(室の八嶋)
三月二十七日深川を出発した芭蕉は、
27日春日部に、28日間々田に泊まり、
29日には「室の八嶋」を参詣したと、
同行した曾良が旅日記に書いている。
「室の八嶋」は栃木市惣社町にある
「大神神社(おおみわじんじゃ)」の中に残っているというので訪ねた。
芭蕉が残した「奥の細道」に、
{室の八嶋に詣(けい)す。同行曾良が曰く、「この神は子の花さくや姫と申して、
富士一躰(いったい)なり。無戸室(うつむろ)に入りて焼き給ふちかひのみ中に、
火々出見(ほほでみ)のみこと生まれ給ひしより、室の八嶋と申す。
また煙を読み習はし侍るもこの謂(いわ)れなり。将(はた)このしろといふ魚を禁ず。
縁起の旨、世に伝ふ事も侍りし。}とある。
東京から行くには、東北本線栗橋駅で東武日光線に乗り換え、
栃木駅、もしくは新栃木駅で
さらに東武宇都宮線に乗り換え、野州大塚駅で降りる。
駅名の「野州」をなんと読むのか、いろいろ考えた。
「のす」なのか、滋賀県野洲市(やすし)があるから「やす」か、
室の八島というから「やしま」と読むのか、「のしま」か「のくに」なのか、
「のしゅう」か「やしゅう」なのか解らなかった。
切符を買うのには読み方は解らなくても、
「野州大塚」の駅名まで740円と掲示されており、問題はなかった。
到着駅のホームにローマ字で「やしゅうおおつか」とあったので、
「やしゅう」と読むことだけは解った。
駅で降りるとき駅員さんに「なぜ野州(*)というのか」と尋ねたところ
他にも「野州XX」という名前の駅もありますと、適切な回答が得られなかった。
先に調べてから来れば良かったと後悔したが、間に合わない。
駅を出ると、案内看板があり、
下野延喜式内社一ノ宮。室の八嶋 大神神社ここから1kmとある。
大神神社(おおみわじんじゃと読む。)は下野(しもつけ)一ノ宮で
その神社横に「室の八嶋」はある。
一の宮と言うのは、各県に指定されており、
ボクが知っている限りでは、千葉県の上総一ノ宮の玉前神社、
武蔵一ノ宮の氷川神社、尾張一宮の真清田神社(ますみだじんじゃ)で、
これくらいしか知らない。
いずれも一の宮というだけに、どれも神社としては立派で、
ナンバーワンの荘厳な構えをしている。
(*)「野州について家に帰って調べた所、
野州とは、下野国(しもつけのくに)を指し、
かつて日本の地方行政区分だった国の一つで、東山道に属した。
下野州(しもつけしゅう)や単に野州(やしゅう)と通称されることもある。
またこの反対に群馬県の場合は、上野国(こうづけのくに)と言ったが、
上野州(こうづけしゅう)や上州(じょうしゅう)といった。」
東武宇都宮線の「野州大塚駅」を降りると、
目の前に踏切があり、道路は南に延びている。
道路向かい側には、立派な校舎を持つ小学校があり、
大神神社に行く近道は小学校の南側にある校庭をぐるりと一回りして、
道なりに進み歩道橋と農協脇に抜けるのが良いが、
初めての場合は道がわかりににくい。
迷わず行ける道は、小学校を左に見て、南に伸びる道を進む。
やがて、(野州大塚駅入り口)の信号に出る。
信号手前に大神神社は直進1.6kmという案内標柱があるがこれは無視して、
信号を左折しよう。
(地図よりも地元の案内標柱が正しいと考えて、
案内に沿って歩いたら1km歩いても神社らしき所は見えず、
元の道に戻ったボクをお笑いください。)
左折すると、右手に駐在所があり、
さらに進むと左手にJAしもつけ農協国府支店があり、
その先に歩道橋が見える。案内にあった近道は、
この歩道橋と農協の間にある道路に出る道のようである。
(この道は帰りに通ってみることにする。)
道路はやや左にカーブしているが、
右手に郵便局が見えると、その先に信号機が見える。
信号脇にでかでかと「大神神社」入り口の看板がみえる。
信号を左折すると、正面に鳥居が見える。
これが大神神社である。
道路脇に、白地で「初詣」と書いた赤いのぼり旗がはためいている。
正月にはきっと沢山の初詣客があったと思われるが、
今日は一月七日、人の姿は何処にもなく、
初春の陽射しがふりそそぐ白い道路に砂埃が立つだけで寂しい道のりである。
・初春の にぎわい残す 一の宮 (hide-bach)