ジオエコノミクスのみならず、現下のGゼロ世界における最も重要なプレーヤーは、間違いなく、中国であろう。
ブレマーの持論で興味深いのは、
1980年以降、特筆すべきは、中国の成長だが、経済的影響力が伸びたからと言って、中国の軍事的役割が広がっているわけではない。習近平政権は、当面は、アメリカの軍事力には対抗できないことを理解しており、また、多くの点でそれを望んでいない。東アジアは別として、アメリカが従来通り軍事的優位を保ち、中国の経済成長を阻み、発展の障害となる世界的な紛争と言うリスクが抑えられ、世界的なリーダーとして役割を果たすべきプレッシャーから解放されれば、中国にとっては、むしろ、好都合なのである。と言う主張である。
日米安保条約による核の傘の下で、平和を維持し経済成長を謳歌してきた日本のように、パクス・アメリカーナ(Pax Americana)が、中国の成長発展に大いに寄与してきたと言うことであろう。
中国が、軍事力において、アメリカには、はるかに及ばないし、当分、凌駕出来そうにないと言うことについては、これまで、このブログで、ナイ教授やルトワックなど専門家の対中論で紹介してきた。
中国の外交政策については、先に、ルトワックの「中国4.0」などで論じてきたように、大分、変化をして来ており、確たることは言えないが、ISを叩けば国内のウイグル問題に火をつけるであろうから避けるにしても、対中東や対アフリカなど国際紛争には消極的であり、むしろ、ロシアとは違って、活性化する自国の経済を基盤に、密かに力をつけて行こうとしていると言うブレマーの指摘が正しいかも知れない。
リーマンショックにも殆ど無傷で急速な経済成長に奢った中国が、誤って、アジアの近隣諸国に取った強硬政策によって、インドを含めたアジア諸国に警戒心を起こさせてアメリカ政府との関係改善の切っ掛けを与えて、包囲網を構築されつつあるなど、裏目に出ている。
アメリカとの同盟関係にない弱小のベトナムなどには度々喧嘩を売り、台湾に対しては態度を硬化することがあるが、中国は、アジアの中でさえも、強硬姿勢を貫くことは逆効果であると感じ始めている。
ルトワックは、プーチンなら、尖閣諸島を占領するであろうが、習近平は、瀬戸際政策を行っても、占領と言う挙に出ることはなかろうと言っているのだが、南沙諸島への中国の動きを見ていると、国際法を振りかざしても強硬姿勢を取れないなどどうしようもない場合や、相手が弱くて反発しなければ、どんどん、強硬姿勢を貫いて既成事実を積み上げて陣地を広げて行く、と言う戦略を推し進めているようで、イラクのクウェート侵攻やアルゼンチンのフォークランド侵攻のような、反発がなくてうまく行けば「やり得」的な外交を彷彿とさせる。
両方とも、アングロサクソン的な志向を貫いて、米英が腕力で解決したのだが、南沙諸島問題の解決を図るには、最早、そんな時代ではなくなってしまったのである。
ところで、経済外交は、別な側面を見せていて、株式市場の混乱や予想以上の景気減速などによって、経済的には苦境にあるが、
経済上の国際的な影響力を伸ばして、世界の現状を打破する取り組みについては、極めて積極的である。
中国は、IMFや世銀などでの支配的な地位を利用して、国際的な影響力を発揮し続けているのみならず、AIIBやBRIC's銀行などの新たな国際機関を創設して、アメリカに代わって資本と基準を提供することで、アメリカ主導で打ち立てられた世界経済の秩序に全面攻撃を加えて、新秩序、チャイナ・スタンダードを構築しようと目論んでいる。
この点を憂慮して、オバマ大統領がTPPを積極的に推進しているのだが、AIIBなどのように、経済的な理由とは言え、英国を筆頭に独仏など同盟先進国が、すり寄るなど、政治的戦略も、経済パワーには勝てないと言うことであろうか。
しかし、国営企業の民営化ではなく、その立て直しに注力する国家資本主義の中国だが、中進国の罠をクリアするためには、国営企業への依存度を減らし、国民の創意工夫と潜在能力を涵養し、経済の活性化を図らなければならない。
