ブレグジット(British+exitイギリスがEUを脱退すること)が、現実となった。
私自身は、イギリスがEUに留まるべきだと思っていたので、一寸、残念だが、通貨ユーロを採用して経済統合を図ろうとしながら、財政を外して、更に、政治統合を実現できなかったが故に、ギリシャ問題を惹起したり、色々な不協和音の台頭で暗礁に乗り上げるなど、このままでは上手く行く筈がないと思っていたので、EUが曲がりなりにも安定した国家連合として脱皮するためには、通過しなければならなかった試練であったような気もしている。
しかし、問題は、EU脱退後のイギリスが、どのようにして独立国家として生きて行くかである。
私自身、自分の考えはあるのだが、ポール・クルーグマンが、ニューヨーク・タイムズに「Brexit: The Morning After」と言うコラムを書いて、今回の「Brexit」について興味深いコメントをしているので、これに触れながら、考えてみたい。
また、ジョージ・ソロスから、「Project Syndicate」に、「Brexit and the Future of Europe」を発表したとメールしてきたので、読んでみたし、電子版で、ロンドンのThe Economistの記事を拾い読みしているのだが、とにかく、興味深い。
さて、クルーグマンの見解だが、今回の英国のEU脱退について、英国にとっては、経済的な悪化は皆が恐れているほど大きくはなく、どちらの結果にしても、むしろ、政治的な恐怖の方が大きいと言う。
まず、経済的な問題だが、確かに、英国はより貧しくなり、EU離脱でEUとの貿易に影響が出てくるであろうが、先進国同士のWTOの税率は低いし、その他の貿易慣行も,
それ程、厳しくないので影響はそれ程でもない。
しかし、欧米間では、お互いの市場へのアクセスが保証されているかどうかが、貿易を意図した長期的な投資を促進するかなどに大きく影響し、その保証が危うくなったり、貿易戦争などが勃発すると、英国は、打撃を受ける。
現在は、財政的な影響や貿易の悪化や英国及び世界の景気後退などについての話し合いが行われるのであろうが、まだ不透明である。
ポンドも暴落したが、70年以降3回の大暴落に比べて、8%であるから、それ程、壊滅的ではない。
英国の国家債務は、ポンドで借りているので、アルゼンチンのように通貨暴落によりバランスシート危機は起こりようがなく、また、資本逃避や金利上昇の心配も、殆ど生じておらず、健全である。
尤も、世界の株価はダウンし、経済悪化を懸念して中銀が金融緩和に走り、不確定要素のために投資が落ち込んでいるのだが、どこまでが、Brexit の影響かは判然としない。
私は、Brexitによって、7つの海を支配した大英帝国の唯一の残照であったシティの金融センターの凋落が引き金を引いて、一気に、英国経済が収束していくのではないかと心配している。
クルーグマンは、経済的な恐怖よりも、ヨーロッパと英国にとってもっと深刻な問題は、政治的な影響だと言う。
EUは、平和と経済統合を通して政治的連合を構築しようとする深淵なるものだが、深刻なトラブルに直面している。
Brexitは、ポピュリスト/分離主義者/ 外国人排斥運動が、ヨーロッパ大陸に影響力を得たはしりである。
これに加えて、ヨーロッパ経済が、弱体化しており、現世の不況の主要候補( prime candidate for “secular stagnation)であり、投資を抑圧する人口減少などによって引き起こされる絶え間ない小不況(persistent low-grade depression )が続いて先行きが見通せず、人々は、ヨーロッパの未来について悲観を募らせている。
しかし、EU残留派が勝っていても、この苦しみは消えない。大きなミステイクは、統一政府不在下で、果たして単一通貨が機能するのかどうか、注意深く考えもせずに、単一通貨ユーロを採用したことである。無責任な南部諸国の人々によって持ち込まれたmorality play、それに、所得水準の格差も大きく文化的にも違っている多様な国々の国境を開放して労働移動の自由を確立したのだから、これが、どのように作用してどのような結果を招くのかか、十分に考えもしなかった。
Brexitは、この問題の主たる症状であって、それに伴う政権への信頼性の欠如である。英国として、Brexitに対してしかるべき知見を具えていたにしろ、ユーロ危機も、政府不信の一因であった。
Brexitは、頭にできた腫瘍、今後、ヨーロッパレベルでどんなことが起こるのか。
いずれにしろ、キャメロンの大失策によって実施されたこの投票の結果は、英国の政治に最悪の要因となって作用するであろうことは間違いなさそうで、トランプ以上に、ボリス・ジョンソンが首相になる可能性が高いとすれば、イギリスの将来は、どうなるのか。
So calm down about the short-run macroeconomics; grieve for Europe, but you should have been doing that already; worry about Britain.
