くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

鳴くよウグイス、京都の旅 その6(最終話)

2010-04-15 11:42:07 | 連載もの 鳴くよウグイス、京都の旅

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 清水寺へと向かう茶碗坂。
 ここも若者の観光客が、意外にも多かった。
「今時の若者は旅をしない」とか、「ネットでの仮想体験で済ませている」などとメディアでは言われているけど、それがすべてではないのであります。
 報道を鵜呑みにしてはいけないという見本であります。




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 両側にぎっしりと店が並ぶ坂を登り切る。すると突然、目の前が開けた。
 山の上に別世界が広がっているのだ。
 山門の鮮やかな朱色。高度感。先を急ぐ群衆。ここは明らかに非日常の世界だ。




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観光地ではあるけど、本来は修行の場
開設は奈良時代の末、778年だ




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眼下に京都の街が広がっている




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本堂の舞台には傾斜があり、ちょいとコワい




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 寺院の中というのは、静かで薄暗い。
 これは世界中どこへ行っても、ほとんどそうだ。
 中には
「ウチはめっちゃ明るくやってます!」
 なぞと宣言し、皓々と照明をつけ賑やかにしている宗派もあるかもしれないが、それは取りあえず無視しておく。
 そうしないと話しが進まない。
 こういう暗くて静かなところに入ると、人の心は沈静する。
 目先の予定ばかり考えている日常から離れ、時間のとらまえ方が大きくなる。
 10年、20年という単位で物事を考えるようになる。




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天空に浮かぶ異空間
宗派は北法相宗であります

 僕は今年に入ってから、ある仏教系の大学の仕事を手伝うようになった。
 学報のライティングである。それにともない、その学校の歴史を読んだり、宗派について学んだりしている。
 まったく畑違いの分野かと思いきや、そうではない。僕は大学で印度哲学を学んだので、そのときの経験が活かされてるのだ。
「よくもまあ、卒業させてくれたもんだ」と思うような成績だったが、そんな僕でもちゃんとお役に立てるのだ。
 しかし、卒業してしばらくは
「どうしてあんな学問を専攻したんだろ?」
 と、自分でも不思議に思うことが多かった。
 周囲の先輩や取引先にも
「変わってるねー。就職には何の得にもなんなかったでしょ」
 なぞと言われたものだ。
 しかし、ですな。
 どんな経験でも、自分の血となり肉となっているんですなァ。最近、つくづくそう思うんであります。




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陽の暮れ始めた頃、山を下りる
京都はどの道を歩いても風情がある




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すり減った石段。この先に何があるかな?




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「清水寺って、東海道のすぐ脇にあったんですね」
「やっ、本当だ。昔から賑わっていたんだろうなァ」
 そんな会話をしつつ、バスで京都駅へ。この旅も終焉である。
 駅構内で夕食を摂っているあいだに、陽は暮れた。
 帰りのチケットを確認し、土産を買っているあいだに、非日常から日常へとゆるやかに意識が移行していく。
 そんな寂しさがあっても、やっぱり旅の魅力にはあらがえないんであります。日本の中だけでも、まだまだ知らないところがたくさんある。
 こうして各地に思い出と知人・友人を作っていくこと。これは間違いなく、生きていく上で力になりますなァ。




 おわり
 その1へ

 この記事は『にしかはのつれづれなるままに』の“首振り地蔵”にトラックバック!!




鳴くよウグイス、京都の旅 その5

2010-03-31 13:33:16 | 連載もの 鳴くよウグイス、京都の旅

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京都市街地は建築好きにもいいところ
この西洋風の装飾が施された建築はどこか?




