「日本語という外国語」日本人のためのニホンゴ再入門 荒川洋平著
今まで、数ヵ国語勉強しましたが、客観的に日本語を見たり、外国人の立場で日本語を見たりすることは、なかなかできません。しかし、本書は、かなりそれに迫ってくれているのではないでしょうか。
日本語の位置。
特徴として単語の数が多い。
日本語の会話を理解するためには、22,000語必要(岩淵氏談)。フランス語は5,000語で、96%理解できるそうです。翻って日本語検定では、N1には10,000語必要。N4で800語、N3で1,500語、N2で6,000語だそうです。
物の本に依りますと、単語が多いということは、気候の影響もありますが、感性に富んでいて細やかな表現ができるようですが・・・
また、相手をどう扱うかという仕組みが発達している(待遇表現-言語、表情、しぐさ、態度、服装、物理的な距離)例えば、敬語。待遇表現の仕組みが言語的に複雑です。
更に、表記が複雑。ひらがな、カタカナ、漢字等の複数の表記システムを混在させて表記します。また、漢字には、読み方が複数あり、他の言葉とつながってまた変化する場合もあります。
特徴として音の数が少ない
発声、発音のし方に制約がありますが、音の数は少ない。しかし、そのため同音異義語が多くなっています。高低のアクセントを使って区別もします。
ところが、学習者が苦労しています動詞の活用は、意外とシンプルなのだそうです。
性・数・時を区別しなければならない言語は動詞の変化が膨大になりますが、日本語の時制は、基本的には、「過去」と「それ以外」しか有りません。(今まで英語と同じようにたくさんあると誤解していました。)
名詞は男性扱いか、女性扱いかという区別する必要は有りませんし、単数や複数を区別する必要もありません。
諸外国では、公用語がたくさんある国が有りますが、なんと、日本の法律には、公用語の規定はないそうです。
日本語の読み書きは難しいか?
留学生の話からは、自由度が有り、明確な正書法の規定もなく、「ゆるい」ので、却って難しく、悩みの種になるそうです。すなわち、全部ひらがなで書いても、漢字混じり文であっても、間違ってはいないことになります。
新聞社や行政機関では、表記に関して一定の基準は有りますが、殆ど書き手の規範に任されています。一般的には、和語(やまとことば)はひらがなで、漢語は漢字で、外来語はカタカナで書くようになっています。
ひらがな・カタカナのどちらを先に学ぶか?
ということについては、英語が公用語の国では、先にカタカナを教えるところがあるようです。自分の名前や地名をカタカナでかけるからだそうです。
一日でひらがなが読めるようになる?
著者の感覚では、会話や文法と並行して文字学習する場合、一日10字ぐらいが標準のペースではないか、濁音、促音、例外(「を」「へ」「は」)等、都合2週間して、カタカナに入れるのではないかとの話です。
日本語のメリットとして、50音を覚えれば、発音できるが、アルファベットは憶えてもまだ発音ができません。
外国人の漢字学習とは
日本語検定では、N4で100字、N3で300字、N2で1,0000字(≒小学校の教育漢字)
N1で2,000字(≒常用漢字)を学習したことが前提になっているようです。
形声文字(カテゴリーを示す部分と、音を示す部分から成り立っている文字)へ興味を抱くように持って行きなさいとのアドバイスですがこれがなかなか難しい。
日本の漢字は実は合理的?