国内の富裕層と有力者たちが現行体制から恩恵を受けている国営の有力企業から、何億人へと富の移転を図らなければならないのは当然だが、果たして、習近平政権は、私利私欲のためにシステムを歪めた人物たちをを更迭するなど、既得利権者を成敗して、富の分配を公平化して、市場原理に導かれた革新・消費型のミドルクラス経済へ飛躍させることが出来るのか。
格差拡大が、中国の政治経済に深刻な打撃を与え始めており、これは、中国にとって大変な難題だが、中国国内で勢いを増しているこの歴史的改革の進行如何が、中国の将来を決すると言うことであろう。
ブレマーは、両国とも紛争を望んでおらず、関係はかなり良好だと言う。
国民と政府の政治的価値観が著しく異なるに2大国が対立すれば、20世紀の冷戦よりもはるかに危険なものになるかも知れない。
しかし、核を装備した大陸弾道ミサイルは、壊滅的な破壊力を持つが、どこから発射されたか容易に追跡可能であり、核攻撃の応酬が県されることもなかろうし、サイバー攻撃の激しさは増すであろうが、多くの人命を奪わずとも壊滅的な被害を与えられる。
冷戦との決定的な違いは、いわば緩衝材としての鉄のカーテンが存在して、資本主義社会と共産主義社会の通商関係は隔絶されていたが、現在は、完全に相互依存関係にあって、米中が壊滅的な対立関係にはなり難い。と言うのである。
トーマス・フリードマンの「マクドナルドのある国同士は戦争しない」と言う「紛争防止の黄金のM型アーチ理論」や、それを発展させたデル・システムのようなジャスト・イン・タイム式サプライ・チェーンで密接に結合された国々の間では、旧来の脅威を駆逐(?)するので戦争など起こらないとする「デルの紛争回避論」に近い理論展開だが、ある程度は、戦争なり紛争の回避要件にはなろうが、現に争いは起こっているし、それ程、単純なものではなかろう。
いずれにしろ、「金持ち喧嘩せず」で、社会が豊かになれば、何の利もなく失うものが多いので、厭戦思想が強くなるのは、真実であろう。
南沙諸島で、中国が強気に出ているのは、アメリカの意思なり姿勢を試しているのだと言うのだが、東南アジアを巻き込んだ米中対決だけは避けたいことである。
ブレマーの持論で興味深いのは、
1980年以降、特筆すべきは、中国の成長だが、経済的影響力が伸びたからと言って、中国の軍事的役割が広がっているわけではない。習近平政権は、当面は、アメリカの軍事力には対抗できないことを理解しており、また、多くの点でそれを望んでいない。東アジアは別として、アメリカが従来通り軍事的優位を保ち、中国の経済成長を阻み、発展の障害となる世界的な紛争と言うリスクが抑えられ、世界的なリーダーとして役割を果たすべきプレッシャーから解放されれば、中国にとっては、むしろ、好都合なのである。と言う主張である。
日米安保条約による核の傘の下で、平和を維持し経済成長を謳歌してきた日本のように、パクス・アメリカーナ(Pax Americana)が、中国の成長発展に大いに寄与してきたと言うことであろう。
中国が、軍事力において、アメリカには、はるかに及ばないし、当分、凌駕出来そうにないと言うことについては、これまで、このブログで、ナイ教授やルトワックなど専門家の対中論で紹介してきた。
中国の外交政策については、先に、ルトワックの「中国4.0」などで論じてきたように、大分、変化をして来ており、確たることは言えないが、ISを叩けば国内のウイグル問題に火をつけるであろうから避けるにしても、対中東や対アフリカなど国際紛争には消極的であり、むしろ、ロシアとは違って、活性化する自国の経済を基盤に、密かに力をつけて行こうとしていると言うブレマーの指摘が正しいかも知れない。
リーマンショックにも殆ど無傷で急速な経済成長に奢った中国が、誤って、アジアの近隣諸国に取った強硬政策によって、インドを含めたアジア諸国に警戒心を起こさせてアメリカ政府との関係改善の切っ掛けを与えて、包囲網を構築されつつあるなど、裏目に出ている。
アメリカとの同盟関係にない弱小のベトナムなどには度々喧嘩を売り、台湾に対しては態度を硬化することがあるが、中国は、アジアの中でさえも、強硬姿勢を貫くことは逆効果であると感じ始めている。
