中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

明10日(土)から18日(日)まで休載します

2024年08月09日 | 情報
明10日(土)から18日(日)まで、恒例の夏休みに入ります。
再開は、19日(月)です。
よろしくお願いします。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(ストレスチェック・シリーズ④)(再掲)ストレスチェック制度の現状

2024年08月09日 | 情報
◎やりっぱなしの「ストレスチェック制度」 機能させる秘策とは
ストレスチェック 見直しなるか
毎日新聞 2023/6/20

多くの職場に義務づけられている「ストレスチェック制度」は、働く人や企業から「やりっぱなし」と指摘されている。ストレスが高いと判定されても、医師の面接指導にたどり着く人がわずかだからだ。スタートして7年が過ぎ、政府は機能させるべく制度の見直しを検討している。働く人はどうしたらよいのだろうか。

〇大半が面接に至らず

東京都内に住む40代の女性会社員が勤める企業では、ストレスチェックが毎年、実施されている。ただ、入社して20年近くになるこの女性は「ストレスが高い状態にあると判定されても、そもそも医師の面談を受ける心身の余裕はない」と漏らし、日常業務のストレス軽減につながっている実感を得たことがないという。

ストレスチェック制度は労働安全衛生法に基づき、50人以上の事業所で年に1回の実施が2015年12月から義務づけられている。実施は産業医や保健師が担い、労働者は「ひどく疲れた」「へとへとだ」といった心身や仕事の負担を確かめる項目に回答。結果を点数化して、ストレスの度合いを調べる。

心身のストレス反応が一定以上になると「高ストレス」と判定され、医師の面接指導を受けられる。企業側は面談の結果に基づき、業務の変更や労働時間の短縮、夜勤を減らすなどの措置を講じなければならない。

ところが、厚生労働省の21年度の調査では、9割超の職場に高ストレスと判定された人がいたのに、医師による面接指導を申し出た割合が「5%未満」の職場が76%と大半を占めた。

産業メンタルヘルスの第一人者で、厚労省の検討会委員として制度の創設に関わった医師の渡辺洋一郎氏(70)は「大まかに言うと、1000人がストレスチェックを受けると約100人が高ストレス者になるよう設計されているが、そのうち5人以下しか面接指導を受けない状態」と説明する。労働者自ら事業者に申し出るのがハードルとみられ、「申告によって不利益な扱いをすることは禁じられているが、メンタル不調を訴えると仕事の評価に響くと考える労働者は多いと思われる」と明かす。

企業はストレスチェックの結果を受け、職場の環境を改善することが努力義務とされているが、同じ厚労省の調査で実施は5割弱にとどまっており、対応は追いついていない。さらに従業員が50人未満の事業所でストレスチェックの実施は努力義務に過ぎない。

ストレスチェックの実施を請け負う民間企業「アドバンテッジリスクマネジメント」が今年3月、中小企業の経営者ら106人に調査すると、55%が「ストレスチェックが十分に機能していない」と回答。うち30%が「専門知識のあるスタッフがおらず対策が限られる」と答えた。同社の担当者は「ストレスチェックがやりっぱなしになっている可能性がある」と指摘する。

こうした状況に渡辺氏は「高ストレスと判定されたら、まずは医師の面接指導を受けてほしい」とし、「企業と労働者の双方に誤解がある」と言う。21年度の厚労省の調査では、労働者の50%が「ストレスチェックを実施したことで自身のストレスを意識するようになった」と回答。企業側も53%が「セルフケアへの関心度の高まり」、27%が「メンタルヘルスに理解ある風土の醸成」を実感していた。

〇「環境改善と一体で」

こうした調査を引き合いに、渡辺氏は「職場の環境改善に熱心な企業ほど、医師の面接指導を受ける労働者が多い印象がある」と述べ、企業が主体的に環境改善に乗り出す重要性を強調する。さらに「職場のメンタルヘルス対策は、直接的な売り上げや利益が見えづらいが、適切に取り組めば、社員が不調になるリスクを減らし、企業の生産性向上につながる」と指摘する。