初級では和語中心に
単語には、知っていても殆ど使わない「理解語彙」と実際に使用する「使用語彙」があって、日本人成人の理解語彙は、4万~5万語、使用語彙が1万から1万数千語だそうです。フランス人もイギリス人も使用言語は5千語前後だそうです。
N4の学習者は、800語学ぶ必要があり、その4分3の600語は、和語だそうです。
で、初級の単語の授業では、定着させるために「音」「物」「意味」を結びつけなさい。また、ボキャブラリーを増やすために、その単語が実際話される時、どんな他の単語と一緒に使われるか(コロケーション)も一緒に教えることが望ましい。またその単語から連想される単語も一緒に、教えたり、復讐したりすれば、記憶の定着に役立つでしょうとのアドバイスです。
中級では漢字文化圏の学習者が有利。
中級のN3からN2へは、必要な語彙が、1,500語から一気に、6,000語まで増加するそうです。殆どが漢語ですので、漢字語圏の学習者には有利ですが、それ以外の方には、大変な壁になりそうですね。
外来語はややこしい
N2で必要とされる外来語は、300語程度だそうです。
上級の方にとって難しいのが動詞の組み合わせということなのですが、全くそういうことには、気が付きませんでした。
日本語の音
「音韻」
音韻という概念が有るのですね。ある言語音の中から意味のあるものとして何かを選び出す能力というのが、・・・・
脳科学の方面では、もっぱら各言語の音域(周波数)の違いが主張されていて、そういう話を聞いたことがないので、ちょっと信じられません。ただ、加齢による難聴については、よく似たことを聞いたことがあります。音は聞こえていますが、何を話しているのかわからないというような・・・・
結果としては、浴びるように聞いて耳を鳴らしなさいということでしょうか。
イタリア人は、ハ行の発音がうまくできないそうです。
タイ人は、サ行とタ行の区別が難しいそうです。
「音」についての知識が全く有りませんので・・・・・
ローマ字で書いた場合のアルファベット一字一字が「単音」で、声帯を震わせて、喉や口で邪魔されずに出てくる音が「母音」であり、喉や口のどこかを狭めたり、摩擦して作り出した音が「子音」と呼ばれます。
そして日本語の場合、基本的に、「音」は、母音だけのものと、子音と母音の組み合わされたもので、ひらがな、カタカナ、一文字で示されるのが特徴ということになります。
そしてその一文字が、「拍」と言って日本語のリズムを構成するようです。したがって、基本的に、単語も母音で終わるということになります。日本語と同じように母音で終わるのは、イタリア語のようで、それ以外の言語は、母音であったり、子音であったりします。リエゾンしますと判別が難しい。
しかし、「半母音」と呼ばれる例外もあります。「拗音」と呼ばれ、小さく表示する文字の扱いです。これらは、その前の子音と組み合わされて、一拍になります。
また「ヤ行」「ワ」行を長音にしたとき、子音はすぐ終わり、続けることができず母音のような音になってしまいます。これらは、母音ではなく「半母音」と呼ぶのだそうです。その結果、
① 母音 a
② 子音(または半母音)+母音 pi,ya
③ 子音+半母音+母音 kyo
と言う構成になります。
英語では、いくら音を伸ばしても、別の言葉にはなりませんが、日本語の場合は、別の言葉になってしまう言葉がありますので、学習者にとっては、難しいケースになってしまうかもしれません。
英語では、「シェーン!カム・バック」でも、「シェーーーーーン!カム・バック」でも意味が変わりませんが、日本語においては、どき(土器)を、長くして発音しますと、どうき(銅器)になったりします。その他「初期・正気」「叔父・王子」「地図・チーズ」等々。
「拍」には特殊拍と呼ばれる例外があり、下記に区別されます。
・「―」で表記される「伸ばす音」(長音)
・「っ」で表記される「詰まる音」(促音)
・「ん」で表記される「跳ねる音」(撥音)
音節
