中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

(参考)精神科入院 減らそう

2014年10月15日 | 情報
企業関係者は、こうした現状と問題点を認識できているのでしょうか?
精神障害と言っても、病名は多岐にわたりますが、決して簡単に回復しない疾病であること理解しましょう。
全ての事象が、労働者の就労中の事情によって惹起したことではないことを承知していますが、
企業関係者は、他人事ではなく、いつかは自社、さらには我が身にも降りかかってくるかもしれないという、問題意識が必要でしょう。

(参考)精神病床「住まい化」波紋 退院促進が難航、厚労省検討
2014年6月18日 朝日

精神科病院の病床を減らし、居住施設に転換しようという政策案が厚生労働省の有識者会議で議論され、波紋を広げている。
精神障害者について国は、入院中心から地域社会で生活してもらう政策へかじを切ったが、なかなか進まない。
居住施設転換は病床削減を目指す提案だが、「一生を病院敷地内で過ごすことになりかねない」などの批判がでている。
17日の会議では意見がまとまらなかった。
入院1年超、20万人
統合失調症など精神疾患の入院患者は約32万人おり、1年以上の長期入院患者が約20万人いる。
入院の必要がないのに居場所がない人も多く含まれるとされる。
日本の精神病床数は世界的にみても多く、平均在院日数も極端に長い。
この状況の改善を目指し、厚労省は2004年、入院中心の精神医療政策を転換。退院促進の目標数値を設定し、
03年に35・4万あった病床数が15年には7万床減ると見込んだ。
だが11年までの削減数はわずか1万床ほどにとどまる。
病床を減らせば病院の経営が厳しくなることに加え、退院後の受け皿となるグループホームなどの不足が原因という指摘もある。
そこで浮上したのが病床の居住施設への転換だ。
長期入院患者の高齢化は進み、65歳以上の割合がすでに過半数を占める。有識者会議で提案した委員は、
「最善とはいえないが、(患者が)病院の中で死んでいくのに手をこまねいて見ていられない。早急に議論を進めたい」と話す。
すでに転換して移行に取り組む病院もある。福島県郡山市の「あさかホスピタル」。
02年に102床あった分院を閉じ、共同住居に改修した。生活支援や住居運営にあたるNPOも設立。
病院の訪問看護など継続してサポートする態勢を整えた。
統合失調症で10代から入退院を繰り返していた40代の男性は、
転換後の暮らしを「外出や買い物も自由。同じ建物でも病院とは全く違った」と話す。07年には同じ敷地内にグループホームを建てた。
廃止した分院の患者の平均入院期間は20年以上。家族の受け入れも難しく、いきなり地域生活に戻るのも難しかった。
佐久間啓院長は「受け皿がなければ地域移行はできない。サポート態勢を整え、段階を踏んでいけば退院できる人もいる」と強調する。
「名変えただけ」批判
一方、居住施設への転換策には強い批判がある。
有識者検討会は昨年7月から議論を始め、17日の検討会で対策のとりまとめ案が示された。
だが、精神障害者の家族で作る全国精神保健福祉会連合会の理事が「厚労省の調査では『病院に住みたくない』という(当事者の)人が
圧倒的に多かった。本人が嫌がっていることを尊重すべきだ」と述べるなど、この日も反対意見が出た。
日本弁護士連合会は今月、「地域から分離して生活させる政策を存続させるもの」
「収容型医療の名前を変えた形だけの地域移行になるおそれがある」との会長声明を出した。
障害者団体も「病床の看板のかけかえに過ぎない」「障害者を特定の施設に収容し続けることは人権侵害」などと反発する。
反発の背景には、かつて国が推進してきた入院中心の施策への不信感がある。
検討会は7月に地域移行策の最終とりまとめをする方針。ここに居住施設への転換案が盛り込まれれば、国として制度化を検討することになる。
(中村靖三郎)

精神科入院 減らそう(1)医療から福祉へ転換を
2014年10月7日 読売新聞

精神科医療が転換点に立っている。入院患者が30万人、うち20万人が1年以上の長期入院という状況を改めるため、
厚生労働省は、精神病床を減らす方針を初めて打ち出した。長期入院がなぜこんなに多いのか。どうすれば地域での暮らしが実現するのか。
入院経験者、医療、福祉関係者が語った。(大阪本社編集委員 原昌平、社会保障部 小山孝)

