熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画:ナイル殺人事件 (2022年 ケネス・ブラナー版)

2024年03月19日 | 映画
   アガサ・クリスティの1937年の小説『ナイルに死す』を原作とするケネス・ブラナーの監督主演の映画で、脚本はマイケル・グリーン。本作は2017年公開の『オリエント急行殺人事件』に続くブラナーのアガサ・クリスティ作品の2作目で、名探偵ポアロで絶妙な演技を披露している。
   エジプトのナイルの豪華な川下りツアー中に、新婚旅行中の夫妻の富豪の妻が何者かに殺害されて、ポアロがその謎を解いて行く。

   新婚旅行でツアーを主催したリネット(ガル・ガドット)は、莫大な財産を相続しており、ジャクリーン(エマ・マッキー)から婚約者のサイモン(アーミー・ハマー)を奪い、結婚したが、それを恨んだジャクリーンはツアーに付きまとい、どこまでも追って来てリネットを悩ませる。
   ツアーには、ポアロの知人ブークの金持ちの母や有名歌手、リネットの以前の婚約者や、管財人としてリネットの財産を着服している従兄弟など、リネットに関わりのある金持ちのメンバーばかりが同行していた。
   事件は、アブ・シンベル神殿の石壁落下から始まるのだが、ある日、ナイルクルーズの客船にジャクリーンが現れ、夜遅くにラウンジでサイモンと争ってピストルで撃つ。ジャクリーンを部屋に閉じ込め、足を撃たれて立てないサイモンを医務室に運ぶ。翌朝、客室のベッドでリネットの射殺体が発見される。
   これから、ポアロの名推理が冴えて興味深い謎解きが始まるのだが、とにかく、オリエント急行の場合もそうだが、閉鎖された乗り物、すなわち、籠の鳥の中の訳ありの乗客を虱潰しに取り調べるのであるから、逃げ場がなくて非常に面白い。
   事件は、元々相思相愛のジャクリーンとサイモンの共犯によるもので、二人はリネットの財産を狙っていて、リネットがサイモンを奪って結婚するよう仕向けて結婚させたのである。ジャクリーンがサイモンを撃った弾は空砲で、人がいなくなるとサイモンは客室に走ってリネットを殺し、改めて自分の膝を撃つ。ポアロに、全てを見抜かれたサイモンとジャクリーンは、その場で抱擁しながら体を撃ち抜いて果てる。

   私はエジプトには行ったことがないので分からないが、この舞台セットは、アブ・シンベル神殿のほか、船も再現されて、イギリスで撮影されたと言うことだが、アブ・シンベル神殿など写真や動画で見る情景と同じ臨場感タップリで、ナイル風景なども詩情豊かで興味深く愉しませて貰った。
   アガサ・クリスティは、夫が考古学者であり中東にも行っているので、この辺りの古代遺跡は熟知していたのであろうから、原作を読めば面白いかも知れない。娘二人は、大のアガサ・クリスティ・ファンだったが、私は推理小説が苦手で、クリスティもコナンドイルも読んだことがない。

   この映画も、ポアロに興味があったと言うよりも、ケネス・ブラナーの映画であるから、WOWOW録画で見たのである。
   ケネス・ブラナーは、ロンドンのバービカン劇場で、「ハムレット」の舞台を一度観て、著書「私のはじまり」を読んで、シェイクスピア経由でファンになったのだが、とにかく、シェイクスピアではトップアーチストであり、その後、映画を注視して観ているが、凄い芸術家だと思っている。
   とにかく、立て板に水、畳みかけるような明晰かつ爽やかなブラナーのポアロの推理と謎解きが心地よく、楽しい映画である。
   
コメント
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