くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

とってもいい話し

2010-04-06 20:25:02 | 連載もの ちょいと、いい話

20100319daiba176

 僕の仕事相手で、今では友人になった人がいる。
 この人の電話の応対が、すごくいいのだ。
 携帯電話を掛けると、
「どうも、クロさん」
 と出てくれるのだ(携帯だから発信相手が分かる)。
 僕なんかだと、
「はい、クロカワです」
 と、必要最低限の応対だけ。でも、この人は違う。まず相手の名前を言う。言われたほうは、これが実に気持ちが良い。
 この友人がいかにコミュニケーションを大事にしているかが分かるというもの。
 僕もマネしようと思っている。







ちょいと、いい話 その3

2004-06-13 10:43:28 | 連載もの ちょいと、いい話
 おはようございまっす。日曜日の朝、東京は曇っております。
 以前、ある会社でCPR(心肺蘇生法)の講習を受けたことがありました。これは心臓もしくは呼吸が一時的に停止してしまった人に行う緊急措置のことですね。キチンとした講習を受ければ、誰でも出来るものです。
 その講習が終わる間際、講師が言ったことは大変ユニークなものでした。
1,「これ(CPR)を憶えたとたん、自分の周りで人が倒れるからね」
2,「そのときは講習通りに落ち着いて措置して下さい。そして、周囲の人々にイライラしないこと」
 はて?  
 そうしてそれからの日常生活ではなぜか、自分の周りで人が倒れはじめるのですね。通勤電車で隣の人が倒れる、買い物に行くと他のお客さんがくずおれる、あげく旅先の温泉の脱衣所で若い男が倒れる・・・。講師の言った1は予告通りです。
 しかし2のほう。こっちはどういうことかというと、人混みの中で誰かが倒れても、まず殆どの場合は誰も助けようとしないのです。隣で人がバタッとなってもシカトなのですね。みんな目をそらしてしまう。
 それに対して自分はCPRをマスターしているということで、「何だよお前ら、何も出来ないのかよ」といった驕りに似た気持ちを抱きがちになります。講師が言いたかったのは“自分を正義の味方のように勘違いして、周囲の人をバカにするなよ”ということだったのです。
 しかしこの記事は『ちょっといいコト』です。ご安心を。
 電車の中で50代の男性がバッターンとやったとき、僕は周囲を眺めました。みんなちらっと見てから、慌てて視線をそらしています。どうやら医療の心得のある人もいないようです。「しょうがないな」と思って倒れた男性の脇に膝をついて様子を見ました。まずは呼吸をしているかどうか。OKです。これで安心。それから頭を打っていないかを調べて、耳元で話しかけます。「お名前は?」とか「もしもし?」とかやって意識を呼び覚ますようにするわけです。そうしながら脈を計ってみます。これだけです。
 この段階になると、周囲の人の様子はもう違っています。みんなで見ています。そこで応援を頼むわけです。「次の駅でこの人を降ろしたいので、どなたか手伝って下さいますか」
 この一言で何人もの人が一斉に動き、そばにしゃがんでくれます。さっきまでシカトしていた人たちです。つまりみんなは「助けたい、でもどうしていいか・・・」でアクションが止まってしまうんですね。「忙しいのにふざけんなよ」では決してない。人間は捨てたもんじゃないですね~。あとはみんなで慎重に抱えて駅員に引き渡せばいいだけです。
 人が倒れたときは、たいていこの電車の中の例で済みます。呼吸が止まっている、心臓が止まっている、これは僕も一度も経験がありません。つまりCPRを施したことは一度もないのです。知識がなくても、これくらいのことは誰でも出来ると思います。話しかける、というのが大事ですよ♪ ケータイで連絡するのは誰かに任せて、まずは倒れた人のそばにしゃがんで下さい。
 それから補足ですが、米国では小学校教育からCPRが教えられるようです。都市部の統計として三人に一人はCPRの知識がある。だから誰かが倒れれば、必ず何人かが助けようとするそうです。こちらのサイトにCPRについての分かり易い説明がありますよう。

 その2へ
 その1へ
 

 
 


ちょいと、いい話 その2

2004-06-11 17:19:46 | 連載もの ちょいと、いい話
 信州は八ヶ岳の小海リエックスに、男三人でパラグライダーの合宿に行ったことがありました。テントと車泊で自炊、三泊四日の青年強化合宿であります。