そんな中、自民党の「働き方改革推進プロジェクトチーム」は5月18日、実施対象を現行の50人以上の事業所よりも拡大し、パート労働者ら非正規も含めるよう求める提言をまとめた。産業医確保に負担感のある中小企業には、地域や業種ごとに取り組む方策も示した。さらに、職場環境改善も含めた一体的な制度への見直しを求めた。提言を受け、政府は今後、50人未満の事業所への義務化などを中心に検討を進める見通しだ。(奥山はるな)

◎ストレスチェックの数値が高いと上司にばれる?
2022/10/27 読売

従業員50人以上の会社に義務付けられている「ストレスチェック」。高ストレスと出たら会社や上司に知られてしまうのではないかと疑問に思ったことはありませんか。心の健康診断でもあるストレスチェックの結果はどんなふうに扱われているのでしょうか。ストレスチェックのサービスを提供している会社で聞いてみました。

労働安全衛生法の改正で、ストレスチェックが義務付けられたのは2015年12月。従業員各自に、仕事やプライベート、現在の精神状態など多岐にわたる設問について回答してもらい、ストレス状態を数値で表し、従業員の健康管理に役立ててもらうというものです。

私の個人情報は誰に流れていく?

読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、自分の所属する派遣会社からストレスチェックの用紙が届いたという女性から素朴な疑問が寄せられました。

「私は仕事もプライベートでもストレスがたまっているので受けてみたいのですが、私の個人情報が誰に流れていくのか不安です。高ストレスとなった場合、派遣会社や派遣先に私の個人情報が開示されるのですか?」(トピ主「にゃお」さん)

高ストレスと出た場合、派遣先の上司は結果を見ることがあるのか、今後の仕事に影響はないのかと不安に思っている様子です。

まだまだ制度をよくご存じない方も多いのですね」と話すのは、企業の従業員健康管理サービスを受託している「ドクタートラスト」(東京・渋谷)の保健師、根本裕美子さん。根本さんは、同社の「ストレスチェック研究所」のコンサルタントとして、さまざまな企業の相談にのっています。

根本さんによると、ストレスチェックの実施に携わる人(産業医など専門職や担当者)が、受検した社員の同意なしに一人一人のストレスチェックの結果を企業に知らせることは法律で禁じられています。個人の結果は、まずは、本人にだけ通知します。セルフケアとして本人の自己管理に役立ててもらうためです。

法律と指針でプライバシーは保護

「からだの健康診断のデータは、法令で決まっている範囲で会社に通知されますが、ストレスチェックの結果は本人が同意しない限り、会社には通知されない仕組みです。同意した場合でも、厚生労働省の指針で『就業上の措置に必要な範囲を超えて、当該労働者の上司や同僚に検査結果を共有してはならない』と規定されています。それだけ、心の状態についての情報は、評価につながることが危惧されますし、機微に触れることでもあるのでしょう。もちろん不利益な取り扱いは禁止ですし、プライバシー保護も行わなければならないのです」と根本さん。

一方で、せっかく従業員に受検の機会を与えるのだから、職場の問題点の洗い出しや労務環境の改善に役立てたいという企業側の要望もあります。そこで、厚労省が推奨しているのが、「集団分析」です。

10人以上の集団を作れば、個人のストレスチェック結果を匿名で集計して分析を行うことで、企業側はストレス度が多い集団を把握できます。また、その集団のストレスの要因について分析することができます。企業の衛生委員会で話し合えば、10人の人数を5人などに引き下げることもできます。匿名での集計なので、部署ごとの高ストレス者の割合や、全社的な男女別、年代別の割合などを出すことができるそうです。

