜひ伺いたかったのだが。彼女は、そういうものではなく、ケアブレインズが提供する現実的なソリューションにご興味があったようなので、はからずもSFA、CRMのCTI連携など、SugarCRMがらみの仕事の話で大いに盛り上がってしまった。

さて、自己表現欲求が旺盛な起業家は、なるほど、よく半生記を書く。起業家による著作物は、著者が起業家であるがゆえに、読者=顧客という潜在意識がはたらくためか、直截な筆致で、半生、生涯の主要なライフイベントを紹介・露呈しつつ、顧客の共感を得ようとするコンテンツ展開が一般的だ。それゆえに、都合の悪いことはオブラートに包んで書き、都合のよいことは露悪的にとことん表現しまくる、ということになりやすい。

だから、そのようなスタイルで書かれた起業家半生記は、起業家の内面の凹凸のある陰影、仕事の地平線に見え隠れする泥臭い喜怒哀楽の表現に乏しくなりやすい。また、経営手法の紹介にしても、個別の成功事象の紹介や事後的な説明に終始するために、一般化されたモデルにはなり得ないことのほうが多い。したがって、起業家半生記に接して、ノンフィクションとしても、経営ケースとしても、豊かな読後感を得るということは実はなかった、この本を読むまでは。

この本の行間には、一代の女性起業家としての著者の喜怒哀楽、因縁因果、因果応報の深い陰影が刻み込まれている。その起伏に満ちた陰影の記述には、躁鬱的な性向さえも見え隠れさせるリスクを犯しながらも、無邪気なほどに明るさの余韻に満ちている。

感謝することに大切さ。
努力することの尊さ。
ストレスとうまく付き合う術。
限界に挑戦するひたむきさ。
人脈を創り上げるしたたかさ。
人を受け入れる豊かな受容性。
積極果敢な攻撃性。
信頼と信用と勝ち得る愚直なまでの正直さ。
ビジネスを身の回りに起こさせる運の強さ。

彼女の筆致だからこそ、正直なところ、納得感と感動を胸に刻むことができる。男性、女性を問わず、起業や独立に関心のある人には、ぜひ薦めたい一冊だ。