この本「ビッグバン・イノベーション――一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ」の原題は、
「Big Bang Disruption: Strategy in the Age of Devastating Innovation」、すなわち、
「ビッグバン破壊:破壊的イノベーション時代の戦略」
米国アマゾンのイントロダクションは、
It used to take years or even decades for disruptive innovations to dethrone dominant products and services. But now any business can be devastated virtually overnight by something better and cheaper. How can executives protect themselves and harness the power of Big Bang Disruption?
かっては、破壊的イノベーションよって市場を支配していた製品やサービスは、何年も、あるいは、何十年も寿命を保っていた。しかし、今や、如何なるビジネスと言えども、何かより良くより安いもの出現によって、一夜にして、殆ど、駆逐されてしまう。経営者は、如何にして、自分たちを守り、ビッグバン破壊に対処できるであろうか。
ビッグバン・イノベーションは、「安定した事業を、ほんの数か月か、時には、ほんの数日で破壊してしまう新しいタイプのイノベーション」であり、
その速度と凄まじい破壊力を生み出すのは、次々に市場に投入される、より良く、より安い破壊的なテクノロジーである。
ビッグバン・イノベーションで生まれた新製品やサービスは、コンピューティングと通信機能を備えたハイブリッド端末・スマートフォンなどによって、知識情報が瞬時に伝播しており、登場した時点で、価格、性能、カスタマーゼイションなどすべてにおいて、高い競争力を具えているので、既存の支配的な製品やサービスは、たちまち、駆逐されてしまうと言う。
アマゾン英語版が、真っ先に引用した例は、GPS unitとfree navigation apps
数年前までは、ドラーバーたちは、、GPS unitに、喜んで200ドルをはたいた。しかし、スマートフォンが一般化すると、free navigation appsが、この素晴らしいGPS機器を駆逐してしまった。スマートフォンの無料のカーナビ登場1年半後には、GPSメーカーは壊滅的な打撃を受けて、その企業の市場価値は、85%も急落してしまった。と言うのであり、これこそ、まさに、ビッグバン・イノベーションの凄まじさであろう。
破壊的イノベーションについて、その推移・発展段階を論じていて、
第一段階、マイケル・ポーターの競争優位を築くための基本戦略論
第二段階、クレイトン・クリステンセンの「イノベーターのジレンマ」
第三段階、キム&モボルニュの「ブルー・オーシャン戦略」
今回のビッグバン・イノベーションは、第四段階、第四の波、と言う位置づけである。
多少、ニュアンスの違いがあるのだが、私自身、イノベーション論をテーマに勉強を続けてきたので、非常に興味深い指摘だと思っている。
特に、今回のビッグバン・イノベーションは、クリステンセンのローエンドからの破壊的イノベーションなどとの、時間軸の推移を考えれば、際立っているのだが、
瞬時に市場を席巻するビッグバン・イノベーションは、登場した瞬間から、総てに秀でたブルー・オーシャンであり、これまでのような釣鐘型のライフサイクルを描くのではなく、台頭から終焉まで極めて短期間のシャークフィン(サメのひれ)型で推移すると言うことである。
ビッグバン・イノベーションを支える経済的要因は、三つの経済的要因、すなわち、「製造コストの低減」「情報コストの低減」「実験コストの低減」によるもので、このデジタル革命に大きく後押しされたコストの低減によって、製品やサービスのライフサイクルが短縮し、釣鐘曲線は、やや右側広の急峻な左右非対称のシャークフィンにかわり、産業に壊滅的かつ破壊的な現象を引き起こすのである。
この本では、ビッグバン・イノベーションのシャークフィン・モデルを4つのステージ、すなわち、特異点、ビッグバン、ビッグクランチ、エントロピー に分割し、各ステージを克明に分析して、企業が依って立つ経営戦略の在り方や手法などを説いていて、時代の潮流を反映して激変したビジネス環境下での記述なので、非常に興味深い。
さて、「ピンボール」は、何故、最高益を出した数年後に壊滅したのか?をテーマにして、ビッグバン・イノベーションの4つのステージを語っているのだが、わが日本のソニーや任天堂についても論じているので面白い。
ピンボールマシンの歴史に突然止めを刺したのは、家庭用ゲーム機だと言う。
初期の家庭用ゲーム機は、まだ、洗練されておらず、高価だったので、ピンボールの全盛時代が続いていたが、指数関数的な成長を遂げるデジタル技術を利用していたので徐々に進化を遂げ、1978年スベースインベーダーが登場して若者を魅了し、ビッグバン・イノベーションの兆しを見せた。