音節という概念が有って、「単音節」と「長音節」があります。これらがどうも「日本語らしい聞こえ方の秘密」らしいです。
通常は単音節ですが、一部の母音と前述の特殊音が付くと長音節になります。
そして、文章が、単音節だけで構成されている場合は、単音節を二つずつまとめて発するようです。「眠くて眠くて」→「ねむ くて ねむ くて」
ところが「単音節二つ」でまとまっているところに、長音節が入り込みますと、長音節が優先され、やや強く発音されるようです。(日本語の単語の半分上に特殊拍が入っているそうです)
「眠くてたまんない」は、
×「ねむ くて たま んな い」ではなく、
○「ねむ くて た まん ない」と発音するようです。
これらが、日本語らしい独特の響き、リズムを生み出すようです。
アクセント 「日本語は高低アクセント、英語は強弱アクセント」だそうで、日本語講座を受講するまで気が付きませんでした。単に「アクセント」という語でかたずけていました。
日本語のアクセントには、「2ルール4パターン」が有るそうです。すなわち、
① 一拍目と二拍目の高さが違う。
② いったん音が低くなると、もう高くならない
そして
① 頭高型 ↑い↓のちが
② 尾高型 お↑とこ↓が
③ 平板型 け↑むりが
④ 中高型 ち↑きゅ↓うぎが
日本語の同音異義語が圧倒的に多いのが漢語です。漢語が和語と結びついたりしますと、和語のアクセントからのからの類推が容易になります。
「いまどきのアクセント」をどう教えるか?については、間違いとしないで、標準的なアクセントはこうであると示すのがよさそうです。
「きわだたせの技術」プロミネンス
イントネーションは、文章全体の高低(↗、↘)を言いますが、特定部分を強く言ったり、音の高低や長短で差をつけたりして際立たせた発音の仕方をします。 プロミネンス(卓立)と言うそうです。
発音が苦手な人の三タイプ
発音の道具立てとして、拍・音節・アクセント・イントネーション・プロミネンスがあります。
発音が苦手という場合
① 発音が上手いが聞き取りが下手な人。 拍の感覚→
② 上手に聞けるが、発音の下手な人。 音の流れ全体像→個別の分析
③ どちらも上手ではない人。 音韻に問題
私には、分かりにくいですが、細かく分けて分析する方法は、参考になると考えます。
格助詞
「が」は、「なに」「誰」等の疑問詞が文頭に来るときは、「が」を使う。
イ形容詞とナ形容詞
「きれい花は好きくない」と間違える理由
「きれい(な)」、「きらい(な)」は、ナ形容詞ですが、イ形容詞と誤用してしまう。
「あの教会は古いじやありません」
名詞の否定形と形容詞の否定形の違いを理解する。
「私の家は庭が狭い」の主語はどれ?
初級のヤマ場「テ形」
四つの秘訣
① 拡張 ― 単純な文型から複雑な文型へ
リンゴ、みかん、あか、きいろ、買う、食べるの絵カード
これはなんですか?
これはリンゴです。これはミカンです。これはあかです。これはきいろです。
あかいりんご、きいろいみかん、
リンゴは赤い。
これは赤いリンゴです。
ここにリンゴがあります
ここにリンゴが二個あります
私はリンゴを買いました。
私はリンゴを二個買いました。
私はリンゴが好きです。
私はリンゴを食べました。
私は赤いリンゴを食べました。
私はリンゴを二個食べました。
② 耳を使う
③ リアリティにこだわる。 リアルな使用状況。
④ 「日本語で言いたい」気持ちを大切に。作文して、発話させる。
アスペクト
アスペクトは、一連の動作や出来事が、どの「局面」「や「段階」にあるのか示します。
① 始まっている局面
② 進行中である局面
③ 終わりにかかわる局面
食べ 始め た
動詞 アスペクト テンス
「態」
「態」とは、表現された出来事を誰の立場から見るか区別する文法形式をいいますが、日本語学では、「ボイス(Voice)」と称して、見方の違いによる異なる言語形式を示すそうです。
非情の受け身
出来事を中心に据えた受け身
オリンピックが開催された。
自動詞の受け身もある
