熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

PS:イアン・ブルマ「 For the Love of Trump  トランプの愛のために」

2023年08月10日 | 政治・経済・社会時事評論
   オランダのジャーナリスのとイアン・ブルマの「For the Love of Trump トランプの愛のために」
   どう考えても異常だとしか思えないトランプ支持者のトランプ愛について考えていて面白い。

   トランプは、米国に対する詐欺や米国人の投票権剥奪の共謀など4件の刑事罪で起訴されたばかりで、また、フロリダ州の連邦裁判所でスパイ法違反を含む40件の罪に問われ、ニューヨーク州ではセックススキャンダルのもみ消しに関連した34件の重罪に問われている。 こうした状況にもかかわらず、次期共和党大統領候補の最有力候補としてのトランプの立場は揺るぎないもののようであり、 最近のある世論調査によると、同氏は最も近いライバルであるフロリダ州知事のロン・デサンティスを37ポイントもリードしている。元大統領が刑務所に入るかもしれないということは、彼の支持者を全く気にしていない。 彼の熱心な支持者のうち、彼が何か悪いことをしたと思っている人はゼロパーセントだが、これは奇妙なことである。 さらに奇妙なのは、共和党員の43パーセントが明らかに彼を「非常に好意的に」考えていることである。

   トランプの支持の粘り強さの理由は何であろうか? 彼は一貫した議論をほとんど行っていないため、彼の議論の説得力が鍵となる可能性は低い。 彼が何を考えているのか、あるいは彼の考えが何か大した意味を持つのかどうかが明らかになることがほとんどなく、 彼は事実に無関心、あるいは事実を軽蔑さえしている。 しかし、彼が嘘をつけばつくほど、彼の支持者たちは彼をますます好きになっているようで、あたかも彼の嘘の雪崩が真実を認識する能力を麻痺させているかのようだ。人々の情報の受け取り方の根本的な変化がこれに関係していることは疑いなく、トランプ支持者だけでなく、多くの人々が、FOXニュースやその他のさらにおかしな報道機関でジャーナリストを装った詐欺師たちによって後押しされ、インターネット主導の誤った情報のバブルの中で、居心地の良い場所を見つけている。

   トランピストバブルは悲観論に深く陥っている。 バイデン大統領の下で経済は著しく回復しているにもかかわらず、共和党の約89パーセントが米国は急激に衰退していると考えている。 トランプ支持層のメンバーらは、邪悪なエリート、悪意のある移民、そして世界の糸を引いている邪悪な国際資本家集団によって引き起こされる差し迫った国家的大惨事についてさえ話している。 トランプは、自称救世主への恍惚とした賞賛と同じくらい簡単に復讐的な暴力を引き起こす可能性がある、こうした陰謀的な不安を操作する名人である。
   一般的な不安にはいくつかの理由がある。 米国の産業労働者の多くは、安価な労働力が海外に求められる世界経済の中で取り残されていると感じている。 そして、社会的および人口動態の一連の変化、非白人国民の増加、宗教的権威の低下、根深いジェンダー規範や性的および人種的階層構造への挑戦により、人々は当惑し、彼ら自身の目には権利を剥奪されたように映っている。 彼らは「自分たちの国を返す」と約束する指導者を崇拝している。
   トランプの扇動的な策略の中で最も成功しており、最も憂慮すべきことは、彼自身の法的問題を彼の支持者全員に対する攻撃として提示することである。 同氏の陣営は、最新の起訴をスターリンのソ連やナチスドイツでの迫害に例えた。 しかし、今日の米国は、ドイツを運命づけたワイマール共和国ではないし、イラクやアフガニスタンでは悲惨な戦争があったが、第一次世界大戦後にドイツ人を罰したベルサイユ条約に匹敵するものはないし、1930年に匹敵するほどの経済恐慌もない。

   おそらく最も重要なことは、トランプが最高裁判所を宗教急進派と固めることに成功したにもかかわらず、ヒトラーのようにエリート層のほとんどを捕らえていないことである。 今では若い白人男性の中には極右に惹かれていると感じている人もいるが、トランプにはナチス時代のような学生たちの支持は何もない。
   共和党がトランプを大統領候補に指名した場合、共和党のライバルを蹴散らすよりも、民主党候補となる可能性が高いバイデンに勝つ方が難しいと思われるだろう。 しかし、投獄を避けてホワイトハウスに復帰することを切望している候補者の災難を避けるために、十分な国民がよろめきがちな81歳の人物に投票するよう説得できるかどうかは、これから見ていくことになるだろう。

   さて、トランプは、「Make America great again. 」とは連呼し続けてはいるが、それも行き当たりばったりの自国主義かつ自己主義の発露であって、高邁な理想も哲学もなければ、勿論、アメリカの将来をどうしたいのか、政治的ビジョンも希薄のみならず、アメリカの魂とも言うべき民主主義など一顧だにせず、その屋台骨を根こそぎ崩壊させようとまでもしている。
   アメリカ政治の極端な二極分断化が進行し、民主主義社会の著しい不安定化の進展に、恐怖さえ感じていたのが、トランプ現象の出現によって、更に、危機意識が増幅したのだが、
   あれだけ、民主主義の根幹に触れる非合法の悪事を重ねて民主主義を踏みにじり続けてきたにも拘わらず、未だに衰えぬアメリカ人のトランプ愛が、蘇る徴候さえ感じて、恐ろしくなっている。
   「嘘をつけばつくほど、支持者たちはトランプをますます好きになっているようで、あたかも彼の嘘の雪崩が真実を認識する能力を麻痺させている」と言うアメリカ国民の愚かさ、民度の低さ、
   私も、アメリカの大学院の教育を受けたのでアメリカ人を信じたいが、雪崩を打ってトランプに傾斜するアメリカの民主主義の脆さ、アメリカ人の不甲斐なさを実感して怖くなっている。

   私事だが、トランプも建国の父ベンジャミン・フランクリンの創立したペンシルベニア大学ウォートン・スクールの同窓生であるので、私同様に、母校の中庭に立つフランクリン像を仰ぎ見ていたはず、
   フランクリンが高らかに唱い上げたアメリカの建国精神とこのフィラデルフィアで産声を上げた憲法の精神を思い出して欲しいと思っている。
   
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