故郷へ恩返し

故郷を離れて早40年。私は、故郷に何かの恩返しをしたい。

しょうがの姜さん

2015-01-09 04:25:52 | プロジェクトエンジニアー


幼子の 斜に走りし 里の海

笑顔で、先輩に言われたことがありました。
会社に入って3年目くらいでした。普段、言葉をかわさない先輩からでした。
「Oは普段難しい、いや怒ったような顔をしているが、笑うと人をひきつける様な愛嬌がある。」と。
興味がありませんでした。

若いときは、知らないことを隠そうとしていました。
弱い自分を晒すのがいやでした。
結婚する前後から変わりました。
あけすけでもいいんだと思うようになっていました。
その頃から冗談も出るようになりました。
まだまだ硬い冗談でした。頭で考えた冗談でした。

39歳でエンジニアリング会社にかわり、1年後にプレゼンテーションをすることになりました。
事前チェックがありました。真剣にみな意見を言ってくれました。
内容はもちろんのことずたずたでした。
時間を計るタイムキーパーから、間のとり方を注意されました。
他の広報の担当者からジェスチャー、目配りなど次から次に注意されました。
どこにも良いところは映ってなかったようでした。
ただひとつ熱心な語り口調だけはほめられたように思います。

私は、その後も人前でしゃべる仕事を20年続けることになりました。
しゃべる側ですが、私は相手の表情をいつしか読み取るようになっていました。
声にでない話しかけです。
私は、表情と対話しながらしゃべるようになりました。
相手に、興味のないささいな仕草が読み取れると話をやめました。
そして、仕事を切り上げました。
途中でもかまいません。相手に聞く気がないからです。

その頃から、営業に言っても、世間話だけで帰ることが多くなりました。
相手が技術的な悩みを打ち明けるようになって初めて持参したパンフレットやら
ノートに解決策を示しました。
それまでは、何も提出しなくなりました。
業者と打ち合わせも同様でした。

会社の人と話すことも多いのですが、
その人が持っている地力とやる気がいち早く見抜けるようになりました。
繰り返すうちにその能力は磨かれていきました。
そして、人に優しくなることができるようになりました。
相手の立場で、仕事をし、ものを書く、話す癖がついてきたように思います。

飲んでも、できるだけ仕事の話はしないようにしたいのです。
毒にも薬にもならない馬鹿話と助平な話に終始します。

多くの国に行き、一人で仕事をこなしてくるエキスパートの外人から多くを学びました。
彼らは、必ず冗談を仕込んできました。軽妙でした。
時々、ブラックユーモアも混ざるので対応に気をつけなければなりませんでした。
言葉が足りない分、表情を読み取ることが研ぎ澄まされてきました。
ジェスチャーだけで会話ができるようになりました。
首をすくめたりかしげたり、ウインクしたり、顔を覆ったり平気でできるようになりました。

でも心に染み入るような語り口は、できません。
しょうがの姜(かん)さんの語り口調は、しびれます。
聞いていて音楽のようです。清流のごとく渇いたのどにしみこんできます。
腹にゆっくり落ち込んでいくような語り口です。

和尚のする法話とは異種の趣があります。
相手のことを観察し、何をいったらよいのか熟知しているから
言葉も選ぶことができ、内容も選べるのだと思います。

相手があっての対話です。
この人の語り口調には、相手にしゃべらせるいや相手のことを考える間があります。
この間が、相手に話しますよのサインかもしれません。

相手の話をよく聞いています。
塾考して話すのが感じられます。
この人は苦労をしていると思いました。

一度だけ、かれが生い立ちを紹介する番組を見たことがあります。
九州の片田舎で在日朝鮮人の両親は、廃品回収業をしていたように記憶しています。
悪童達と遊んだくだりは、実に楽しそうに話されていました。
もっともっと知りたい、この人の内面にあるものを聞かせて欲しいと思わせるものがある人です。

2013年7月21日  (手記より)

<<現在の心境>>
間のある語り口。
相手を尊敬し、自らの内面に問いかけ、話す作法です。

小さい子の話を聞くときに、
外人の女先生は、必ず「そうね。」と日本語で言いました。
子供は、得意になって話がやみませんでした。

年よりの話を聞くときは、
どんな話も初めて聞く話としなければなりません。

何にあいずちを打って欲しいのか知らなければならないのです。
これからも、人との対話を楽しみたいものです。

小さ子の 少し低めの 波しぶき

2015年1月9日
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