全国精神障害者 地域生活支援協議会 代表理事 伊澤雄一氏
いざわ・ゆういち 東京都国分寺市で精神障害者の居住支援を行う「はらからの家」の活動に1981年の発足時から参加。
「はらからの家」は後に社会福祉法人化し、現在は総合施設長。58歳。
33年前、精神科病院を退院した人に住まいを提供し、生活を支える活動を始めた。当時の精神障害者は「難民」とも言える状況だった。

福祉サービスは存在せず、病院に長く入院するか、家族が家で抱えるしかなかった。
その後、グループホームや日中の活動場所などが増えたが、20万人が長期入院している現状を考えれば、まだ不十分だ。
なぜ入院患者が多いのか。理由の一つは、日本の精神科医療が民間任せでやってきたこと。精神病床の9割が民間病院にある。
経営や雇用維持を考え、患者の退院や病床削減に消極的になる。
とはいえ、患者を積極的に退院させる病院は増えた。私たちも入院患者に会って退院の相談に乗ることが増えた。
そこで「福祉」と「医療」の意識の差を感じることがある。
福祉はその人の「できること」に着目するが、医療は「できないこと」に焦点を当てがちだ。
「この患者は毎日歯が磨けないから、退院は無理」と看護師に言われたことがある。歯が磨けなくても地域で暮らせる。
虫歯になれば歯科医に行けばいい。試行錯誤を繰り返す中で、地域で暮らす力がつくものだ。
「患者が退院したがらない」と言う医療関係者もいるが、それも疑問だ。
今、40年間入院してきた50歳代の女性の退院支援を続けている。
退院後の暮らしが不安で「入院がいい」と話していたが、食事に連れ出し、グループホームへの宿泊体験を繰り返した。
1年半かかわるうち、退院する気持ちになった。その変化に医師や看護師が驚いている。
こうした支援には手間がかかり、技術も必要なため、取り組んでいる地域は少ない。
様々な福祉の方策は整ったが、財源不足が足かせになっている。
2005年度のデータだが、精神障害者の医療と福祉に使われる予算の比率は97対3だった。
福祉への配分が圧倒的に少なく、一番大切な住む所の整備が進まない。配分の見直しが欠かせない。
厚労省の検討会が、入院患者に退院を働きかける活動や住まいの確保を進める方針を打ち出したのは評価できる。
だが、空いた病棟を居住施設に転換する方針には反対だ。
「院内に退院する」ような施設ができれば、地域への退院が進まなくなる。
今年、日本が批准した障害者権利条約は、地域で生活する権利を保障している。院内居住施設は明らかに条約に違反する。
住民の理解も欠かせない。十数年前に私たちが精神障害者の社会復帰施設を建設する際、住民から「治安が乱れる」などと反対された。
各地で多くの支援者が同じ体験をしている。心の病は誰にとっても無関係ではない。自分たちの問題として理解してほしい。

入院5年超が10万人
日本の精神科医療は世界的に特異な位置にある。
34万床ある精神病床は経済協力開発機構(OECD)に加盟する国の中で突出して多く、人口当たりで加盟国平均の約4倍だ。
精神障害者を危険視する風潮が強かった高度成長期、国は補助金や低利融資で民間の精神科病院を増やした。
医師の数を一般病棟の3分の1でよいなどとする特例も設け、安い医療費で隔離収容する状況を生んだ。
政府は2004年、地域生活を重視する政策を掲げたが、進まなかった。現在も統合失調症などで5年以上入院する患者が10万人いる。
今年4月施行の改正精神保健福祉法は、新たな入院患者が1年以内に退院できるよう、地域の福祉関係者らとの連携強化を求めた。
一方、すでに長期入院している患者への対応は、厚労省の検討会が今年7月に報告書をまとめ、
患者の退院意欲を高める支援に加え、病床の削減方針を打ち出した。
病棟をグループホームや住宅に転換することも条件付きで容認したが、「それでは本当の地域生活にならない」という反対の声が多く出ている。


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