本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

「疑」という煩悩

2018-08-21 16:56:41 | 十地経

三大煩悩に加えて、

慢(まん)と疑(ぎ)と見(けん)

を加えて六大煩悩となり、

その中でも

「疑」という煩悩も

なかなか侮れない煩悩です。

 

疑の反対は信ということで、

信じるとか信仰ということも

ただ信じるとか

不条理なるが故に信じるとか

そういうものではなく

疑というものがはっきりして

初めて信ということが出てきます。

 

「疑」という字も

おもしろい成り立ちで、

疋部に属する文字で

一つの意味は、

子供がよちよちして立ち止まる、

もう一つは、

杖をついてどっちに行こうか

迷っているという形で、

そこから止まるという意になり

ひいて、うたがうという意味に

なったということです。

 

疑というのは

迷って立ち止まり決断しかねている

という状態です。

経典には「猶予」という言葉で

出てきます。

猶予ということは決まらない

ということです。

また、躊躇逡巡

(ちゅうちょしゅんじゅん)

という言葉もあります。

あれこれと決めかねて、

足踏みしているということです。

 

ところが、

疑いということも

科学的なことが解らなくて

猶予しているということは

仏教では問題になりません。

詳しくは

「諦理に猶予する」と

お経にはでてきます。

これは、真理に対して猶予している

「不疑の善品を障える」と

定義してあり、

真理に対して疑い決めかねている

ということです

これは進んで考えると

善が出来ないということになります

反対に、

なにか一つでも心が決まった時には

心は軽く明るくなるものです。

 

そこでもう一つ

「仏教は純粋に生きよ」

ということを教えています。

信心ということも

純粋という意味を持っています。

純粋ということは

一面には後ろめたさもなく

どのような場合にも

非常に強いしまた明るいものです。

これほど幸せなことはないと

教えています。

 

純粋に生きるということは

自分の我に沿って生きるのではなく

仏の心を頂いて

仏の心に生きるということです。

自分の我によって思うがまましたい

その欲望は貪と言ってむさぼりであり

それは不純な心です。

その欲望が公になったというか

純粋になった場合が願、ねがいと

いわれるものです。

 

そういわれても

素直に信じきれないのが私たちです

どうしても疑ってしまう

そんなに純粋な心で生きられるのか

というように、

すぐ私たちのこざかしい知恵が

頭を持ち上げてきます。

 

どうしてなのか

どうしても自分の知恵を信じ

自分の考えを頼りにして

仏の智慧をたのまず疑ってしまう

そこが大きな問題です

 

そこで経典では

文字の厳密さで説明しています

頼む、という字は

自分というものを中心にして

他によって自分の思いを

遂げようとする。

そういう意味です。

ところが、もう一つお経では

憑む(たの)という字を使います

これは普通には憑依というように

のりうつるという意味に使いますが

お経の中でいう憑むは

自分を投げ出し仏をたのむ

ということです。

頼は、…にたのむ。

憑は、…をたのむ。

微妙なところですが

「頼」の場合は、

自分の都合というものに立って

人にものを頼むという

だから依頼の頼は自分を立場に

しているということです。

それに対し

「憑」の場合は、

自分を立場にしてない

仏をたのむという仏が立場に

なっているということです。

 

ということで

なぜ猶予するかといえば

それは我執に立っているということ

なのです。

自分を中心に置くから(たのむ)

真理が受け取れない。

決まらない。

決まらないのは

何か都合を考えているからなのです

自分をたのんでいるから

真理に対して猶予するのだと

積極的に疑いを我執として

とらえているのです。

 

そこに「疑」という煩悩の

重要性があり

このことが大きな妨げになる

ということを表しています。

 

といってもなかなか

いらぬソロバンをはじいて

素直になれないものです。

反対に、

『十地経講義』のなかでは

人間の心は疑いしかない、

人間の心ではっきりする

ということはありえない

人間の心はウロウロししている

というのが本質だと

疑いを疑いと知れば

疑いは消える。

というように述べておられます。

 

そこに問題を深めていく

十地経の道程があるような

気がするのです。

 

 

 

 

 

 

 

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