1480京都の旅、最終日。
ホテルをチェックアウトし、スーツケースなど大きな荷物を、あらためてホテルに預ける。
これから向かうのは錦市場であるが、まずは冒頭のクイズの答えであります。
この建築は四条通沿い、鴨川に架かる四条大橋たもとのレストラン『東華菜館』なのだ。怪魚や山羊が睨みつけるファサードが、すごい。
こんな建築もある京都って、本当に奥深いところなのだなァ。




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 さあ、いよいよ錦市場へ向かう。市場は先斗町あたりから西に伸びる、錦小路の中にある。
 実は今、さりげなく「先斗町あたりから」と書いたのだけど、書いてる本人はすごくいい気分である。
 なぜって、先斗町(ぽんとちょう)という響きがいいし、それをさりげなく口に出来る自分が、諸事に精通した大人の男みたいでカッコいい。
 こういうのは実際に行かないと、自信を持って言えないもんね。
 ま、そういうオジサンの自意識はいいとして。
 先斗町から錦小路を入っていくと、すぐさま異次元空間が広がった。




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しょっぱなから漬け物の洗礼
まだ先があるというのに、たまらん匂いだ




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刃物の名店、有次もあった
すごく情緒があるけど、ここもアーケード内であります




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「旦那さん食べていきな」と声が掛かった
揚げたてのハモの天ぷらがはふはふ美味い




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こんな愛らしい干菓子のお店も
あらゆる専門店があるのが、古都の楽しみだ




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小路の西端にある焼き牡蠣を食べさせる店
にしかはさん曰く「錦市場のオイスター・バー」
とにかく、すごい賑わいだ!




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 京都では、小腹が空いたときに軽く食べることを
「虫養い」
 と言うらしい。これは京都在住のにしかはさんに教わった言葉。
 腹の虫を養うなんて、ずいぶん表現が優しいではないか。
 我々も錦市場で虫養いをして(つまみ食い)、四条通りを東に向かった。
 鴨川を渡ると、通りの先には八坂神社のこんもりとした森が見えてくる。




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うっかり見逃しそうなところに、原了郭があった
オリジナルスパイスの黒七味を買い求める




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 そして、国宝『三十三間堂』へ到着。
 言わずと知れた1001体の『十一面千手千眼観世音』が、約120メートルの本堂に並ぶ。
「うわっ、ありえねー!」
「すげーすげー!」
「なんすかこれ、なんすかこれ」
 若者も大勢、拝観に来ていた。
 表現がとぼしいが、ま、神社仏閣を見に来ただけ、いいとするか。
Senjyu300 今の若者は、意外にも仏像に興味を持っている人が多いんだとか。
 世相を反映しているのなら、ちょいと寂しいことではある。
 寂しいことではあるが、ここの観世音様は壮観だ。歩いても歩いても観世音様がいる。中央にはひときわ大きな中尊様もいらっしゃる。
 そして、お堂の西側ではその昔、通し矢を行ったという。夕刻から翌日の夕刻まで、丸一昼夜で的に何本当てるかを競ったらしいけど、その距離がつまり120メートルなのであります!
 的にされた切り株のようなものが残っていて、それは矢が刺さったためにぐずぐずになっていた。
「昔の人ってすごいねー」
「本当だねー、すごいねー」
 我々も驚きのあまり表現が幼稚化してしまった。「すげーすげー」と言いつつ、バスに乗る。
 これから最後の目的地、清水寺へ向かうのでありまする。
※仏像画像は三十三間堂のパンフレットより



 あと1つ、つづくっ
 その1へ


 






鳴くよウグイス、京都の旅 その4

2010-03-13 12:04:02 | 連載もの 鳴くよウグイス、京都の旅

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 2日目の夜のこと。
 旅のコーディネーター、にしかはさんと分かれたあと、我々は烏丸御池駅から地下鉄に乗った。
 これから待望の夕食であります。



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北山駅で降りて、北山通りを東に向かうと



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下鴨北野々神町に、とあるピッツェリアがある
その名もピッツァ・フォールム



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ここは友人夫妻が昨年末に始めたところ
ダーリンはイタリア人であります



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職人に組んでもらった本物の石窯
薪を燃やして焼き上げるのは...



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ですなー!ふっくらモチモチのナポリピッツァ
好みでクリスピーなローマ風も選べるのだ



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ピザ職人をピッツァイオーロというらしい
何事にもこだわり抜くラファエロ氏なのであります



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内装も可愛らしく、実に暖かい雰囲気
地域のお得意さんが集まっていた

 ワインを1本、ピッツァを1枚ずつ、それにおつまみ(サルシッチャというイタリア風ソーセージ、生ハム、モッツァレラチーズなど)をいただいて、最後に自家製のリモンチェッロ(レモンのお酒・40度近くあってかなり強い)を飲んで手作りのビスケットまで平らげた。
 本当に美味しい料理でありました。オススメですぞ。



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翌朝は晴天 三条通りには歴史的建造物が多い

 最終日の朝。
 朝食をイノダコーヒー本店で摂ろうと「堺町通三条下ル」を目指す。
 京都の住所は番地よりも“通り”で言い表すことがほとんどらしい。
 境町通三条下ルというのは、縦(南北)の境町通りと、横(東南)の三条通りが交差したところから南下したところ、ということ。
 この方法だと、通り名さえ頭に入れば、番地を憶える必要がないのだ。



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その方法で探すことが出来たイノダコーヒー本店
日曜の朝でもあり、10時には行列だった



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 これがイノダ名物の「京の朝食」1,200円。
 ハム、スクランブルエッグ、アスパラガス、キャベツ、トマト、ニンジン、サニーレタスとオレンジのプレートにクロワッサンとオレンジジュース、コーヒー(最初から砂糖・ミルク入り)が付くというもの。
 これを広々とした2階席でいただいた。
 どっしりとした白いテーブルに、溌剌と働くウエイトレスたち。テーブルの間が充分に離れていて、東京の狭苦しい喫茶店とはまるで違う。
(ここで土産の缶詰を買った。その記事は缶詰blogでドーゾ
 ここでかなーり満腹になった我々は、腹ごなしのためゆっくりと歩いてホテルへ帰ったのであります。



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三条通り沿いの蕎麦屋『大鶴』
にしかはさんオススメのお店だ



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これは旅館だろうか 格子戸にうっとりであります



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 これはホテル近くのコンビニだが、実は京都観光にコンビニがすごく便利なんですぞ。
 というのも、市内をバスで移動するためのお得なチケットを売っているからなのだ。
 お金を払うと「おおきに~」と言ってくれる。
 さすが京都、am/pmでもちゃんと「おおきに~」なのだ。

 さあ、今日が旅行の最終日。
 錦市場を冷やかして、清水寺まで足を伸ばそうかな。



 つづく
 その1へ










鳴くよウグイス、京都の旅 その3

2010-03-06 13:16:24 | 連載もの 鳴くよウグイス、京都の旅

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シャープの液晶テレビのCMで使われた重森三玲邸の庭園

 銀閣寺の次に訪れたのは、京都大学にほど近いところにある重森三玲庭園美術館であります
 美術館といっても絵画や彫像があるわけではなく、邸宅に上がらせてもらい、書院や茶室、庭園を鑑賞するところなのだ。
 重森三玲という人は作庭家(庭園を設計・施工する人)で、有名なところでは京都・東福寺の市松模様の庭を手掛けた人。
 イサム・ノグチとも親交があったらしいです。



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書院に吊り下がるのはイサム・ノグチ作の照明



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茶室の襖がモダーンであります!



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 重森三玲(しげもりみれい)の三玲とは、フランスの画家ジャン=フランソワ・ミレーを敬愛していた本人が自ら改名したそうだ。そんな興味深い解説を、お孫さんである重森三明氏がしてくれる。
 苔の美しい庭園を眺め、室内の細かな装飾に潜む美を見つける。ユニークな美術館でありました。



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 次に向かったのが、左京区黒谷にある金戒光明寺。
 ここは幕末の時代、会津藩が京都守護職を命じられて宿舎として使用したところ。
 福島生まれの僕としては、どうしても見たかった。


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宗旨は浄土宗、本尊は阿弥陀如来
ここで会津藩主・松平容保が孤軍奮闘したのだ
あの新撰組も会津藩が命名し、管理下に置いた



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 その1でご紹介したアフローな仏像は、この寺の墓地にあったもの。
 どうしてここまでアフロ、じゃなかった髪が伸びたのかというと、長い間座禅を組んで思惟に集中したからなのだ。
 その長さは五刧(ごこう)。刧は未来永劫の刧だから、とてつもない時間ということになる。
 なので、このお方のお名前は五刧思惟阿弥陀如来。
 にしかはさんの記事にも詳しく書かれてますぞ。



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 最後ににしかはさんが案内してくれたのは、京都市役所そばにある御池中学校。
 ここで早咲きの桜を見せてくれたんであります。
 こうして、2日にわたってお付き合いいただいたにしかはさんとお別れ。
 このあとは友人が開店したというピッツェリアに行く予定なのだ!




 つづく
 その1へ
 この記事は『にしかはのつれずれなるままに』の“サクラ咲いてます”、“五刧思惟阿弥陀如来”にダブルトラックバーック!




鳴くよウグイス、京都の旅 その2

2010-03-01 19:08:06 | 連載もの 鳴くよウグイス、京都の旅

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京都と言ったら京都タワーであります
ウルトラセブンが出てきそうなレトロな雰囲気

 京都旅行初日のこと。
 昔からのブログ仲間である『にしかはのつれづれなるままに』作者のにしかはさんに、
「夕食をご一緒しましょう」
 と嬉しいお誘いを受けていたのだ。
 にしかはさんは京都在住というだけでなく、京都の歴史や地理をしっかりと勉強されていて、それを後世に伝えていこうと努力している方なんであります。
 そのにしかはさんが、事前に予約してくれたお店が『京料理 京四季』(リンクはぐるなび)
 にしかはさんがよく利用されるところとか。
 趣のある茶室に通されて、上座に腰を据えてしまい、「うははは。いーんでない」的な気分になってしまう。
 すぐに調子に乗るのが、僕の生来の習性。

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お造りの鮮魚を味わいつつ、伏見の酒をぐびり

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甘辛い味付けも塩梅が良く、さらに酒がすすむ
素晴らしい料理とお部屋で早くもメロメロ

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古都・京都には“過ぎない”魅力がある

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京都の缶詰バー、kansoの入り口
鴨川沿いにあって、佇まいがいい

 次ににしかはさんに連れて行ってもらった店は、ホテルからもほど近い缶詰バー『kanso』
 僕の本『おつまみ缶詰酒場』にも登場している、京都では有名な店なのだ。

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壁一面に並ぶ缶詰から、好みのものを選ぶ
若い人がたくさん集まっていた

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京都ということで、竹中缶詰のししゃもをチョイス
ウイスキーの水割りにも良く合うんだよね



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日本家屋の原点・銀閣寺は工事中であった
しかし、おかげで貴重なものが見られた

 そして翌日。
 この日はにしかはさんが夕方まで観光案内をしてくれた。
 もはや、にしかはさんは旅のコーディネーターなのであります。
 これは大仰なことではなく、本当。何しろ、観光案内が出来るほどの博識なのだ。
 旅先で、現地をよく知る人に案内してもらうこと。これほど心強く、また思い出に残ることはない。


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美学を学びに来る外国人も多いとか


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上から見るとジオラマみたいだ


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直線で構成される、凛とした空間


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庭は常に清浄に保たれているが、
落ちた椿の花だけは片付けないという


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工事中だからこそ見えた、部屋の内部
外壁と違い、きれいに塗られているのが分かる

 つづく
 その1へ