私自身は、クルーグマンの見解には、殆ど異論はないのだが、今回感じたのは、直接民主主義と言う国民投票の大変なインパクトとその恐ろしさである。
日本でも、憲法改正について、国民投票を考えているようだが、果たして、民意を問うと言うお題目には格好の手段だが、ある程度常識なりカウンターベイリング・パワーが働く代議制民主主義の方が、適切だと思えるケースが多い。
メディの報道によると、今回のイギリスの投票で、
勝利したBrexit賛成派は、高齢者、低所得層・労働者、低教育水準、イングランドの地方、ウェールズ
Brexit反対派は、若者、富裕層、高教育水準、イングランドの都市部、スコットランド、北アイルランド、
と言った傾向があったと言う。
TPPと同じで、日本の大人たちも、殆ど良く分からずに、賛否両論を戦わせて世論操作されて押し切られた感じだが、ソロスのコメントによると、英仏海峡のカレーに雪崩れ込む難民たちの情景に英国人が恐怖を感じたと言っており、過激なポピュリスト政治家たちの激しいアジ演説に煽られると、時には、ひとたまりもなく世論操作されてしまう。
それに、殆どの国民が、現在の政治や生活に不満を持っているので、その課題がTPPであろうとBrexitであろうと、政府批判票が、国民投票のネガティブ要因として作用する。
この国民投票は、法的拘束力はないと言うし、英国の下院議員の75%は、Brexitに反対だと言う。
英国国民が、投票結果に後悔し始めて、再投票要求の署名が350万人を超えたと言い、ロンドンは独立を画策し始めて、スコットランドは、EU残留派なので独立のための最国民投票を実施すると言う。
しかし、国民投票を実施して、UKの運命を決してしまった。
とは言え、これ程重要な決定を、殆ど賛否相半ばで、国民を真っ二つに分断したままで、結論を下して、民主主義を産み育てたイギリスの将来を決めて良いのかどうか。
時間が経てば、何らかの平衡状態に収束して行くのであろうが、益々、複雑怪奇になってきた宇宙船地球号の将来が危ぶまれている。
私自身は、イギリスがEUに留まるべきだと思っていたので、一寸、残念だが、通貨ユーロを採用して経済統合を図ろうとしながら、財政を外して、更に、政治統合を実現できなかったが故に、ギリシャ問題を惹起したり、色々な不協和音の台頭で暗礁に乗り上げるなど、このままでは上手く行く筈がないと思っていたので、EUが曲がりなりにも安定した国家連合として脱皮するためには、通過しなければならなかった試練であったような気もしている。
しかし、問題は、EU脱退後のイギリスが、どのようにして独立国家として生きて行くかである。
私自身、自分の考えはあるのだが、ポール・クルーグマンが、ニューヨーク・タイムズに「Brexit: The Morning After」と言うコラムを書いて、今回の「Brexit」について興味深いコメントをしているので、これに触れながら、考えてみたい。
また、ジョージ・ソロスから、「Project Syndicate」に、「Brexit and the Future of Europe」を発表したとメールしてきたので、読んでみたし、電子版で、ロンドンのThe Economistの記事を拾い読みしているのだが、とにかく、興味深い。
さて、クルーグマンの見解だが、今回の英国のEU脱退について、英国にとっては、経済的な悪化は皆が恐れているほど大きくはなく、どちらの結果にしても、むしろ、政治的な恐怖の方が大きいと言う。
まず、経済的な問題だが、確かに、英国はより貧しくなり、EU離脱でEUとの貿易に影響が出てくるであろうが、先進国同士のWTOの税率は低いし、その他の貿易慣行も,
それ程、厳しくないので影響はそれ程でもない。
しかし、欧米間では、お互いの市場へのアクセスが保証されているかどうかが、貿易を意図した長期的な投資を促進するかなどに大きく影響し、その保証が危うくなったり、貿易戦争などが勃発すると、英国は、打撃を受ける。
現在は、財政的な影響や貿易の悪化や英国及び世界の景気後退などについての話し合いが行われるのであろうが、まだ不透明である。
ポンドも暴落したが、70年以降3回の大暴落に比べて、8%であるから、それ程、壊滅的ではない。
英国の国家債務は、ポンドで借りているので、アルゼンチンのように通貨暴落によりバランスシート危機は起こりようがなく、また、資本逃避や金利上昇の心配も、殆ど生じておらず、健全である。
尤も、世界の株価はダウンし、経済悪化を懸念して中銀が金融緩和に走り、不確定要素のために投資が落ち込んでいるのだが、どこまでが、Brexit の影響かは判然としない。