途中、アーケードゲーム人気に火が付き、アーケードの数と規模が増加したおかげで、ピンボール産業も波に乗り、1980年代後半から1993年にかけて、ピンボールマシンの全盛期を迎えた。
しかし、1985年に任天堂がアメリカで販売した8ビットの家庭用ゲーム機NESを皮切りにして、1990年代初旬に進化を発揮し始めて、その後継機、セガの「マリオブラザーズ」など、音やグラフィック、コントローラーの反応などは、アーケードビデオの比ではなく、1994年のソニーの「プレイステーション」の登場で、完全に、家庭用ゲーム機が、ピンボール産業を破壊に追いやってしまった。
「プレイステーション」が起こしたビッグバンが、ピンボールマシン産業に、ビッグクランチを引き起こしたのである。
一台7500ドルもするピンボールマシンに対して、プレイステーションは299ドル。家庭用ゲーム機は自宅に置けて、しかもネットワークで繋がっている。ほぼ総てのゲームデザインをソフトウエアで処理でき、カスタマーゼーションが簡単で、音楽や映画の再生、インターネットの閲覧も出来る。
尤も、プレイステーションのビッグクランチも早く、プレイステーション2、プレイステーション3が取って代わり、マイクロソフトや任天堂などの家庭用ゲーム機が追い打ちをかけてきた。
その後、任天堂が、共食い覚悟で、新商品を投入し続けたのだが、そうし続けなければ、任天堂自身が、他社に駆逐されてしまうからであり、これこそ、ビッグバン・イノベーションの特質と言えようか。
ソニーが、破壊的イノベーションを連発して、成長と発展を謳歌し続け得た前世紀とは、大きな違いである。
今や、自ら死と再生を繰り返せる企業だけが生き残れる。時代になったのである。
任天堂が、そして、ソニーが、家庭用ゲーム機の世界で生き残り続けて行くためには、絶えず、エンターテインメント・エコシステムの中心に位置していなければならないと言うことである。
クリステンセンが説いた「イノベーターのジレンマ」には、その対応に時間的余裕があったが、ビッグバン・イノベーションの攻撃は、瞬時であり、はるかに厳しい世界である。
ビッグバン・イノベーションを可能にしたのは、須らく、デジタル革命、ICT革命のなせる業である。
IOT、クラウドコンピューティング・・・すべてにICが組み込まれてネット化されれば、全産業のみならず、全地球の人間生活が一体化し、すべてが、ビッグバン・ディスラプションに晒されてしまう。
どうするのか。To be or not to be,that is a question.と言うことであろうか。
「Big Bang Disruption: Strategy in the Age of Devastating Innovation」、すなわち、
「ビッグバン破壊:破壊的イノベーション時代の戦略」
米国アマゾンのイントロダクションは、
It used to take years or even decades for disruptive innovations to dethrone dominant products and services. But now any business can be devastated virtually overnight by something better and cheaper. How can executives protect themselves and harness the power of Big Bang Disruption?
かっては、破壊的イノベーションよって市場を支配していた製品やサービスは、何年も、あるいは、何十年も寿命を保っていた。しかし、今や、如何なるビジネスと言えども、何かより良くより安いもの出現によって、一夜にして、殆ど、駆逐されてしまう。経営者は、如何にして、自分たちを守り、ビッグバン破壊に対処できるであろうか。
ビッグバン・イノベーションは、「安定した事業を、ほんの数か月か、時には、ほんの数日で破壊してしまう新しいタイプのイノベーション」であり、
その速度と凄まじい破壊力を生み出すのは、次々に市場に投入される、より良く、より安い破壊的なテクノロジーである。
ビッグバン・イノベーションで生まれた新製品やサービスは、コンピューティングと通信機能を備えたハイブリッド端末・スマートフォンなどによって、知識情報が瞬時に伝播しており、登場した時点で、価格、性能、カスタマーゼイションなどすべてにおいて、高い競争力を具えているので、既存の支配的な製品やサービスは、たちまち、駆逐されてしまうと言う。
アマゾン英語版が、真っ先に引用した例は、GPS unitとfree navigation apps
数年前までは、ドラーバーたちは、、GPS unitに、喜んで200ドルをはたいた。しかし、スマートフォンが一般化すると、free navigation appsが、この素晴らしいGPS機器を駆逐してしまった。スマートフォンの無料のカーナビ登場1年半後には、GPSメーカーは壊滅的な打撃を受けて、その企業の市場価値は、85%も急落してしまった。と言うのであり、これこそ、まさに、ビッグバン・イノベーションの凄まじさであろう。
