大江戸散策徒然噺 Introducing Japanese culture and history

豊かな歴史に彩られた日本の文化と歴史を紹介

お江戸駒込・吉祥寺は歴史を飾った偉い方々の集う場所【本郷通りの一大名刹】

2010年12月10日 22時14分33秒 | 文京区・歴史散策
江戸時代の寺社地としてあまた寺院が並んでいた本郷、駒込の中で、特筆すべき名刹がります。将軍御成道として名高い岩槻街道(現本郷通り)に面して立派な山門が構えています。山門の額には「旃檀林」の文字、寺名は吉祥寺。中央線の駅名にある吉祥寺と同じ名前なのですが、まったく別物です。

吉祥寺山門

寺の由来ですが、太田道灌による江戸城築城時にまで遡る歴史を持っています。家康の江戸入府後、駿河台に寺領を持っていましたが、明暦の大火で焼失後、ここ駒込に移転したといいます。額に記されていた「旃檀林」は幕府の学問所の意味で、あの昌平坂学問所(湯島聖堂)と肩を並べていたほどの寺格であったようです。

参道

山門を入ると都心では考えられないくらいの、長い長い参道が本堂へまっすぐに伸びています。参道の右手には墓地が広がっています。参道の途中、左手に真新しい塚が立っています。塚の表面には「お七、吉三郎 比翼塚」の文字が刻まれています。ということは、あの八百屋お七とお七が恋焦がれた吉三郎のことでは?しかし比翼塚は墓ではないので、いったいどうしてここにあの火事の主人公の名が刻まれた塚があるのか?

お七、吉三郎 比翼塚

実は後世になって「八百屋お七の火事」は井原西鶴の浮世草子「好色五人女」に記述されたり、河竹黙阿弥などが脚色し芝居や人形浄瑠璃によって八百屋お七は文学や芸能の世界で生きつづけことになります。そして話は面白おかしく作られていくのですが、この話の中で火元が吉祥寺ということになってしまったのです。事実とは異なる火元なのですが、お七愛好家たちが便宜上、ここ吉祥寺境内に比翼塚を建てたと言われています。
よってお七と吉三郎の墓はここ吉祥寺には存在しないのです。実はお七の墓は白山の円乗寺境内に置かれているのはご存知でしょうか。

お七と喜三郎の比翼塚のすぐ側には吉祥寺の大仏が濡れ仏の状態で鎮座しています。

濡れ仏(大仏)

大仏様にお参りしたあと、さらに参道を進むとすぐ左手に「二宮尊徳」の墓碑が現れます。

二宮尊徳墓碑
二宮尊徳墓

尊徳の墓は栃木県今市市の二宮神社にあると聞いているので、どうしてここにもあるのだろうかと疑問が残ります。墓碑と書かれているので、本来の墓の意味ではないのかもしれません。墓碑の横にドーム状のこんもりとした墓があるのですが、これが尊徳の墓ではないかとも言われています。

そして本堂を正面にして右手に鐘楼と歴史に彩られたようなお堂が境内を飾っています。鐘楼はともかくお堂はかなり歴史を刻んでいる風に見えます。お堂は「経蔵堂」と呼ばれているもので、伽藍の建造物の中で唯一戦災を免れたものです。

鐘楼
経蔵堂

本堂に向かって左側は広大な墓地が広がっています。本堂に近い墓地は比較的新しい墓石が並んでいるのですが、墓地の奥へ目を移すとなにやら由緒ありげな宝塔が夥しいと言ってもいいくらいに並んでいます。好奇心に負けて墓地の細い道を進んでいくと、目の前に現れたのはまぎれもなくお江戸の時代の由緒正しい大名家の方々の宝塔(墓)が並んでいたのです。

 

 



伝通院で見た徳川一門の宝塔とよく似た宝塔が林立しているといった表現が正しいかもしれません。一つ一つの宝塔に刻まれた院号では生前の名前がとんと判明しません。それにしてもあまりにも多すぎる数なのです。

このブログを記述する前に、これらの宝塔について調べてみた結果、おおよそ以下の方々の宝塔(墓)があることが判明しました。
蝦夷松前藩松前氏の墓所。
新発田藩溝口の墓所。
初代谷村藩主鳥居成次。山形藩の第2代藩主鳥居忠恒。筑後柳河藩二代田中忠政
備中松山藩板倉家の墓所。幕末の老中首座板倉勝静が有名。
常陸麻生藩の墓所。初代新庄直頼以下歴代藩主
肥前福江藩五島家の墓所。
信濃高島藩諏訪家。

これほどまでに諸藩の墓所がここ吉祥寺に置かれた理由はいったいどうしてなのか?調べてみたいものです。
この他、墓を見つけることができなかったのですが、幕末に函館五稜郭戦争で最後まで抵抗をした幕臣榎本武揚の墓や天保の改革であの水野忠邦の片腕として活躍し、南町奉行の要職にあった鳥居耀蔵の墓もあるのです。
ちなみにこの鳥居耀蔵はあの遠山の金さんと常に張り合った仲なのです。

鳥居耀蔵墓(一番右)と鳥居家の墓

タイトルにも書いたように、吉祥寺の墓地には歴史を彩ったそうそうたる人物の集う場所そのもの。あの世でどんな話をしているのか聴いて見たいものです。





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