熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

東京都交響楽団定期演奏会・・・アリス=沙良・オットのリストと小泉和裕のブルックナー

2008年05月19日 | クラシック音楽・オペラ
   今夜の上野の杜は熱かった。
   小泉和裕が、都響のレジデント・コンダクター就任記念のコンサートで、大曲ブルックナーの交響曲第3番ニ長調「ワーグナー」を振り、その前に、日本生まれでドイツの新生ピアニスト・アリス=沙良・オット穣のリストのピアノ協奏曲第1番の華麗な演奏がスパークしたからである。
   それに、ピアノとかけ合う矢部和裕のバイオリンが実に美しい。

   静かににこやかに登場した乙女が、ダイナミックに銀盤をたたく激しいリズムに息を呑む。冒頭から素晴らしいテクニックを披露する沙良穣の白い長い腕の先の指先が生き物のように飛翔し疾駆する。
   終楽章の大詰の激しく銀盤を打つ華麗なサウンドに、聴衆の興奮は頂点に達し、大変な拍手で終わった時には、この20分足らずのエキゾチックでどこか東洋風で激しくも哀調を帯びたピアノ協奏曲が、壮大な宇宙の表現のように思えて感動した。
   この協奏曲は、リストのピアノ、ベルリオーズの指揮で、ワイマールの宮廷演奏会で初演されたと言うことだが、ヴィルトゥーゾ・ピアニストとしてヨーロッパに君臨していたリストのピアノ・テクニックが存分に発揮されている曲だが、多くの賞を集めてきた若干20歳の沙良穣の演奏風景は、リスト以上に華麗で美しくダイナミックであったのではないであろうか。

   ところで、この沙良穣だが、休憩の後、私の席の二つ前に座って、小泉和裕のブルックナーを聴いていた。
   演奏の時には、スマートで恵まれたスタイルで、アクアマリンのロング・ドレスが良く似合っていたが、この時は、白い上着に黒いスカートの清楚な普段着で現れた。
   素晴らしくチャーミングな美人だが、やはり、ドイツ人とのハーフなので、日本人的な雰囲気があり、席に着くと目立たない。沙良穣だと気付いたのは、ほんの数人だけである。
   ところが、この沙良穣、拍手の仕方は、顔の辺りまで手を上げて優しい仕草ながらオーバーなアクションで、ブラボーと叫ぶような一声を残して席を立って行った。

   さて、ブルックナーについては、最近演奏会で演奏される回数も増え、少しづつ興味を持って楽しみ始めた段階といったところなので、後半のワーグナー交響曲については、名前の由来に興味があった。
   ブルックナーは、ワーグナーに献呈する為に、第2番とこの第3番を持って、バイロイトのワーグナー邸まで訪れたらしいが、風采が上がらないのでコジマに門前払いを食ってワーグナーにも僅かしか会えなかった様だが、後で、楽譜を見たワーグナーが感激してベートーヴェンに到達した作曲家として褒めたと言う。
   当時嫌われていたワーグナーの推薦が仇となって演奏機会がなく、初演も、やっと、自身の指揮でウィーン・フィルで行われたらしいが、不人気で、当分、作曲をやめたと言う。

   曲については、初めて聴いたので、特別な印象はないが、そう言われれば、ベートーヴェンとワーグナーの影響が現れたダイナミックで派手な音楽と言う感じで、その重量感に圧迫される。
   演奏については、都響の金管の華麗な響きが印象に残っているが、やはり、ブルックナーの重量感は、都響の独特な味が滲み出していたのかも知れない。
   小泉和裕の指揮については、これまで、幾度か聴いているので、非常にオーソドックスで手堅い誠実な指揮振りであり、何時も、安定した演奏会と言う印象を持って聴いており、それなりに満足している。

(追記)写真は、沙良穣のホームページから借用。
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