熟年の文化徒然雑記帳

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PS:ダロン・アセモグル「トランプによる民主主義への脅威は増大するばかりThe Trump Threat to Democracy Has Only Grown

2024年09月04日 | 政治・経済・社会時事評論
   プロジェクトシンジケートのダロン・アセモグルの「トランプによる民主主義への脅威は増大するばかりThe Trump Threat to Democracy Has Only Grown」注目に値する。
 
   アセモグルは、本論で、トランプによる民主主義への脅威を詳細にその理由を説明して、
   トランプの米国制度に対する脅威が如何に深刻か真剣に受け止めなければならない。米国の民主主義を守る唯一の方法は、彼を倒すために民主的な手段を使うこと、すなわち、11月の大統領選挙で彼に勝つことである。民主主義は、現実世界で成果をもたらし、人々が願望を叶えるのに役立つときに繁栄する。実際には、それは経済的繁栄、安全、公平性、有能な統治、そして安定性を促進することを意味する。これは、民主主義自体への脅威を含む定期的なショックや課題に耐えるために特に重要である。と民主主義の堅持を説く。

   米国の制度は、1930年代後半のチャールズ・コフリン神父によるプロトファシストの挑戦、1950年代と1960年代のジム・クロウ法の南部における黒人公民権への抵抗、人種差別主義者のジョージ・ウォレスの1968年の大統領選挙、そしてウォーターゲート事件に耐えた後、より強くなってきた。トランプが今年11月に敗北すれば、米国の制度は再びより強くなるであろう。と言う。
   アメリカの制度は、このような困難を乗り越え、さらに強くなることができるが、しかし、それは民主主義支持勢力が結集し、システムが一般の人々にとって意味のある結果をもたらすことができることを実証した場合に限られる。
   すなわち、「トランプによる民主主義への脅威は増大するばかり」であり、すべからく、アメリカの制度、民主主義を死守するためには、11月の選挙で、トランプに勝利することである。と言うのである。

   貧困との戦い、労働者階級の生活改善、共和党からの愛国心の回復、民主主義の強化に焦点を当てたカマラ・ハリスとティム・ウォルツの経歴、キャリア、最近の選挙演説には賞賛すべき点がたくさんある。しかし、これらの美徳を脇に置いても、民主党候補を支持する十分な理由がある。結局、代替案はトランプであり、トランプは米国の制度に非常に深刻な脅威を与えているため、彼に対抗するまともな候補者なら誰でも強力な支持を受けるに値する。という。

   トランプが米国の民主主義を脅かすのは、米国の制度が規範や法律さえも破ろうとする独裁的なポピュリストに対処するように設計されていないためでもある。2017年に指摘したように、米国の有権者と市民社会は、そのような人物を阻止できる唯一の力である。米国の民主主義は2017年から2021年にかけてトランプの大統領職に耐えたが、トランプは見つけられるあらゆる制度上の弱点を利用し、すでに二極化していた社会の分裂を深め、敗北した自由で公正な選挙の結果を覆そうとした。
   2021年1月6日のトランプのクーデター未遂にもかかわらず、民主党は2020年の選挙でホワイトハウスを奪還することに成功したが、それは彼らに大きなアドバンテージ、すなわち、それはトランプ自身が無能だったからである。長年の政治規範は深刻なダメージを受けたが、民主主義は生き残った。
   大統領としてのトランプの無能さには2つの側面がある。第一に、彼は一貫性を示すことができなかった。彼の唯一の本当の目的は権力を自分の手に集中させ、家族や取り巻きを昇進させて裕福にすることだったが、それをやり遂げる規律と集中力に欠けていた。もちろん、もっと規律のある人ならもっと大きな損害をもたらしたかもしれないという恐ろしい含意がある。第二に、トランプは多くの部下から無条件の個人的な忠誠心を勝ち取ることができず、その結果、彼の最も突飛な計画や決定のほとんどが内部から暴露されたり阻止されたりした。

