くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

名古屋の矢場とん、目黒のとんき

2012-10-12 08:52:10 | エッセイ

 早くも秋である。
 ついこないだまで、外を歩くのも辛い暑さだったのに、今は外出をするにも
「長袖を着ていこうか、どうしようか」
 迷うようになった。
 そして、秋は食欲の季節でもあります。
 ことに、白いご飯がウマい。
 おかずが何であれ、ひと口食べて口中に味を充分に染み込ませ、そこに白いご飯を投入する瞬間ほど、幸せなことはない。
 白いご飯といえば、トンカツ屋のご飯はどこも美味しい。
 東京のトンカツであれ、名古屋の味噌カツであれ、ご飯でハズレることは滅多にない。
 どこもみな、少々固めに炊いてあるようだ。
 しかし、美味しいご飯が固めということではないと思う。
 僕が思う美味しいご飯は、内部までふっくらと炊きあがり、かつ表面にはハリがあって、歯触りも愉しめるものだ。
 こういうご飯は、家ではなかなか炊けない。
 やはり、一度に一升も炊くようなところで食べるのが正解であります。




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今では間違った概念だそうです

 先日、名古屋に行ったときに、名鉄ビル内の味噌カツ屋に入った。
[矢場とん]というチェーン店であります。
 この店が、とてもよかった。
 ご飯はふっくらと、かつ固めに炊きあがり、文句なし。
 肝心の味噌カツも、甘さほどよく、ご飯の相手をさせるにはちょうどいい塩梅。
 そして何よりも、店員たちがよかった。
 昔は乙女だったであろう年齢の、女店員たちが、くるくるとよく働いている。
 味噌カツを頼むと
「練り辛子とすりゴマがよく合いますよ」
 アドバイスしてくれる。
 各テーブルには調味料セットが備わっているのだが、初めて入った店だと、どれを使えばいいのか分からないことが多い。
 そこを、ずばりと「これを使うのがベスト」と教えてくれる。
 何事も「選択と集中」が叫ばれる現代、実に頼りになる昔の乙女なのであります。

 東京のトンカツ屋といえば、目黒権現坂通りの[とんき]が一番好きだ。
 暖簾をくぐった瞬間から、もう魅力が溢れている。
 天井からは電球がいくつも下がり、その下には長大な無垢板のカウンター。これがいつも完璧に磨き上げられている。
 カウンターの内側には、昔から変わらぬ男たちが一心に立ち働いている。
 カツを揚げて、油を切り、熱々のところを包丁で切っていくその手はグローブのように分厚い。
 時折、黒電話がジリリンと鳴る。
 キャベツがなくなりそうになると、すぐに若い店員がキャベツを山盛りにしたザルを持ってきてくれる。
 女店員が酒のお代わりを心配してくれる。
 それでいて、どの店員も笑顔が絶えないのであります。
「仕事が楽しくてしょうがない」
 という表情なのだ。こんな店はいったい、日本にどれだけ残っているのか。
 無論、ここの白いご飯もウマい。
 カツは、中までしっかりと火が通っていて、これは好みが分かれるようだ。僕自身も、本当は中はレアなものが好みだ。
 それでもこの店に惹かれてやまないのは、結局、人に惹かれているのだと思う。


 






お酒のいいとこ

2011-12-11 20:01:05 | エッセイ
 いよいよ年の瀬であります。
 読者諸賢も、忘年会スケジュールが立てこんできた時期だと思うんであります。
 酒を呑むことで、いろんな事情、事柄が発生してくるけど、本日はお酒のいい面を申し上げたい。
 即ち「お酒を飲んで良かったナー」であります。

①酔った勢いで台所ピカピカ
 家呑みの話しですが、酔って気分が高揚した勢いで、普段は面倒な洗いものがサッサと済んでしまう。
 ついでに、クレンザーでシンクを磨き上げたりする。
 これはすごいことだ!

②酔った勢いで身体もピカピカ
 酔って気分が高揚した勢いで、風呂に入って身体の隅々まで洗ってしまう。
 翌朝「ん、なんかオレ、すごくキレイだ」
 こうなること請け合います。

③酔った勢いで電話しまくり
 酔って気分が高揚した勢いで、何らかの事情があって遠ざけていた友人・知人にも電話が出来る。
「ご無沙汰でした。元気だったかい」 
 酒の勢いはコミュニケーションも促進するノダ。
 まっ、それによる弊害が起こることもあるけど。
 それは月日が解決します。ダイジョブ。


物書きの真実~2冊目の著作本

2011-09-06 09:51:29 | エッセイ

 立花隆という作家がいますね。
 知の巨人と言われ、政治、医学、宇宙科学、経済、外交などなど、ものすごく幅広い分野で執筆しているのだ。
 当然、著作本の数も多く、さぞかし
(印税で儲かってるのだろうな)
 こう思っていたけど、そうではないらしい。
 彼自身の語ったことだが、1冊の本を書くために必要な経費が大きく、さらに労働時間(下調べと執筆)に対する報酬(印税)が低いのだという。

