中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職・復職Q&A⑨ 

2024年03月18日 | 情報
休職・復職Q&A⑨

Q; 従業員200人規模の製造業で、人事総務部長をしています。
従業員の一人に、うつ病が疑われる従業員がいます。
産業医も専門医への受診を勧めていますが、当社の就業規則には、専門医への受診を命ずることができる規程がありません。
どのようにすれば専門医への受診を実現できますか?

A; 
〇 受診命令は、就業規則の規程に則って行いますが、
中小規模の企業には、通常このような受診命令を規定している例は、ほとんどありません。

〇 就業規則に規程がない場合は、どうすればよいのか。
当該従業員の行動・言動を、うつ病が疑われるという疾病性ではなく、
事例性で整理し、当該従業員に産業医面談を勧めます。

〇 貴職の見立て通りに、産業医も専門医への受診の必要性を認めるでしょうから、
貴職は、産業医の意見に従って、合理的で相当な理由を根拠にして、当該従業員に専門医への受診を命じてください。
根拠判例;京セラ事件(東高昭61.11.13判)

〇 なお、産業医面談も拒否することも考えられますが、無理やり産業医面談を強制する必要はありません。
最も穏当な対処方法としては、当該従業員を人事労務部門に異動させます。
なぜ、専門医を受診したくないのか、産業医面談を嫌がるのか、時間をかけて、解明いていきます。
そして、専門医への受診の必要性を理解させましょう。

〇 労働者の数ある疾病の中でも、精神疾患を疑われる場合には、
当該従業員の意向を十分に尊重する必要があります。
精神面の健康情報は、当該従業員にとって自身のプライバシーに関する情報ですから、
通常は職場内に知られることなく就労を継続したいと考える性質のものと考えられますので、
会社は当該従業員の意向をより尊重しなければなりません。
根拠判例;東芝(うつ病・解雇)事件(最二小平26.3.24判)

〇結論として、時間をかけて、穏やかにことを進める対応をお勧めします。

〇今回の休職・復職Q&Aシリーズは、これで終了です。
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