根本さんは、「全国平均や業種で集団分析結果を比較することはもちろんですが、ドクタートラストでは、高ストレス判定と結びつきが強い設問の回答傾向などを確認することもできます。例えば、判定と結びつきが強い設問には、『職場の同僚とどのくらい気軽に話せるか』や『失敗しても挽回するチャンスがあるか』などの項目があります」と話します。

同社では、ストレスチェックの受託サービスを開始した2015年度から集団分析を行っていて、16年度に334社だった集団分析の委託企業が21年度には940社に増えました。その中には、部署ごとの分析をした結果、高ストレスが多い部署で、従業員の勤務表を見直し、“隠れ残業”を一掃した企業もあります。

「最近では、年1回ではなく、年2回の受検を実施される企業も増えています。従業員のメンタルヘルスを積極的に守ろうとする表れかもしれません」と根本さん。

ストレスチェックが企業に義務づけられるようになって7年。初めて受検する人に戸惑いがあるのは当然ですが、個人のプライバシーを守りつつも労働環境の改善につながるような事例が増えるといいですね。(読売新聞メディア局 永原香代子)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(ストレスチェック・シリーズ③)ストレスチェック制度の見直し議論

2024年08月08日 | 情報
〇ストレスチェック制度は、2015年12月1日の改正安衛法の施行により創設されました。

〇ストレスチェック制度を法制化した時の、改正安衛法において
「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、改正後の労働安全衛生法の施行の状況について検討を加え、
必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされていました。

〇そして、24.3.29の第1回「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を皮切りに、
すでに5回にわたって検討会が開催されています。

おもな論点は、現在努力義務となっている50人未満の事業場へのストレスチェックの導入です。
制度導入以降も、精神障害の労災認定件数は右肩上がりとなっています。
2022年度には710件と過去最高を記録しています。
議事録によると、労働者側が、50人未満の事業場にも義務化を求めたのに対して、
使用者側は、依然として精神障害の労災認定件数が減少しないことから、「義務化が最適な手段とは云えない」と難色を示しています。

加えて、同じく努力義務となっている、「集団分析・職場環境改善」義務化も議論されました。

(参照)
〇ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第1回資料
1 目的 
事業場におけるメンタルヘルス対策については、
メンタルヘルス不調の未然防止である一次予防の強化等の観点で、
平成 27 年 12 月にストレスチェック制度が導入され、
当該制度の推進等を通じて、取組は進んできている。 
一方で、精神障害の労災支給決定件数は、700 件超(令和4年度)と過去最も多くなっている。
また、「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業場割合は、
この3年間、約1割で推移しており、
労働者数 50 人未満の小規模事業場においては、
メンタルヘルス対策に取り組む割合が30~49人の事業場で73.1%、10~29 人で 55.7%(50 人以上の事業場においては91.1%)であり、
未だ取組が低調である。 
こうした中、「経済財政運営と改革の基本方針 2023(骨太の方針 2023)」(令和5年6月 16 日閣議決定)では、
「メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を一層進め」ることとされたところである。 
また、労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成 26 年法律第 82 号)の附則第7条において
「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、改正後の労働安全衛生法の施行の状況について検討を加え、
必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされており、
平成 26 年改正労働安全衛生法の施行状況について議論された第 134 回労働政策審議会安全衛生分科会において、
今後、ストレスチェック制度について効果検証を行い検討していくべきであると指摘されている。 
これらのことを踏まえて、ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策について、
実施状況等を踏まえながら検証するとともに、検証の結果必要なものについて対応を検討することとする。 

2 検討内容 
(1)ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検証等について 
(2)事業場におけるメンタルヘルス対策について 
(3)その他関連する事項について

〇厚労省;ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会/資料>

(参考)
〇厚労省;ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて 令和4年3月


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(ストレスチェック・シリーズ②)中小規模の企業にとってのストレスチェック

2024年08月07日 | 情報
ポイント
自社のリソース(resource)、すなわち、ひと、もの、カネ、情報の範囲内で実施しましょう。
現在外部委託しているみなさん、幾らくらいの費用が流失しているか、ご存じですか?
実施した効果はありましたか? 費用対効果を検証したことはありますか?
法令上の「義務」という言葉に、有無を言わせず従ってしまっていませんか?

