くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

汐留で優しいカレーを食べる

2004-06-18 17:46:39 | 東京の美味い店

 まだまだ開発中の汐留エリアにある電通さんのビルは『カレッタ汐留』という巨大複合ビル。46階には/so/ra/si/o/ [ソラシオ]というスカイレストランがあるのだが、ここで一日限定30食という特性カレーがあるらしいのです。
 とある日曜日、うら若い女性二人にモデルを頼んで出掛けてみましたっ。

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 たっぷりとした盛りつけが嬉しいです。そして、上に乗っかった具がまた巨大であります。ほたて、仔牛のカツレツ、夏野菜のラタトゥイユなどなど(時期によって変動ある)。とくにほたてはずいぶんといいものを使っていらっしゃる。これだけ大きく分厚いものは、三陸の幸で育った僕でも、なかなか見ることがなかったほどですよ。表面を香ばしく焼き上げていて、中身はしっとりとレア。新鮮そのものであります。
 それから仔牛のカツレツ、これも仔牛さんがいいものらしく、噛むほどに旨みがじわ~っと口中に広がる。そこにさっぱりとしたラタトゥイユ。
 そして肝心のカレーだが、これがなんとも懐かしい正統派カレー。辛すぎないし、何かの香辛料が目立つこともない。副支配人の矢島さんと話しをすると、このカレーを開発するにあたっていろいろな味を検討したそうである。ここソラシオはもともとフレンチキュイジーヌ。凝るといくらでも凝れるわけだ。しかし「一番好きなカレーは?」との問いに「母親が作ったカレー」という答えが圧倒的に多かった、という統計を知って、矢島さんと料理長は正統派カレーに仕上げることに決定したのだという。
 湾岸の風景を眺め、優しく懐かしい味のカレーを食する。このバランス感覚が面白い。

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 今は世界のビールフェアーをやっているということで、全部の種類を並べていただいた。今話題のオーガニックからベルギー伝統の修道院で少しずつ作られるものまで全12種類(一種類だけ生ビールがあったのでそれは写っていない)。

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 これはその中の一本TIMMERMANSカシス。あとからカシスを添加したのではなくて、ビール酵母とともにカシスも熟成させて発泡させたもの。カシスが濃厚だけれどシャンパンのように軽い飲み口。飲んべえ男の僕でも美味いなあと思った。モデルさんに飲んでもらおうと思っていたのに、殆ど飲んでしまった。わはは。

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 これは新型のギネス専用マシン。炭酸を入れたりすることなく、何と電気仕掛けで泡立つというもの。金属プレートの上にグラスを置くだけで、底からゆっくりとギネス特有のきめ細かい泡がたち昇ってくるのである。飲んでみると確かにこれまでのものよりももっともっとクリーミーでした。ちなみにこの背景の真っ白い窓の外が全部東京湾。ここは昼も夜も快適で素晴らしいお店ですよ♪
 あっそうだこれは日本沈没地図にトラックバック!


連載小説『バイブレーション』その2

2004-06-18 01:24:47 | 連載小説 バイブレーション
 翌日も快晴だった。早朝に目を覚まし、まずはシャワーを浴びて、寝ているときの汗を洗い流した。ヨーグルトとシリアルを食べ、煙草を二本続けて吸った。洗濯機を回し、東に向いたベランダに出て、洗濯物を干した。陽が当たるのは午前中だけだ。しかし高い気温のために強い風が出ていて、洗濯物は昼までには乾きそうだった。
 クラッシック・ギターと譜面を持って養護学校へ着いたのは、予定していた午後二時を少し回ったところだった。車を降りて荷物を持ち、正面玄関から入っていった。中は学校特有の匂いがしていた。すぐ左手に事務所があったので、ドアをノックしてから入った。数人の男女がいて、机に向かって書き物をしていたり、電話をしていたりした。
 一人の若い女性が気付き、机を離れて僕のところへやってきた。電話で話した人だった。
「暑い中、わざわざごめんなさい。担当の者が一度曲を聴いてみたいと言っているものですから。どうぞこちらへ」
 彼女のあとについて廊下を歩いた。校舎の中は、暗くて涼しかった。背中に貼りついていたTシャツの汗が冷たくなった。
 生徒たちの姿は見えなかった。別の階で授業をしているのだろうか?
 廊下の突き当たりに広い部屋があって、彼女がドアを開けてくれた。中にはパイプ椅子が二つ出してあり、向かい合わせに置いてあった。その一つには、僕と同世代に見える男が座っていた。黙想しているような姿勢だった。彼女がその男の肩に軽く手を置いた。
 彼の顔が僕のほうを見上げたが、その瞼は閉じられていた。頬と顎に二日ばかり剃っていないような無精髭が生えていて、肌が白かった。ナイロンのYシャツと黒いチノパンツを身につけていた。
「この人が、校歌を依頼した町田先生です。耳は聞こえませんが、喋ることは出来ます。彼が言ったことについてイエスなら、軽く肩を叩いてください。もしノーなら、二回叩けば通じます」彼女はそう言って、部屋を去った。

 つづく
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