本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

 『 兎角 』

2010-05-21 22:21:51 | 住職の活動日記
 この字を見た若い子たち、

「 うさぎ 」 に 「 つの 」 一体どういうことだろう     

お母さんから届いたメール    

意味も不明、友達にも送ったりして推測したようです。

「 お母さんは怒っているのか ? 」

おとなしい優しいウサギに角が生えた、ということは    

 一応 「 ゴメンナサイ 」 と返事しようか 

 ま~ 「 ありがとう 」 といっておこうかと、


 いろいろ悩まれたということでした           


あとで、 「 とにかく 」  ということが判明したようです。


 この文字も死語になっているのでしょう。

言われてみると、不思議な字です。

『 兎角 』 ( うさぎにつの ) がなんで 「 とにかく 」

単なる当て字のようですが、 

『 兎に角 』 と一般的に使う  『 兎角 』  と、

仏教用語としても数多く出てくるようです。


 『 兎角亀毛 』 という言葉として出てきます。
  とかくきもう

兎に角が生えるわけはないし、また亀に毛が生えるわけでもない、

ということで、実在しないもののたとえとして使われるようです。


 『 言葉は妄想であって、兎角亀毛のようなものである 』

                   ( 楞伽経 りょうがきょう )


 仏教では一切が空であると説きます。

  水中の月  虚空の花  鏡中の像  空中の鳥跡

 などのように 「 あるけどない 」 

 すべてのもは実在があるようだけれども、本来は空なのだ、

 と説くのです。


夏目漱石も 『 草枕 』 の冒頭で

 「 智に働けば角が立つ 情に掉させば流される 意地を通せば窮屈だ。

   兎角この世は住みにくい。」

と述べています。

    ( 大谷大学 生活の中の仏教用語 163 ) に詳しく述べてあります。


また面白いのは

 『 弘法大師・空海 』 が24歳の時に著された

『 三教指帰 』 ( さんごうしいき ) という中で、

一つの例え話として、 

『 兎角公 』 という人の甥に 『 蛭牙公子 』 という不良少年がいて
                     しつがこうし

その少年の更生を 『 亀毛先生 』 にお願いするという、話があります。

この物語は空海が24才の時、何故、自分は仏教で出家するのかという

儒教と道教と仏教を比較して、述べておられるのです。

 
 このころから 『 兎角    』 『 亀毛   』 という言葉は

普通に使われていたのでしょう。

 私にも勉強になりました。  
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