中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

質問に答えます①

2015年03月26日 | 情報
Q:初歩的な質問で申し訳ないのですが、「事業場」ということばがよく出てきます。
「事業場」とは何ですか? 会社とか企業とかとは違うのですか、それとも単なる言葉の使い分けですか?

A:いえいえ、とても大切な質問です。経験を積んだ専門家(と称する?)でも、誤解、誤用しているのが現実ですから。
例えば、「衛生管理者」は、常時50人以上の労働者を使用する「事業場」ごとに選任することになっています(安衛法12条、令4条)。
このようにして労働基準法、労働安全衛生法では、「事業場」単位で法律が適用されます。会社とか企業単位ではありません。

それでは、事業場とは何か?
昭和47年9月18日発基第91号(厚生労働省が必要に応じて発する通達です)では、「工場、鉱山、事務所、店舗のごとく、
一定の場所において相関連する組織のもとに継続的に行われる作業の一体をいう。
従って、一の事業場であるか否かは主として場所的観念(同一の場所か離れた場所かということ)によって決定すべきであり、
同一の場所にあるものは原則として一の事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とする」とされています。

また、昭和63年9月16日発基601号の2では、
「規模が著しく小さく、組織的関連、事務能力等を勘案して一の事業場という程度の独立性がないものについては、
直近上位の機構と一括して一の事業場として扱うものとすること」とされています。
一方で、「同一の場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部門がある場合には、
その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場として捉えることによりこの法律(労働安全衛生法)がより適切に運用できる場合には、
その部門は別個の事業場としてとらえるもの」とされています。

即ち、「場所的に分散しているものは原則として別個の事業場」として、取り扱います。
例えば、東京と大阪の場合は当然でしょうが、隣の町、さらには、数百メートル離れた事業場も原則、別個の事業場です。
また、同じ場所にあっても、独立した一つの事業所として扱うこともあります。
例えば、工場内にある診療所、食堂、自動車の販売会社に附属する整備工場、学校に附置された給食場等が該当します。
しかし「一の事業場という程度の独立性がないものについては,直近上位の事業場と一括して扱うものとすること」、
つまり、このような場合には一つの事業場として良いことになります。
例えば、現場事務所のない建設現場、従業員がひとり、ふたりで、判断・指示できる従業員がいない出張所、支所等が該当します。

ですから、一つしか事業場がない中小の会社は、会社=事業場になりますが、
大企業の場合は、日本全国に営業拠点を持っていたり、幾つもの工場を稼働させていますので、会社≠事業場になります。
即ち、複数の事業所から成り立っている経営体、企業ということになります。
例えば、ファーストフードや薬のチェーン店の場合、一つの店舗が従業員50人未満でも一つの事業場として見なされますから、
全国に1000店舗あれば、一つの会社(=企業)のもとに1000か所(正確には本社を加えて1001か所)の事業場を抱えている、
という解釈になります。

(参考)安全衛生委員会の設置事業所とは
14.7.15


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