原理的には、自動詞の受け身はありませんが、「話し手が何か迷惑をこうむった」
赤ちゃんに泣かれた。
迷惑なのか、ありがたいのか
自動詞の受け身を使って、話し手が何か迷惑を被ったニアンスで使う場合があります。
「赤ちゃんが泣いた」→「赤ちゃんに泣かれた」
迷惑でなく、有り難い時、受け身を避け、別の形を使う場合があります。
「彼女に窓を開けられた」ではなく、「彼女が窓を開けてくれた。」
「行かせられる」と「行かされる」
本来、「行かせられる」ですが、話し言葉でなまり、「行かされる」になる。
食べ + させ + られ + てい + た
動詞 ボイス使役 ボイス受け身 アスペクト テンス
「法」(ムード)
・ありのままのことを述べる「直説法」
・現実ではないことの願望などを述べる「仮定法」
・相手にその実現を求める「命令法」
その形式として
① 動詞の形を変える。 「食べよう」「食べてもいい」
② 動詞に名詞をつける。 「つもり」
ムードの助っ人
「おいしそうだ」と「おいしいそうだ」をどう教えるか
「おいしそうだ」 視覚
「おいしいそうだ」 聴覚(伝聞)
「雨が降りそうだ」 様子
「雨が降るそうだ」 伝聞
彼は、かなり練習 させ られ てい た らしい よ
ボイス ボイス アスペクト テンス ムード ムード
使役 受身 進行 過去 推測 判断
日本語教育の世界
何を教えるのか?: what
3級合格レベル ー 日常の会話なら不自由しないというレベル
漢字 300字。 小学2年生で240字、小学3年生で440字
単語 1,500語。
文型 「~させてください。」 許可を求める
「~なくてもかまわない。」 不必要を示す
「~てくださる。」 敬語
初学者が3級のレベルに達するためには、およそ300時間の日本語学習が必要。
1日3時間勉強して、およそ20週間(4~5ヶ月)
どうやって教えるのか?: how
教え手として、サンプルの単語がスラスラ出てくるようにしておかなければなりません。
・ある単語グループに属する語をどんどん言える。
・単語同士の組み合わせ。 自動詞⇔他動詞のペア
・感情を示す形容詞のグループ
・初級の家具の単語のグループ
今まで、数ヵ国語勉強しましたが、客観的に日本語を見たり、外国人の立場で日本語を見たりすることは、なかなかできません。しかし、本書は、かなりそれに迫ってくれているのではないでしょうか。
日本語の位置。
特徴として単語の数が多い。
日本語の会話を理解するためには、22,000語必要(岩淵氏談)。フランス語は5,000語で、96%理解できるそうです。翻って日本語検定では、N1には10,000語必要。N4で800語、N3で1,500語、N2で6,000語だそうです。
物の本に依りますと、単語が多いということは、気候の影響もありますが、感性に富んでいて細やかな表現ができるようですが・・・
また、相手をどう扱うかという仕組みが発達している(待遇表現-言語、表情、しぐさ、態度、服装、物理的な距離)例えば、敬語。待遇表現の仕組みが言語的に複雑です。
更に、表記が複雑。ひらがな、カタカナ、漢字等の複数の表記システムを混在させて表記します。また、漢字には、読み方が複数あり、他の言葉とつながってまた変化する場合もあります。
特徴として音の数が少ない
発声、発音のし方に制約がありますが、音の数は少ない。しかし、そのため同音異義語が多くなっています。高低のアクセントを使って区別もします。
ところが、学習者が苦労しています動詞の活用は、意外とシンプルなのだそうです。
性・数・時を区別しなければならない言語は動詞の変化が膨大になりますが、日本語の時制は、基本的には、「過去」と「それ以外」しか有りません。(今まで英語と同じようにたくさんあると誤解していました。)
名詞は男性扱いか、女性扱いかという区別する必要は有りませんし、単数や複数を区別する必要もありません。
諸外国では、公用語がたくさんある国が有りますが、なんと、日本の法律には、公用語の規定はないそうです。
日本語の読み書きは難しいか?