 キャンプ場で男くさ~くストイックに過ごし、無事全員が飛べるようになりました。そこで最終日に打ち上げということで、清里に飲みに行くことにしました。もちろん車で。わはは。しかしカラフルなペンションはあれど、飲み屋というのは少ないようです。僕ら三人はぐるぐる廻って、ようやくスナックと居酒屋がミックスされたような店に入りました。キチンと駐車場付き。わはは。もちろんドライバーは飲んだりなんかしませ○×☆。
 カウンターにはキザな風貌の男が一人。女性の店員をからかいながら、座ったまま何かを歌っていました。目が合ったときに僕らが軽く会釈してもシカトです。「ナマイキな奴だ・・・」と思いました。若い頃の男というのは、すぐにそういう意味不明の苛立ちを憶えるものです。しかし彼が一曲終わったところで、僕らは盛大な拍手とヒューヒューをしてやりました。会社員の悲しいサガです。毎晩先輩に鍛えられていたのです。
 彼は目を大きくして僕らを見て、それからマイクを使って礼を言いました。「え~、思わぬところからの暖かいご声援・・・」妙に礼儀正しいのは純正不良の出身の証。そこで彼に対する好感度が少しUPし、苛立ちは治まりました。
 それから僕らも何曲かやったところで、一人の客が入ってきました。薄汚れた作業服を着た40代の男です。カウンターに座って酒を注文してから、ぶつぶつと独り言を始めました。何か不満を言っているようです。
 僕ら三人と元不良と店員は、当然彼を無視して遊んでいます。男は早いピッチで酒を呷り続け、独り言は独り言ではなくなってきて、店員にからみ始めました。「ちょっとやめてよ」「なんだと女給のくせに」時代背景いつだよおい。
 そうして騒ぎが大きくなってきてから、何故か男は“はっし”と僕を睨みつけ、「ブッ殺す」「てめえこの」などと始まったわけです。こういうのをハードなスポーツ合宿をやっている若い男にやってはいけない。「なんだおい」とこっちもなるわけです。さあどうするどうなる、やるなら一対一だぜ。こっちも酔っぱらっているんだよ~ん。
「どうしたんだい、今日は?」突然、元不良が男に声を掛けました。驚くほど優しい声でした。男は“バキッ!”と音がしそうな勢いで彼を振り返り、暫く睨みました。ガンづけってやつですね。どうもこの文章、荒っぽいな。しかし元不良は気楽な表情で男を見ています。すると、ふいに男の表情が緩みました。まるで一気に歳をとったようでした。「職長がよお、いっつもいっつも俺のことを・・・」泣いているようです。
 元不良は黙って聞いていて、それから彼の肩を一度叩きました。彼は立ち上がって勘定をしてもらい、最後に僕らに向かって「すまねえ」と土地の言葉で言って去りました。

 そのあと元不良(話したら実際そうであった)は僕らを地元の人オンリーの大変怪しいスナックに連れて行ってくれました。どこをどう走ったのか、全く記憶はなし。暗い暗い森の中にあった店です。
「さっきはうまく収めたな」僕。
「あの人、話しを聞いて欲しかったんだろう」彼。
 彼は立派な男でした。
 
 つづく
 その1へ


ちょいと、いい話

2004-06-10 17:11:38 | 連載もの ちょいと、いい話
 このタイトルでいくつか書いてみようと思います。
 時間に追われているとき、トラブルを抱えているとき、あるいはとくに何もないときでも、生きていくというのはときに「大変だあ」と思うことがありますね。ことに真っ直ぐ生きている人や優しい人ほど、そのココロは傷つきやすいものです。
 そうしてそこから「イヤなこと」「ムカついたこと」という話題で盛り上がったりすることもあります。気の置けない仲間同士では、上司の悪口なんていうのがうんと楽しいし、密かにお互いをたたえ合う力にもなります。
 まあそれはあくまでも仲間内ということで、ここでは逆に「あっ、いいな・・・」と感じた風景を書いてみようと思います。そんな瞬間があるから生きていける、人間は捨てたもんじゃないな、と思った風景です。

 熱暑の中、僕は営業用の大きなバッグを提げて、ひたすら目黒の住宅街を歩いていました。その週のうちに新しい投資信託商品を3本売らなければなりません。
 その夏の東京は、本当に暑かった。営業所のあった渋谷では日中40度にまで上がった日が続きました。暑さは人をイライラさせるものです。支店長は「気合いが足りんぞお前ら!」と叫び、お客さんは「いつになったらこの銘柄は上がるんだよ、エッ!」と電話で叫び、僕ら営業マンはしかたなく連日の飲み会でマイクに叫びました。
 目黒の住宅街も、人々は暑さでふらふらになって歩いています。と、僕をパスしてきびきびと歩いていくご老人が。大変に厳しいお顔付き。手足を大きくスライドしながら僕の前を歩いていきます。どうも彼も何事かに対して怒っているようです。すると今度は後ろからワンボックスのワゴンが、猛烈なスピードで走ってきて脇をすり抜けました。「狭い道なのにあっぶねえなあ」正直そう思いました。ウィンドウは全部真っ黒くろすけです。正面突き当たりのご老人が歩いているあたりで急に左折。ああっと巻き込むぞ・・・!
 ご老人はヨロけて壁に手をつき、それからもんのすごい怖い目つきで車を睨みました。幸い事故にはならなかったのですね。すると助手席の窓が開いて、黒人が顔を出してご老人を睨みました。こちらも真っ黒い顔にギョロっとした目。ああこれは喧嘩だ喧嘩だ、見たくねえ~・・・。
 そこで思わぬことになりました。その黒人はご老人に向かって“ニカッ”と笑ったのです。そうして片手をさっと上げてすまんすまんというそぶりをし、その手がどこかに当たって今度は「おう、シーッ!」と苦笑いです。ご老人はというと、つられて頬がゆるみ、それから「おう」とかなんとか声を出して格好をつけたあとで、とうとう笑い出しました。
 その様子を眺めていた周囲の人々二、三人と僕も、互いに顔を見合わせて、どういうわけか笑っていました。「ほんとにね~」近隣の奥さん風の女性がそんな言葉を発しました。「暑いですよね~」
 もうずいぶん昔、平成3年の夏のことです。

 つづく