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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画「道」

2020年10月10日 | 映画
   私が大学を出て、駆け出しのサラリーマンになったときに見て、一番印象に残っているのが、この映画「道」La Stradaである。
   珍しく、何回か映画館に通った。久しぶりに、NHK BSPで見て懐かしくなった。
   しがない旅芸人のザンバノに、買われてついて行く頭の少し弱い純粋無垢のジェルソミーナとの悲しくも切ない人間模様、
   人生のスタート台に立って意気に燃えていた筈の私を締め付けて離さなかった、生きると言うことの尊さを叩き込んでくれた貴重な映画であった。
   「鉄道員」「ニュー・シネマ・パラダイス」・・・イタリア映画が好きであった。

   監督:フェデリコ・フェリーニ
   キャスト: ザンパノ(アンソニー・クイン)、ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)、イル・マット(リチャード・ベイスハート)
   音楽:ニーノ・ロータ

   フェリーニの映画は、結構見ているし、ロータの音楽は、ゴッドファーザーなどでも感激しきりであったし、
   映画俳優では、アンソニー・クインを一番よく見ているが、この映画では、フェリーニの妻でもある子供のように目をぱっちり開けたあどけない表情のジェルソミーナのジュリエッタ・マシーナのイメージが脳裏から離れない。

   感動的な映画だが、後半部のストーリーは、
   ドサ回りの旅の途中、サーカス団に遭遇し、そこで、ジェルソミーナは、ピッコロ・ヴァイオリンを奏でるマットに出会って、意気投合して、この映画のテーマ音楽ジェルソミーナをトランペットで吹くことを教えて貰う。自分勝手でこき使われ、ジェルソミーナを夜中中戸外におっぽり出して、出会った女と遊びに行ってしまうザンバノにも嫌気がさして、何も出来ない自分が何のために生きているのか苦しみを吐露すると、マットが、「世の中のすべてのものは、何かの役に立っている、この石も」と、ジェルソミーナも役に立っていて、生きる価値があるのだと教える。
   ザンバノとマットは以前からの知り合いで、何かというとマットがザンバノをからかって笑いものにするので、頭にきたザンバノが大げんかを仕掛けて、ザンバノは警察に、マットはサーカスを追い出される。ところが、ある日、ザンパノが、自動車の車輪の不具合を直しているマットを見かけて、仕返しする機会だと殴り飛ばして撲殺してしまう。
   マットの死に、放心状態となったジェルソミーナは病気になって寝込んでしまう。ザンパノは、夜も拒絶されて興行の助手にも役に立たなくなったジェルソミーナを見捨てて、休憩後道ばたで居眠りし始めた彼女に毛布を掛けて少しの路銀とトランペットを残して去ってゆく。
   何年か経って、とある浜辺の街で、興行の後、ザンバノが、ジェラードを頬張りながら歩いていると、懐かしいジェルソミーナのメロディが聞こえてくる。近づいて歌っている若い女に聞いてみると、病気の哀れな女がトランペットを吹いていたので聞いて覚えたのだが、その女は、浜辺で倒れていて間もなく儚く死んでしまったと語る。
   ザンバノは、酒場で酔い潰れて大げんかをして、「一人で良いんだ」と喚きながら、浜辺に出て、波を踏む。波打ち際から引き返して、砂地に座り込んで、しばらく放心状態で中天を仰ぎ、浜辺に突っ伏して泣き崩れ嗚咽に噎び続ける。ザンバノの姿をフェーズアウトしながら、ジェルソミーナのメロディーが悲劇の終わりを奏で続ける  Fine。
   これに男のわがまま、女の忠実、そうして人間の本当の男と女のオリジナル。これが出てこの『道』は凄い映画でしたね。と、淀川長治は語る。

   ジェルソミーナは、一度、ザンバノの勝手放題に愛想を尽かして、出奔するが、その後、見つけられて旅をしながら、少しずつザンバノに感情を持ったのか、「結婚しても良い」、「少しでも大切だと思ったことがある?」と聞くなど愛を確かめようと真情を吐露するのだが、勿論、ザンバノはケンモホロロ、相手にしない。しかし、ザンバノは、ラストシーンでは、一人でなかったことに気づいて、ジェルソミーナを思って泣き崩れる。
   淀川長治は、「人間の本当の男と女のオリジナル」というのだが、悲しくも切ない、もう一つの「愛の詩」だと思う。

   哀調をおびた悲しいニーノ・ロータのジェルソミーナが、重要なシーンに主題メロディとして、実に美しく見え隠れして流れ続けて、感興を誘い余韻を奏でる。
   マットは、ピッコロ・ヴァイオリン、ジェルソミーナはトランペット、その何とも言えない絶妙なバランスが涙を誘う。
   何故か、私の脳裏には、「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの・・・」
   室生犀星の詩が、ジェルミーナのメロディに乗って歌い続けている。
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