   残念ながら、トランプは次の5つの主な理由から、今日のアメリカの民主主義にとってはるかに大きな脅威となっている。
   第一に、彼は怒りを募らせるばかりで、それは権力を自分の手に集中させ、それを敵に対して行使する決意を強めることを意味する。彼がホワイトハウスに戻れば、彼はより凶暴になるだけでなく、個人的な目的を追求する上でより一貫性を持つようになる可能性がある。
   第二に、トランプとその思想的同調者たちは、すでに暗黙の統治計画であるヘリテージ財団のプロジェクト2025で行ったように、高官および中堅職員の任命にもっと多くの考えと精査を注ぐだろう。トランプはこの包括的な政策の青写真を放棄すると主張しているが、これはすでに政権の人材候補を見極めるための貴重なツールとなっている。ヘリテージ財団の暗いビジョンを支持することはリトマス試験であり、今度は内部告発者や民主主義の擁護者が「部屋の中の大人」として機能できないようにする。
   第三に、共和党は今やトランプの個人的なカルトであり、つまり全国の地方共和党職員はトランプの命令に何でも従うだろう。中には選挙を不正に操作し、地方の法執行機関や公共サービスを掌握しようとする者もいるかもしれない。トランプが再び地方選挙管理官に自分に有利な票を「もっと見つける」よう要求すれば、トランプは望みをかなえるかもしれない。
   第四に、知識エリートや民主党指導者によるさまざまな誤り(国境開放や警察予算削減など、極端な「目覚めた」立場を主張するなど)により、多くの右派、中道派、非大学有権者は民主党を左翼過激派と結論付けている。民主党に愛国心が欠けていると考える人々は、ハリスやウォルツが彼らにアピールする措置を講じているにもかかわらず、トランプと決別する可能性ははるかに低いだろう。
   第五に、これらすべての理由から、トランプに反対する効果的な市民社会の行動はより困難になっている。左派が独自のイデオロギーの純粋さテストを適用し、それに満たない者を恥じ入らせてきた数年後には、大規模な反トランプ連合に加わろうとする無党派有権者や中道派共和党員は少なくなるだろう。進歩派民主党員は、彼の違憲または反民主的な行動に単独で対抗することになるかもしれないが、それだけでは十分ではない。

   これらすべての理由から、トランプの米国制度に対する脅威は真剣に受け止めなければならない。米国の民主主義を守る唯一の方法は、彼を倒すために民主的な手段を使うこと、選挙で落とすことである。

   しかし、民主主義が、これまでのように幾多の困難と試練に耐えるためには、投票用紙に良い選択肢が必須であり、人々は、問題を解決し、人々を鼓舞し、自由な制度を守るという優れた実績を持つ政治家に投票できなければならない。ハリス・ウォルツの組み合わせは、その条件を満たしており、これから、人々を動員し、民主主義への支持を回復するという大変な作業が始まる。しかし、さらに困難な作業は、貧困と不平等と闘い、両陣営の分極化と過激主義を減らし、政府が一般の人々のために働いていることを示すことによって、民主主義の約束を果たすことである。と結んでいる。

   以上が、アセモグルの見解であるが、
   先日、マーク・ジョーンズの「ファシズムはどのようにして起こるのか」について書いて、トランプ現象がナチズム台頭前夜に酷似していて危険であるという見解を紹介した。
   殆ど同じ趣旨であり、アメリカの資本主義の命運が、トランプの勝利如何にかかっており、トランプを阻止しなければ、アメリカの制度が崩壊する危険があるという警告である。

   しかし、大統領選挙論争は、「MAGA」など口から出まかせのトランプ節や個人的な批難中傷など末梢的な議論に洗脳されて、最も大切なアメリカにとっての死活問題、民主主義の死守には殆ど及ばない。
   ハリスは、この一点に絞ってでも、トランプを論破すべきである。

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