中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

救世主は貧乏ゆすり

2024年08月22日 | 情報
万病のもとになる「座りっぱなし」「座りすぎ」 救世主は貧乏ゆすり
毎日 2024年8月2日

「座りすぎが健康に悪い」という。「たしかに長時間座っていると、
腰やお尻が痛くなるし、肩も凝る……」と受け止めがちだが、近年指摘されている「悪い影響」は、そうした直接的な害にとどまらない。
「座りすぎ」によって、疾患と死亡のリスクが高まるという。
世界保健機関(WHO)や主要各国でも「座りすぎ」予防のためのガイドライン(指針)を作成し、啓発に取り組み始めた。
座りすぎがどうして健康悪化につながるのか。その背景などを取材した。

厚労省の指針に初めて記載
 国内における座りすぎ対策の最新のトピックは、2024年1月に発表された「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」だ。
新たに「座位行動」という項目が設けられ、「座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する
(立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないように少しでも身体を動かす)」という推奨事項が記載された。

 厚生労働省は1989年以降、国民に向けて運動の必要量などを示した指針を作成している。
同年の「健康づくりのための運動所要量」に始まり、93年の「健康づくりのための運動指針」、
06年の「健康づくりのための運動指針2006」、13年の「健康づくりのための身体活動指針<アクティブガイド>」と改定があり、
今回の改定でできたのが「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」だった。

新たに設けられた「座位行動」とは聞き慣れない日本語だ。
これは英語の「sedentary behavior(セデンタリービヘイビア)」の訳にあたり、
「身体活動・運動ガイド2023」では、「座位や臥位(がい)の状態で行われる、
エネルギー消費が1.5メッツ以下の全ての覚醒中の行動
(例えば、デスクワークをすることや、座ったり寝ころんだりした状態でテレビやスマートフォンを見ること)」と定義している。
ここで登場した「メッツ(METs)」とは、「代謝当量(Metabolic equivalents)」の略で、活動の強さを示す単位。
人が安静にしている状態を1メッツとし、それぞれの活動の強さを表現する。
例えば「ゆっくり歩く」ような低強度の活動が2メッツ、「普通歩行」は3メッツ、「速足で歩く」といった活動が4メッツにあたる。

 岡浩一朗・早稲田大スポーツ科学学術院教授は「座位行動は座っている状態だけでなく、リクライニング(半臥位)や横になっている状態(臥…

(参照)「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

(1)健康づくりにおける身体活動・運動の意義  1ページ
「身体活動」とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する骨格筋の収縮を伴う全ての活動を指し、
「運動」とは、身体活動のうち、スポーツやフィットネスなどの健康・体力の維持・増進を目的として計画的・定期的に実施されるものを指す。
身体活動・運動の量が多い者は、少ない者と比較して循環器病、2型糖尿病、がん、ロコモティブシンドローム、
うつ病、認知症等の発症・罹患リスクが低いことが報告されている1。

(参照)早稲田ウィークリー

「座り過ぎ」日本人、20年後はどうなる? 健康スポーツ科学拠点で進む大規模健康調査

研究分野別の世界大学ランキング2017(※)において、国内1位・世界19位と非常に高い評価を得た「Sports-related Subjects」を担う早稲田大学「健康スポーツ科学拠点」。同拠点では、具体的にどのような研究が進められているのでしょうか。今回は「座り過ぎ」による健康リスク研究が社会的に大きく注目されている岡浩一朗スポーツ科学学術院教授に着目。校友を対象に1万人規模で20年間の健康追跡調査を行う「WASEDA’S Health Study(WHS)」が目指す未来とは?

――岡教授の研究対象である、座り過ぎによる健康リスクとはどのようなものですか。

長く座ったままだと、体の中で一番大きな筋肉の太ももや、血液を心臓に戻す重要な役割を担うふくらはぎをほとんど動かすことがありません。具体的なリスクとしては肥満や糖尿病、高血圧、ある種のがん、死亡のリスクが高まるといわれているほか、メンタルヘルスや認知機能の低下も指摘されています。

――健康リスクを示す世界的なデータはありますか。

例えば、テレビ視聴に伴う座位を1日1時間続けるごとに平均余命が22分ずつ短くなるといった調査結果があります。また、1日の座位時間が4時間未満の人に比べ、4~8時間、8~11時間、11時間以上と長くなるに従って、世界保健機関(WHO)が推奨する身体活動量を満たしていても、死亡のリスクが11%ずつ高まることも知られています。

後者のデータからは、長く座り続けるとせっかくの運動の効果が無駄になることを示しています。このような人たちを私たちは「アクティブ・カウチポテト」と呼んでいます。ちなみに、日本人成人の平日座位時間は1日7時間 (中央値)で、世界20カ国の中でも最長となっています。

――座位時間が長くなる理由は何でしょうか。

時代の変化が影響していると思います。昔のテレビはわざわざテレビまで近づいてチャンネルを回す必要がありましたが、今は手元のリモコンを操作するだけで済みます。掃除や洗濯もほぼ機械任せです。パソコンや携帯電話の発達により、足を使わなくても済む場面が増えました。利便性を求めた結果、仕方なしにでも家事や仕事、移動の場面での低強度の身体活動をする機会が減っているのです。

――岡教授は、立って仕事や勉強することを勧めていますね。

座り過ぎによる健康リスクを知らずに健康を害している人をなくすことが、私の研究の使命だと考えています。立って働く、立って学ぶことは当たり前だという社会へパラダイムシフトを起こしたいです。

考えてみてください。職場でも学校でも座っていなくてもできることはたくさんあるはずです。海外ではスタンディングデスクや昇降机を導入する会社や学校が少なくありません。日本でも先進的な取り組みをしている企業や私立学校を中心に、導入例が増えてきました。私の研究室では今、ある企業と共に社員証に組み込まれた加速度計を用いて座位時間や身体活動量を把握し、座り過ぎの解消に役立てることができるようなシステムを共同開発する計画も持っています。

――研究の課題は何ですか。

意識や環境をいかに普及させるかです。企業経営者によく言われます。「従業員に健康リスクが生じるのは退職後でしょ。今は投資できないよ」と。ですから、座り続けることが生産効率や労働意欲を低下させているデータの収集を進めています。これは学校での学習効率や学習意欲にも通じることです。

――研究を支える「WASEDA’S Health Study(WHS)」とは何ですか。

早稲田大学の卒業生を主対象に、長期間にわたって身体活動・運動や座位行動、食生活などと病気の発症などとの関連を調査し、そのデータを健康づくりの研究に役立てようと、2013年に立ち上げられたプロジェクトです。希望に応じて、加速度計を装着して座位時間や身体活動などを計測してもらうコースや、全国の拠点や所沢キャンパスで健康診断や体力・運動能力測定に参加してもらうコースなど4コースを設けています。

現在約3200人の登録者数を1万人規模に拡大させ、20年間の追跡調査を行います。この研究成果をもって、2032年の創立150周年には「健康に関する研究といえば早稲田」と呼ばれるようになりたいです。そして、医学部のない早稲田大学でも地球規模で解決しなければならない身体活動不足問題の解消に貢献できることを示したいと考えています。

【プロフィール】岡 浩一朗(おか・こういちろう)。1999年に早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程を修了、博士 (人間科学) の学位を取得。早稲田大学人間科学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD) 、東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)介護予防緊急対策室主任を経て、2006年4月、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授に着任。2012年4月より現職。専門は、健康行動科学、行動疫学。
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