留学生の話からは、自由度が有り、明確な正書法の規定もなく、「ゆるい」ので、却って難しく、悩みの種になるそうです。すなわち、全部ひらがなで書いても、漢字混じり文であっても、間違ってはいないことになります。
新聞社や行政機関では、表記に関して一定の基準は有りますが、殆ど書き手の規範に任されています。一般的には、和語(やまとことば)はひらがなで、漢語は漢字で、外来語はカタカナで書くようになっています。
ひらがな・カタカナのどちらを先に学ぶか?
ということについては、英語が公用語の国では、先にカタカナを教えるところがあるようです。自分の名前や地名をカタカナでかけるからだそうです。
一日でひらがなが読めるようになる?
著者の感覚では、会話や文法と並行して文字学習する場合、一日10字ぐらいが標準のペースではないか、濁音、促音、例外(「を」「へ」「は」)等、都合2週間して、カタカナに入れるのではないかとの話です。
日本語のメリットとして、50音を覚えれば、発音できるが、アルファベットは憶えてもまだ発音ができません。
外国人の漢字学習とは
日本語検定では、N4で100字、N3で300字、N2で1,0000字(≒小学校の教育漢字)
N1で2,000字(≒常用漢字)を学習したことが前提になっているようです。
形声文字(カテゴリーを示す部分と、音を示す部分から成り立っている文字)へ興味を抱くように持って行きなさいとのアドバイスですがこれがなかなか難しい。
日本の漢字は実は合理的?
初級では和語中心に
単語には、知っていても殆ど使わない「理解語彙」と実際に使用する「使用語彙」があって、日本人成人の理解語彙は、4万~5万語、使用語彙が1万から1万数千語だそうです。フランス人もイギリス人も使用言語は5千語前後だそうです。
N4の学習者は、800語学ぶ必要があり、その4分3の600語は、和語だそうです。
で、初級の単語の授業では、定着させるために「音」「物」「意味」を結びつけなさい。また、ボキャブラリーを増やすために、その単語が実際話される時、どんな他の単語と一緒に使われるか(コロケーション)も一緒に教えることが望ましい。またその単語から連想される単語も一緒に、教えたり、復讐したりすれば、記憶の定着に役立つでしょうとのアドバイスです。
中級では漢字文化圏の学習者が有利。
中級のN3からN2へは、必要な語彙が、1,500語から一気に、6,000語まで増加するそうです。殆どが漢語ですので、漢字語圏の学習者には有利ですが、それ以外の方には、大変な壁になりそうですね。
外来語はややこしい
N2で必要とされる外来語は、300語程度だそうです。
上級の方にとって難しいのが動詞の組み合わせということなのですが、全くそういうことには、気が付きませんでした。
日本語の音
「音韻」
音韻という概念が有るのですね。ある言語音の中から意味のあるものとして何かを選び出す能力というのが、・・・・
脳科学の方面では、もっぱら各言語の音域(周波数)の違いが主張されていて、そういう話を聞いたことがないので、ちょっと信じられません。ただ、加齢による難聴については、よく似たことを聞いたことがあります。音は聞こえていますが、何を話しているのかわからないというような・・・・
結果としては、浴びるように聞いて耳を鳴らしなさいということでしょうか。
イタリア人は、ハ行の発音がうまくできないそうです。
タイ人は、サ行とタ行の区別が難しいそうです。
「音」についての知識が全く有りませんので・・・・・
ローマ字で書いた場合のアルファベット一字一字が「単音」で、声帯を震わせて、喉や口で邪魔されずに出てくる音が「母音」であり、喉や口のどこかを狭めたり、摩擦して作り出した音が「子音」と呼ばれます。
そして日本語の場合、基本的に、「音」は、母音だけのものと、子音と母音の組み合わされたもので、ひらがな、カタカナ、一文字で示されるのが特徴ということになります。
そしてその一文字が、「拍」と言って日本語のリズムを構成するようです。したがって、基本的に、単語も母音で終わるということになります。日本語と同じように母音で終わるのは、イタリア語のようで、それ以外の言語は、母音であったり、子音であったりします。リエゾンしますと判別が難しい。
しかし、「半母音」と呼ばれる例外もあります。「拗音」と呼ばれ、小さく表示する文字の扱いです。これらは、その前の子音と組み合わされて、一拍になります。
また「ヤ行」「ワ」行を長音にしたとき、子音はすぐ終わり、続けることができず母音のような音になってしまいます。これらは、母音ではなく「半母音」と呼ぶのだそうです。その結果、
① 母音 a
② 子音(または半母音)+母音 pi,ya
③ 子音+半母音+母音 kyo
と言う構成になります。
英語では、いくら音を伸ばしても、別の言葉にはなりませんが、日本語の場合は、別の言葉になってしまう言葉がありますので、学習者にとっては、難しいケースになってしまうかもしれません。
英語では、「シェーン!カム・バック」でも、「シェーーーーーン!カム・バック」でも意味が変わりませんが、日本語においては、どき(土器)を、長くして発音しますと、どうき(銅器)になったりします。その他「初期・正気」「叔父・王子」「地図・チーズ」等々。
「拍」には特殊拍と呼ばれる例外があり、下記に区別されます。
・「―」で表記される「伸ばす音」(長音)
・「っ」で表記される「詰まる音」(促音)
・「ん」で表記される「跳ねる音」(撥音)
音節
音節という概念が有って、「単音節」と「長音節」があります。これらがどうも「日本語らしい聞こえ方の秘密」らしいです。
通常は単音節ですが、一部の母音と前述の特殊音が付くと長音節になります。
そして、文章が、単音節だけで構成されている場合は、単音節を二つずつまとめて発するようです。「眠くて眠くて」→「ねむ くて ねむ くて」
ところが「単音節二つ」でまとまっているところに、長音節が入り込みますと、長音節が優先され、やや強く発音されるようです。(日本語の単語の半分上に特殊拍が入っているそうです)
「眠くてたまんない」は、
×「ねむ くて たま んな い」ではなく、
○「ねむ くて た まん ない」と発音するようです。
これらが、日本語らしい独特の響き、リズムを生み出すようです。
アクセント 「日本語は高低アクセント、英語は強弱アクセント」だそうで、日本語講座を受講するまで気が付きませんでした。単に「アクセント」という語でかたずけていました。
日本語のアクセントには、「2ルール4パターン」が有るそうです。すなわち、
① 一拍目と二拍目の高さが違う。
② いったん音が低くなると、もう高くならない
そして
① 頭高型 ↑い↓のちが
② 尾高型 お↑とこ↓が
③ 平板型 け↑むりが
④ 中高型 ち↑きゅ↓うぎが
日本語の同音異義語が圧倒的に多いのが漢語です。漢語が和語と結びついたりしますと、和語のアクセントからのからの類推が容易になります。
「いまどきのアクセント」をどう教えるか?については、間違いとしないで、標準的なアクセントはこうであると示すのがよさそうです。
「きわだたせの技術」プロミネンス
イントネーションは、文章全体の高低(↗、↘)を言いますが、特定部分を強く言ったり、音の高低や長短で差をつけたりして際立たせた発音の仕方をします。 プロミネンス(卓立)と言うそうです。
発音が苦手な人の三タイプ
発音の道具立てとして、拍・音節・アクセント・イントネーション・プロミネンスがあります。
発音が苦手という場合
① 発音が上手いが聞き取りが下手な人。 拍の感覚→
② 上手に聞けるが、発音の下手な人。 音の流れ全体像→個別の分析
③ どちらも上手ではない人。 音韻に問題
私には、分かりにくいですが、細かく分けて分析する方法は、参考になると考えます。
格助詞
「が」は、「なに」「誰」等の疑問詞が文頭に来るときは、「が」を使う。
イ形容詞とナ形容詞
「きれい花は好きくない」と間違える理由
「きれい(な)」、「きらい(な)」は、ナ形容詞ですが、イ形容詞と誤用してしまう。
「あの教会は古いじやありません」
名詞の否定形と形容詞の否定形の違いを理解する。
「私の家は庭が狭い」の主語はどれ?