ルトワックは、プーチンなら、尖閣諸島を占領するであろうが、習近平は、瀬戸際政策を行っても、占領と言う挙に出ることはなかろうと言っているのだが、南沙諸島への中国の動きを見ていると、国際法を振りかざしても強硬姿勢を取れないなどどうしようもない場合や、相手が弱くて反発しなければ、どんどん、強硬姿勢を貫いて既成事実を積み上げて陣地を広げて行く、と言う戦略を推し進めているようで、イラクのクウェート侵攻やアルゼンチンのフォークランド侵攻のような、反発がなくてうまく行けば「やり得」的な外交を彷彿とさせる。
両方とも、アングロサクソン的な志向を貫いて、米英が腕力で解決したのだが、南沙諸島問題の解決を図るには、最早、そんな時代ではなくなってしまったのである。
ところで、経済外交は、別な側面を見せていて、株式市場の混乱や予想以上の景気減速などによって、経済的には苦境にあるが、
経済上の国際的な影響力を伸ばして、世界の現状を打破する取り組みについては、極めて積極的である。
中国は、IMFや世銀などでの支配的な地位を利用して、国際的な影響力を発揮し続けているのみならず、AIIBやBRIC's銀行などの新たな国際機関を創設して、アメリカに代わって資本と基準を提供することで、アメリカ主導で打ち立てられた世界経済の秩序に全面攻撃を加えて、新秩序、チャイナ・スタンダードを構築しようと目論んでいる。
この点を憂慮して、オバマ大統領がTPPを積極的に推進しているのだが、AIIBなどのように、経済的な理由とは言え、英国を筆頭に独仏など同盟先進国が、すり寄るなど、政治的戦略も、経済パワーには勝てないと言うことであろうか。
しかし、国営企業の民営化ではなく、その立て直しに注力する国家資本主義の中国だが、中進国の罠をクリアするためには、国営企業への依存度を減らし、国民の創意工夫と潜在能力を涵養し、経済の活性化を図らなければならない。
国内の富裕層と有力者たちが現行体制から恩恵を受けている国営の有力企業から、何億人へと富の移転を図らなければならないのは当然だが、果たして、習近平政権は、私利私欲のためにシステムを歪めた人物たちをを更迭するなど、既得利権者を成敗して、富の分配を公平化して、市場原理に導かれた革新・消費型のミドルクラス経済へ飛躍させることが出来るのか。
格差拡大が、中国の政治経済に深刻な打撃を与え始めており、これは、中国にとって大変な難題だが、中国国内で勢いを増しているこの歴史的改革の進行如何が、中国の将来を決すると言うことであろう。
ブレマーは、両国とも紛争を望んでおらず、関係はかなり良好だと言う。
国民と政府の政治的価値観が著しく異なるに2大国が対立すれば、20世紀の冷戦よりもはるかに危険なものになるかも知れない。
しかし、核を装備した大陸弾道ミサイルは、壊滅的な破壊力を持つが、どこから発射されたか容易に追跡可能であり、核攻撃の応酬が県されることもなかろうし、サイバー攻撃の激しさは増すであろうが、多くの人命を奪わずとも壊滅的な被害を与えられる。
冷戦との決定的な違いは、いわば緩衝材としての鉄のカーテンが存在して、資本主義社会と共産主義社会の通商関係は隔絶されていたが、現在は、完全に相互依存関係にあって、米中が壊滅的な対立関係にはなり難い。と言うのである。
トーマス・フリードマンの「マクドナルドのある国同士は戦争しない」と言う「紛争防止の黄金のM型アーチ理論」や、それを発展させたデル・システムのようなジャスト・イン・タイム式サプライ・チェーンで密接に結合された国々の間では、旧来の脅威を駆逐(?)するので戦争など起こらないとする「デルの紛争回避論」に近い理論展開だが、ある程度は、戦争なり紛争の回避要件にはなろうが、現に争いは起こっているし、それ程、単純なものではなかろう。
いずれにしろ、「金持ち喧嘩せず」で、社会が豊かになれば、何の利もなく失うものが多いので、厭戦思想が強くなるのは、真実であろう。
南沙諸島で、中国が強気に出ているのは、アメリカの意思なり姿勢を試しているのだと言うのだが、東南アジアを巻き込んだ米中対決だけは避けたいことである。