くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

ちょいと、いい話 その3

2004-06-13 10:43:28 | 連載もの ちょいと、いい話
 おはようございまっす。日曜日の朝、東京は曇っております。
 以前、ある会社でCPR(心肺蘇生法)の講習を受けたことがありました。これは心臓もしくは呼吸が一時的に停止してしまった人に行う緊急措置のことですね。キチンとした講習を受ければ、誰でも出来るものです。
 その講習が終わる間際、講師が言ったことは大変ユニークなものでした。
1,「これ(CPR)を憶えたとたん、自分の周りで人が倒れるからね」
2,「そのときは講習通りに落ち着いて措置して下さい。そして、周囲の人々にイライラしないこと」
 はて?  
 そうしてそれからの日常生活ではなぜか、自分の周りで人が倒れはじめるのですね。通勤電車で隣の人が倒れる、買い物に行くと他のお客さんがくずおれる、あげく旅先の温泉の脱衣所で若い男が倒れる・・・。講師の言った1は予告通りです。
 しかし2のほう。こっちはどういうことかというと、人混みの中で誰かが倒れても、まず殆どの場合は誰も助けようとしないのです。隣で人がバタッとなってもシカトなのですね。みんな目をそらしてしまう。
 それに対して自分はCPRをマスターしているということで、「何だよお前ら、何も出来ないのかよ」といった驕りに似た気持ちを抱きがちになります。講師が言いたかったのは“自分を正義の味方のように勘違いして、周囲の人をバカにするなよ”ということだったのです。
 しかしこの記事は『ちょっといいコト』です。ご安心を。
 電車の中で50代の男性がバッターンとやったとき、僕は周囲を眺めました。みんなちらっと見てから、慌てて視線をそらしています。どうやら医療の心得のある人もいないようです。「しょうがないな」と思って倒れた男性の脇に膝をついて様子を見ました。まずは呼吸をしているかどうか。OKです。これで安心。それから頭を打っていないかを調べて、耳元で話しかけます。「お名前は?」とか「もしもし?」とかやって意識を呼び覚ますようにするわけです。そうしながら脈を計ってみます。これだけです。
 この段階になると、周囲の人の様子はもう違っています。みんなで見ています。そこで応援を頼むわけです。「次の駅でこの人を降ろしたいので、どなたか手伝って下さいますか」
 この一言で何人もの人が一斉に動き、そばにしゃがんでくれます。さっきまでシカトしていた人たちです。つまりみんなは「助けたい、でもどうしていいか・・・」でアクションが止まってしまうんですね。「忙しいのにふざけんなよ」では決してない。人間は捨てたもんじゃないですね~。あとはみんなで慎重に抱えて駅員に引き渡せばいいだけです。
 人が倒れたときは、たいていこの電車の中の例で済みます。呼吸が止まっている、心臓が止まっている、これは僕も一度も経験がありません。つまりCPRを施したことは一度もないのです。知識がなくても、これくらいのことは誰でも出来ると思います。話しかける、というのが大事ですよ♪ ケータイで連絡するのは誰かに任せて、まずは倒れた人のそばにしゃがんで下さい。
 それから補足ですが、米国では小学校教育からCPRが教えられるようです。都市部の統計として三人に一人はCPRの知識がある。だから誰かが倒れれば、必ず何人かが助けようとするそうです。こちらのサイトにCPRについての分かり易い説明がありますよう。

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