初級のヤマ場「テ形」
四つの秘訣
① 拡張 ― 単純な文型から複雑な文型へ
リンゴ、みかん、あか、きいろ、買う、食べるの絵カード
これはなんですか?
これはリンゴです。これはミカンです。これはあかです。これはきいろです。
あかいりんご、きいろいみかん、
リンゴは赤い。
これは赤いリンゴです。
ここにリンゴがあります
ここにリンゴが二個あります
私はリンゴを買いました。
私はリンゴを二個買いました。
私はリンゴが好きです。
私はリンゴを食べました。
私は赤いリンゴを食べました。
私はリンゴを二個食べました。
② 耳を使う
③ リアリティにこだわる。 リアルな使用状況。
④ 「日本語で言いたい」気持ちを大切に。作文して、発話させる。
アスペクト
アスペクトは、一連の動作や出来事が、どの「局面」「や「段階」にあるのか示します。
① 始まっている局面
② 進行中である局面
③ 終わりにかかわる局面
食べ 始め た
動詞 アスペクト テンス
「態」
「態」とは、表現された出来事を誰の立場から見るか区別する文法形式をいいますが、日本語学では、「ボイス(Voice)」と称して、見方の違いによる異なる言語形式を示すそうです。
非情の受け身
出来事を中心に据えた受け身
オリンピックが開催された。
自動詞の受け身もある
原理的には、自動詞の受け身はありませんが、「話し手が何か迷惑をこうむった」
赤ちゃんに泣かれた。
迷惑なのか、ありがたいのか
自動詞の受け身を使って、話し手が何か迷惑を被ったニアンスで使う場合があります。
「赤ちゃんが泣いた」→「赤ちゃんに泣かれた」
迷惑でなく、有り難い時、受け身を避け、別の形を使う場合があります。
「彼女に窓を開けられた」ではなく、「彼女が窓を開けてくれた。」
「行かせられる」と「行かされる」
本来、「行かせられる」ですが、話し言葉でなまり、「行かされる」になる。
食べ + させ + られ + てい + た
動詞 ボイス使役 ボイス受け身 アスペクト テンス
「法」(ムード)
・ありのままのことを述べる「直説法」
・現実ではないことの願望などを述べる「仮定法」
・相手にその実現を求める「命令法」
その形式として
① 動詞の形を変える。 「食べよう」「食べてもいい」
② 動詞に名詞をつける。 「つもり」
ムードの助っ人
「おいしそうだ」と「おいしいそうだ」をどう教えるか
「おいしそうだ」 視覚
「おいしいそうだ」 聴覚(伝聞)
「雨が降りそうだ」 様子
「雨が降るそうだ」 伝聞
彼は、かなり練習 させ られ てい た らしい よ
ボイス ボイス アスペクト テンス ムード ムード
使役 受身 進行 過去 推測 判断
日本語教育の世界
何を教えるのか?: what
3級合格レベル ー 日常の会話なら不自由しないというレベル
漢字 300字。 小学2年生で240字、小学3年生で440字
単語 1,500語。
文型 「~させてください。」 許可を求める
「~なくてもかまわない。」 不必要を示す
「~てくださる。」 敬語
初学者が3級のレベルに達するためには、およそ300時間の日本語学習が必要。
1日3時間勉強して、およそ20週間(4~5ヶ月)
どうやって教えるのか?: how
教え手として、サンプルの単語がスラスラ出てくるようにしておかなければなりません。
・ある単語グループに属する語をどんどん言える。
・単語同士の組み合わせ。 自動詞⇔他動詞のペア
・感情を示す形容詞のグループ
・初級の家具の単語のグループ