 本のテーマが決まると、彼はまず神田の古書店街へ行き、必要と思われる書籍を買ってくる。
 これだけで数万円~10数万円は掛かるそうだ。
 試しに『宇宙からの帰還』という本の、巻末の参考文献を見てみよう。
 まず“英文雑誌類”とあって、Aviation Week、Bulletin of The Atomic Scientists、Christianity...と15冊。そのあと“宇宙飛行士が書いたもの”とか“NASA提供の資料”、“英文単行本”、“和本単行本”などと続く。
 数えてみると、参考文献が全部で72冊もあるのだ!
 僕などは、これを読むだけで丸3年は掛かるんじゃないかと思う。
 いや待てよ、英語が出来ないから、その前に語学教室へ通わないといけない。
 ともかく、1冊の本を書くのに、これだけの手間を掛けているのだ。それを別ジャンルの本でも行っているだろうから、常にいくつかの仕事を並行しているのだと思う。
「毎日原稿を書き続けてないと暮らしていけません」
 知の巨人が、こうおっしゃっている。

 かくいう僕の話はというと...。
 ようやく2冊目の著作本が出ることになった。
 辰巳出版から『缶詰博士・黒川勇人の缶詰本』というタイトルで、14日あたりに発売されるはずだ。
 立花隆の話題と一緒に書いちゃって恐悦至極だが、僕もそれなりに労働した結果である。
 嬉しいこともひとつあった。
 ネットショップのアマゾンで、黒川勇人と検索すると、ちゃんと自分の頁が出てくるようになった。
 これを見つけたときは、ひとりニンマリとしてしまった。
 こうなると
「もっと頑張って本を出すか!」
 俄然、やる気も出てくる。
 というか、どんどん出さないと暮らしていけない。
 これだけは立花隆と一緒であります。

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缶詰博士・黒川勇人の缶詰本(仮) (タツミムック)
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2011-09-14



かまぼこ賛歌、再び

2011-08-11 12:05:40 | エッセイ

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かまぼこ作り体験で初めてかまぼこを作ってみた

 僕は板付きのかまぼこに目がない。
 笹かまでも、ちくわでもなく、板付きのかまぼこが好き。
 このブログでも過去に2度、[かまぼこ賛歌][かまぼこの色気]というエッセイを書いているくらい、板かまラヴなのだ。
 ラヴは人を動かす。
 僕も動かされ、とうとう板かまを自作することにした。
 といっても、自宅でやるわけではない。小田原にあるかまぼこ大手『鈴廣』で、かまぼこ作りを体験させてもらえるのだ。




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夏休み真っ只中で子供がたくさんいた




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おじさんも間に混ざってかまぼこ作り
左は同行取材したM氏であります




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やった、出来たぞオリジナル板かま!




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勢いに乗りちくわも作ってしまう
これはその場で焼いてもらい、食べた




 ということで、冒頭の画像が記念すべき手作り板かまの第1号。
 断面が直角三角形になっているが、わざとやったのではない。すり身を板に乗せるのが難しく、こうなってしまった。
 このままでは悔しい。
 あのたおやかな丸みを作りたい。
 なので、また体験に行って第2号、第3号を製作してくるつもりであります。




レバー疑惑

2011-05-27 10:46:14 | エッセイ
 美味しいレバ刺しを食べると
「しゃーわせ!」
 つくづく、こう思う。
 香ばしいゴマ油が全体をコーティングしつつ、舌に直接当たる塩が全体を引き締めてる。
 白髪ネギが乗っていると、さらにいい。
 だから、焼肉店に行くと、習慣的にレバ刺しを頼んでしまう。
「レバ刺しもらおうか」
「いいねえ!」
 周囲の反応も上々だ。

 しかしある日のこと。
 ふとレバーについて考えてみた。
 内臓系で好きな部位は他にたくさんある。
 その中で考えると、レバーというのは優先度が高くない。
 特にレバニラみたいに加熱したメニューになると、
「身体にいいからね。一応、頼もうか...」
 なんて注文の仕方をする。
 それほど食べたいわけでもないのに、「身体にいいから」と、わざわざ言い訳をしてから頼んでる。
 これは怪しい。
 
 そんなことを思ったあとで、焼き肉店でレバ刺しを食べてみると、美味しさが半減した。
 美味しいことは美味しいけど、2枚も食べれば充分で、あとは飽きてくる。
 しかし友人から
「ここのはとびきり新鮮でウマいんだよね」
 などと言われると
「本当だ。こりゃウマい」
 などと追随してしまう。情けない。
 きっと、生で食べられるという“ありがたさ”で食べていたのだと思う。
 最近、世間を賑わせていたユッケにしても、生肉を食べられるという魅力は大きい。
 ステーキ・タルタルとか、鳥刺し、鳥わさなんかもそうだ。
 きっと、ギャートルズ的な原始的野生が、身体の中に存在してるんだろうな。