①従業員50人以上の事業場においては、年1回の実施義務が課されていますので、
事業場内の資源(やる気のある従業員等)を活用して、例として年1回の健康診断と併せて実施されるとよいでしょう。

②「集団分析・職場環境改善」は努力義務となっています。利用できる外部資料を探しましょう。
例えば、厚労省の外郭団体である労働者健康安全機構が刊行している、
「これからはじめる職場環境改善~スタートための手引~」が有用です。

③上記資料に分からないことがあったら、各都道府県にある労働者健康安全機構の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)に相談しましょう。
場合によっては、無料で専門スタッフも派遣してもらえます。

④以上の対応により、50人規模の企業・事業場では、年間100万円前後の費用を削減できます。
また、その余った費用はストレスチェックに従事した従業員に、特別報酬として支給することもできます。
これにより、事業場内の職場環境を活性化することができます。
経営層にとっては、健康経営の実現に向けて一歩を踏み出すことも可能です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ストレスチェックのメリットも

2024年08月06日 | 情報
ストレスチェックのメリットも(あえて、も)認識してください。

・企業・事業場にとっては、現状が認識できます
・受検者には、年一回の注意喚起(気づき)ができます
・労働組合にとっては、組合員に対して他人事ではないと、自覚させることができます

教員のストレス 過大な業務量の削減が急務だ
2024/07/25 読売

学校現場の業務量の多さが、教員の負担となっている。
重要度の低い業務を削減し、効率化を図る必要がある。
医師の面接指導を要する「高ストレス」の状態にある公立小中高校の教職員が、過去最多の11・7%に上った。
公立学校共済組合が労働安全衛生法に基づいて昨年度実施した「ストレスチェック」で判明した。
うつ病などの精神疾患で休職する教員は年々増加している
ストレスを強く感じている教職員の増加は、これら休職者の「予備軍」とも言える。深刻な状況だ。
ストレスの要因として、最も多くの教職員が挙げたのは、「事務的な業務量」だった。
教員には、授業や部活動だけでなく、行事の準備や地域との連携、会議や煩雑な書類の作成など多くの仕事がある。
国や教育委員会から求められる統計調査などへの回答も負担が大きい。
こうした業務を必要性や緊急度に応じて分類し、できるだけ廃止や削減を行ってスリム化すべきだ。
各教委や校長がリーダーシップを発揮して、思い切った改革を進めてほしい。
研修を行うたびに提出を求められる詳細な報告書についても、簡素化などを検討してはどうか。
熊本県では、教員が担っていた給食費の徴収管理を県で一元化した。
山梨県では、学校へ送付される大量の文書を県教委が仕分けして半減させた。
こうした事例を参考にしてもらいたい。
ストレスの要因に「保護者対応」を挙げる教職員が増えているのも見逃せない。
夜間に来校して学校への不満を延々とまくし立てたり、教員を自宅に呼びつけて暴言を吐いたりする保護者もいる。
度を超した要求やクレームには、組織として 毅然と対応することも必要だろう。
保護者対応を巡っては、法的な見地から学校に助言する「スクールロイヤー」や、
校長OBらを「学校問題解決支援コーディネーター」として配置する取り組みも広がっている。
教員の長時間労働が学生らに敬遠されてか、教員のなり手不足も問題となっている。
教員の質の確保という観点からも働き方を見直し、優秀な人材が教員を目指す環境を整えることが重要だ。
教員の本来の仕事は、子供たちの心身の健やかな成長を見守り、支えることである。
民間や地域の力も借りながら過大な業務量を減らし、子供たちと向き合う十分な時間を確保したい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする