くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

自虐の幅

2010-09-05 11:00:23 | エッセイ
「書かれていることはほぼ、実体験です」

 こういう自伝的な本が、よくある。
 最近読んだのでは、西原理恵子の『女の子ものがたり』。絵本のような作りだけど、内容はかなり、切なかった。
 昔から好きだったのは、椎名誠の『哀愁の町に霧が降るのだ』とか、村上龍の『69』。奥田英朗の『東京物語』。
 これらはあくまでも“お話”だから、設定がすべて事実というわけじゃない。
 特に登場人物は、当人だと特定できないようにボカしたりする必要もある。
 自分が勤めていた会社の名前なんかも、そうだ。

 かくいう僕も『桜町荘セレナーデ』という自伝的小説を続けている。
「前出の先生たちと並べて紹介するのは、いかがなものか」
 こういう意見もあると思うが、ともかく、書き続けている。
 こういう小説で難しいのは、自分をどこまでさらけ出すか。
 『女の子ものがたり』では、友人の姿はかなり生々しく描かれている。
 親が人を殺したとか、母親が逃げたとか、生活の様子まで詳しく描かれているけど、主人公はそうでもない。
 主人公については、内面描写がメインであった。
「ちょっと、ズルいな」
 読み終わった直後は、そう思った。
 振り返って、自分の書き方はどうかと思案する。
 すると、やっぱり友人のことは詳しく書いてるけど、自分のことはある程度、都合のいいように書いてるなと、認識した。
 人というのは、他人のことはよく分かっても、自分のことは分からないのだ。

 だからといって、自分をさらけ出し過ぎると、自虐的になる。
 これはいけない。
 この塩梅が、よく分からない。
 そういう部分では、東海林さだおがすごく上手だ。
 この人は、
「うわ、そんなことまで書いちゃっていいの」
 というくらい、自分の恥体験を披露している。
 下宿で覗きをやっていたとか、そんなことまで書いちゃう。
 でも、自虐的ではないのだ。
 面白くてゲラゲラ笑って、最後にちょいと切なくなる。
 これはやっぱり、力量が違うなと思うんであります。