熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ビジネスにはT型ないしΠ型人材必須?

2014年07月29日 | イノベーションと経営
   これも、「イノベーターのDNA」でのトピックスだが、
   世界で最もホットなイノベーション・デザイン企業のIDEOのイノベーション・デザイン・チームは、T型の専門知識を持つ人材で構成される機能横断チームだと言う。
   T型とは、深く精通した専門分野(タテ軸)を一つ持ちながら、多くの分野で幅広い知識(ヨコ軸)を持つ人材なのだが、IDEOでは、この専門的なスタッフが、デザイナーやエンジニア―やIT技術者などは勿論のこと、哲学や宗教学、経済学や地政学などあらゆる分野に亘った混成集団であることでも脚光を浴びていて、正に、クリステンセン教授の優等生の様な会社なのである。

   
   もう少し、IDEOについて記すと、デザイン・ファームなので、どのチームにも、デザインに深く精通したメンバーが一人はいるが、同時に、
   「ヒューマン・ファクター」人類学や認知心理学と言った行動科学の素養があり、ユーザーの視点から新製品やサービスの望ましさを判断できる洞察力を具えた人材、
   「テクニカル・ファクター」新製品やサービスに使えそうな幅広い技術について専門知識を提供できる人材、
   「ビジネス・ファクター」革新的な新製品やサービスが、商業的に成り立つかどうかを判断するのに必要な専門知識を提供する人材
    を、配置するよう心掛けていると言う。

 
   IDEOは、幅広い専門分野から優秀な人材を採用し、お互いに補い合う専門知識を持った人材でチームを組んで、問題を多様な観点から眺めて、イノベーションを誘発し、望ましく実現可能な新製品や新サービスを生み出し続けているのである。

   ところが、同じくイノベーターとして最たる企業であるアップルは、一寸、ニュアンスが違う。
   ジョブズの言葉を借りれば、
   「マッキントッシュを画期的商品たらしめたのは、この製品を手がけたのがミュージシャンであり、詩人であり、アーティストであり、動物学者であり、歴史学者であったこと、そして、彼らがたまたま世界最高のコンピュータ・サイエンティストであったことである。」
   「アップルが、iPadのような製品を生み出せるのは、常に、テクノロジーとリベラル・アーツの交わるところに立ち、二つの世界の良いところを組み合わせようとしてきたからである。」と言っていて、ダブル・メイジャー、すなわち、Π(パイ)型人材について語っている。

   私にとって、ジョブズの言葉の中で、最も感動的なものは、やはり、イノベーションにおいても、企業経営においても、重要なのは、テクノロジーとリベラル・アーツの綜合であると言うことで、この哲学は、勿論、ドラッカーの経営学においても、クリステンセンのイノベーション論においても、核心中の核心であって、かくあればこそ、ジョブズが、イノベーターの神様としての生を全うできたのだと思っている。

   さて、Π型人間についてだが、これまでに、何度も議論して来ているので、結論を急ぐことにする。
   このΠ型人材、すなわち、ダブル・メイジャーの人材だが、先のT型人材の説明を引用すると、「深く精通した専門分野を二つ持ちながら、多くの分野で幅広い知識を持つ人材」と言うことになり、これこそは、企業の経営者に最も求められるべき資質であると思っている。
   多くの分野で幅広い知識と言う言葉を、豊かなリベラル・アーツの素養と置き換えられるのであれば、更に、望ましい。

   大学の専攻が、理工学関係であれば、大学院でMBAを取得する、また、大学の専攻が文系であれば、日本では無理かもしれないが、少なくとも、更に、MOTなり理工学系の学位を取得すると言った形で、文系と理工系の異質な二分野の専門分野を持ったΠ型人間を目指すことである。
   欧米や新興国のトップ・リーダーには、このケースのΠ型経営者が結構多い。
   会社法が、どんどん、変わって来ているのだが、法の要求するのは、プロの経営者による企業の経営であって、経営者は、プロでなければならない筈であるから、この程度の知的装備は、絶対に必要であろう。
   専攻が理工であったから、バランスシートが読めないとか、法化社会の由縁さえ理解できなくてコーポレート・ガバナンス意識欠如と言ったことは、絶対に、許されない筈なのである。
コメント
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