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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

何時まで経っても未来の国ブラジル

2018年07月13日 | 政治・経済・社会
   今朝の日経に、イアン・ブレマーのコラムに、「中南米、政治・経済の危機深刻」が掲載されていた。
   ベネズエラが大変な状態であり、メキシコの新展開に注目されているのは分かるのだが、末尾に、ブラジルの国情不安についても記述されていた。

   ブラジルでは10月、大統領選が実施されるが、行方はまったく不透明だ。と言うのである。
   先のジルマ・ルセフ大統領が、弾劾後罷免されて、その後を継いだテメル大統領も、収賄をはじめ汚職疑惑と、経済の伸び悩みに直面して風前の灯火。
    ブレマーによると、財政規律を重視し、長期的に経済を立て直すはずだったテメル氏の改革は遅々として進んでいないようにみえる。5月からのトラック運転手によるストでは、国全体の活動が停止した。政府は、(ストのきっかけとなった)国際原油相場にあわせて燃料価格を変動させるしくみを含め、政策を再考せざるを得なくなった。凶悪事件の多発により、リオデジャネイロ州では軍が警察に代わって治安維持にあたっているという。
   世論調査で支持率が高い大統領候補は、収賄で有罪となり収監されている(出馬は絶望的な)ルラ元大統領と、軍出身で過去の軍事政権などを称賛する極右のボルソナロ下院議員だ。6月の調査によると、ブラジルの16~24歳の60%以上は、可能であれば国を離れることを希望しているという。ブラジルのような国は、いずれもかつてもっと深刻な危機に直面した経験があるが、中南米には、将来が明るい国は皆無のようにみえる。と言うのである。

   私が、ブラジルのサンパウロで仕事をしていたのは、1974年から1979年。
   軍政権下であったにも拘わらず、ブラジルブームに沸いて、日本企業が挙ってブラジルへラッシュした頃で、未来の国と言われ続けていたブラジルが、本物の経済大国に躍り出たと、世界中が、ブラジルの快進撃に目を見張ったのである。
  しかし、石油危機の影響もあって、すぐに、ブラジルブームも終息して、すぐに、未来の国に戻ってしまい、多くの日本企業が退却を始めた。
   しかし、石油故に辛酸を舐めた教訓をばねに、一気にエタノール車を開発し、広大な海底油田を開発するなど、ブラジルの産業力とテクノロジーの凄さに感嘆したのを覚えている。

   2001年、ジム・オニールによってコインされたBRIC's人気で、再び、有望な新興国の筆頭として、ブラジルが注目されて、ブームに沸きかけたが、その後は、鳴かず飛ばずで、
   世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)2017年度の順位は、第8位で、フランスとイタリアの間で、ロシアよりは上だが、インドに後れを取っている。
   天然資源豊かで広大な国土に恵まれて、先端技術も含めてそれなりに高度な産業基盤を維持した民主主義国家であり、中国並みとは行かなくても、インド程度に経済成長しておれば、今や、日本をも凌駕するような経済大国に踊り出た筈だと思うのだが、何度も挫折を経験して、アップダウンを繰り返していて、いまだに、相変わらず、未来の国に止まっている。

   何故、ブラジルが、中進国の罠を突破して、先進国の仲間入りが出来ずに、足踏みをしているのか。
   あれもこれも、すべて、為政者や政治家、トップに立つリーダーのモラルや公徳心の低さ故ではなかろうか。
   
   7年前に、群馬県立女子大学で、ブラジル学と言うか、ブラジルにつて、講義をすることになって、色々資料を準備する中で、ニューヨーク・タイムズ記者のラリー・ローターの素晴らしい新著「BRAZIL ON THE RISE」をネタ本にして、要約しながら20数編自分なりのブラジル観を綴って、このブログ”「BRIC’sの大国:ブラジル」(左蘭カテゴリーのこの部分)に収録し続けた。
   この記事で、ブラジルの特質と言うか、神はブラジル人だと思わせる程の別天地とも言うべきブラジルの良さ悪さ、天国でもあり地獄でもあるブラジルの実像を書いたつもりだが、
   幸か不幸か、建国時にビルトインされたポルトガルの強烈な支配者為政者本位の社会構造なり、ラテン系に今も残っている独特な、法化社会から程遠いアミーゴ社会的なモラル軽視のブラジル気質が、政治経済社会に、今でも、色濃く作用しているから、政治が迷走し、国の舵取りに齟齬を来すのであろう。
   独裁国家や専制国家ならいざ知らず、大統領や大臣、有力政治家たちが、頻繁に、汚職や法律違反で、逮捕追放されるような民主主義国家では、何処か、タガが外れているのである。
   ブラジルに4年間住んで、ブラジルファンである私には、やはり、名実ともに資質の整っているブラジルが、一等国に踊り出てくれることを希っている。
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