破壊的イノベーションについて、その推移・発展段階を論じていて、
第一段階、マイケル・ポーターの競争優位を築くための基本戦略論
第二段階、クレイトン・クリステンセンの「イノベーターのジレンマ」
第三段階、キム&モボルニュの「ブルー・オーシャン戦略」
今回のビッグバン・イノベーションは、第四段階、第四の波、と言う位置づけである。
多少、ニュアンスの違いがあるのだが、私自身、イノベーション論をテーマに勉強を続けてきたので、非常に興味深い指摘だと思っている。
特に、今回のビッグバン・イノベーションは、クリステンセンのローエンドからの破壊的イノベーションなどとの、時間軸の推移を考えれば、際立っているのだが、
瞬時に市場を席巻するビッグバン・イノベーションは、登場した瞬間から、総てに秀でたブルー・オーシャンであり、これまでのような釣鐘型のライフサイクルを描くのではなく、台頭から終焉まで極めて短期間のシャークフィン(サメのひれ)型で推移すると言うことである。
ビッグバン・イノベーションを支える経済的要因は、三つの経済的要因、すなわち、「製造コストの低減」「情報コストの低減」「実験コストの低減」によるもので、このデジタル革命に大きく後押しされたコストの低減によって、製品やサービスのライフサイクルが短縮し、釣鐘曲線は、やや右側広の急峻な左右非対称のシャークフィンにかわり、産業に壊滅的かつ破壊的な現象を引き起こすのである。
この本では、ビッグバン・イノベーションのシャークフィン・モデルを4つのステージ、すなわち、特異点、ビッグバン、ビッグクランチ、エントロピー に分割し、各ステージを克明に分析して、企業が依って立つ経営戦略の在り方や手法などを説いていて、時代の潮流を反映して激変したビジネス環境下での記述なので、非常に興味深い。
さて、「ピンボール」は、何故、最高益を出した数年後に壊滅したのか?をテーマにして、ビッグバン・イノベーションの4つのステージを語っているのだが、わが日本のソニーや任天堂についても論じているので面白い。
ピンボールマシンの歴史に突然止めを刺したのは、家庭用ゲーム機だと言う。
初期の家庭用ゲーム機は、まだ、洗練されておらず、高価だったので、ピンボールの全盛時代が続いていたが、指数関数的な成長を遂げるデジタル技術を利用していたので徐々に進化を遂げ、1978年スベースインベーダーが登場して若者を魅了し、ビッグバン・イノベーションの兆しを見せた。
途中、アーケードゲーム人気に火が付き、アーケードの数と規模が増加したおかげで、ピンボール産業も波に乗り、1980年代後半から1993年にかけて、ピンボールマシンの全盛期を迎えた。
しかし、1985年に任天堂がアメリカで販売した8ビットの家庭用ゲーム機NESを皮切りにして、1990年代初旬に進化を発揮し始めて、その後継機、セガの「マリオブラザーズ」など、音やグラフィック、コントローラーの反応などは、アーケードビデオの比ではなく、1994年のソニーの「プレイステーション」の登場で、完全に、家庭用ゲーム機が、ピンボール産業を破壊に追いやってしまった。
「プレイステーション」が起こしたビッグバンが、ピンボールマシン産業に、ビッグクランチを引き起こしたのである。
一台7500ドルもするピンボールマシンに対して、プレイステーションは299ドル。家庭用ゲーム機は自宅に置けて、しかもネットワークで繋がっている。ほぼ総てのゲームデザインをソフトウエアで処理でき、カスタマーゼーションが簡単で、音楽や映画の再生、インターネットの閲覧も出来る。
尤も、プレイステーションのビッグクランチも早く、プレイステーション2、プレイステーション3が取って代わり、マイクロソフトや任天堂などの家庭用ゲーム機が追い打ちをかけてきた。
その後、任天堂が、共食い覚悟で、新商品を投入し続けたのだが、そうし続けなければ、任天堂自身が、他社に駆逐されてしまうからであり、これこそ、ビッグバン・イノベーションの特質と言えようか。
ソニーが、破壊的イノベーションを連発して、成長と発展を謳歌し続け得た前世紀とは、大きな違いである。
今や、自ら死と再生を繰り返せる企業だけが生き残れる。時代になったのである。
任天堂が、そして、ソニーが、家庭用ゲーム機の世界で生き残り続けて行くためには、絶えず、エンターテインメント・エコシステムの中心に位置していなければならないと言うことである。
クリステンセンが説いた「イノベーターのジレンマ」には、その対応に時間的余裕があったが、ビッグバン・イノベーションの攻撃は、瞬時であり、はるかに厳しい世界である。
ビッグバン・イノベーションを可能にしたのは、須らく、デジタル革命、ICT革命のなせる業である。
IOT、クラウドコンピューティング・・・すべてにICが組み込まれてネット化されれば、全産業のみならず、全地球の人間生活が一体化し、すべてが、ビッグバン・ディスラプションに晒されてしまう。
どうするのか。To be or not to be,that is a question.と言うことであろうか。