私は、Brexitによって、7つの海を支配した大英帝国の唯一の残照であったシティの金融センターの凋落が引き金を引いて、一気に、英国経済が収束していくのではないかと心配している。
クルーグマンは、経済的な恐怖よりも、ヨーロッパと英国にとってもっと深刻な問題は、政治的な影響だと言う。
EUは、平和と経済統合を通して政治的連合を構築しようとする深淵なるものだが、深刻なトラブルに直面している。
Brexitは、ポピュリスト/分離主義者/ 外国人排斥運動が、ヨーロッパ大陸に影響力を得たはしりである。
これに加えて、ヨーロッパ経済が、弱体化しており、現世の不況の主要候補( prime candidate for “secular stagnation)であり、投資を抑圧する人口減少などによって引き起こされる絶え間ない小不況(persistent low-grade depression )が続いて先行きが見通せず、人々は、ヨーロッパの未来について悲観を募らせている。
しかし、EU残留派が勝っていても、この苦しみは消えない。大きなミステイクは、統一政府不在下で、果たして単一通貨が機能するのかどうか、注意深く考えもせずに、単一通貨ユーロを採用したことである。無責任な南部諸国の人々によって持ち込まれたmorality play、それに、所得水準の格差も大きく文化的にも違っている多様な国々の国境を開放して労働移動の自由を確立したのだから、これが、どのように作用してどのような結果を招くのかか、十分に考えもしなかった。
Brexitは、この問題の主たる症状であって、それに伴う政権への信頼性の欠如である。英国として、Brexitに対してしかるべき知見を具えていたにしろ、ユーロ危機も、政府不信の一因であった。
Brexitは、頭にできた腫瘍、今後、ヨーロッパレベルでどんなことが起こるのか。
いずれにしろ、キャメロンの大失策によって実施されたこの投票の結果は、英国の政治に最悪の要因となって作用するであろうことは間違いなさそうで、トランプ以上に、ボリス・ジョンソンが首相になる可能性が高いとすれば、イギリスの将来は、どうなるのか。
So calm down about the short-run macroeconomics; grieve for Europe, but you should have been doing that already; worry about Britain.
私自身は、クルーグマンの見解には、殆ど異論はないのだが、今回感じたのは、直接民主主義と言う国民投票の大変なインパクトとその恐ろしさである。
日本でも、憲法改正について、国民投票を考えているようだが、果たして、民意を問うと言うお題目には格好の手段だが、ある程度常識なりカウンターベイリング・パワーが働く代議制民主主義の方が、適切だと思えるケースが多い。
メディの報道によると、今回のイギリスの投票で、
勝利したBrexit賛成派は、高齢者、低所得層・労働者、低教育水準、イングランドの地方、ウェールズ
Brexit反対派は、若者、富裕層、高教育水準、イングランドの都市部、スコットランド、北アイルランド、
と言った傾向があったと言う。
TPPと同じで、日本の大人たちも、殆ど良く分からずに、賛否両論を戦わせて世論操作されて押し切られた感じだが、ソロスのコメントによると、英仏海峡のカレーに雪崩れ込む難民たちの情景に英国人が恐怖を感じたと言っており、過激なポピュリスト政治家たちの激しいアジ演説に煽られると、時には、ひとたまりもなく世論操作されてしまう。
それに、殆どの国民が、現在の政治や生活に不満を持っているので、その課題がTPPであろうとBrexitであろうと、政府批判票が、国民投票のネガティブ要因として作用する。
この国民投票は、法的拘束力はないと言うし、英国の下院議員の75%は、Brexitに反対だと言う。
英国国民が、投票結果に後悔し始めて、再投票要求の署名が350万人を超えたと言い、ロンドンは独立を画策し始めて、スコットランドは、EU残留派なので独立のための最国民投票を実施すると言う。
しかし、国民投票を実施して、UKの運命を決してしまった。
とは言え、これ程重要な決定を、殆ど賛否相半ばで、国民を真っ二つに分断したままで、結論を下して、民主主義を産み育てたイギリスの将来を決めて良いのかどうか。
時間が経てば、何らかの平衡状態に収束して行くのであろうが、益々、複雑怪奇になってきた宇宙船地球号の将来が危ぶまれている。