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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

二世議員や世襲経営者が日本の活力を削いでいる・・・慶大片山善博教授

2008年07月17日 | 政治・経済・社会
   前鳥取知事片山善博教授が、INNOVATION SUMMITの「地方からの再生と日本の将来」と言うテーマの講演で、知事は2期8年で十分であり、やり残した事は殆どないが、唯一出来なかったことは、地域格差の解消、すなわち、地方経済の再生、活性化であったと言って、その原因は、まず、地域経済の構造的特徴にあると語り始めた。
   その特徴とは、
   ・根強い官依存体質―土木建築業、中小企業、農業などは典型的
   ・地場産業の下請け体質―スマイルカーブの「川中」
   ・経営者の世襲による進取の気性の衰退―有能な人材が地場の企業に就こうとしない だと言う。

   元々自治省入省の自治官僚であるから、政府役人の立場と地方行政トップとしての立場を知り尽くしているので、全般に亘って極めて迫力のある論述が展開されて、非常に明快であった。
   結論としては、戦後の欧米へのキャッチアップ戦略・戦術として効果のあった役人天国とその施策が、成熟した今日の日本社会においては、悉く足枷となり、日本の経済社会の発展を阻害していると言うこと、この古いレジームからの脱却なくして日本の再生はありえないと言うことであろうか。  

   地方の経済主体を「経営のプロ」ではなく「補助金もらいのプロ」に仕立てた政府の産業政策、
   特に、市場を見ないで補助金などの政府の施策の動向ばかりを見てきた農家・農業団体を育ててきた農政、
   補助金の「受け皿」と化した商工団体の中小企業政策などのひどさは、地方産業の自立自活力を大きく削いでいる。

   自治体の「土建化」と「借金漬け」を進め、「貧困の罠」に陥らせた地方財政対策や、
   自治体を「すずめの学校」にしようとする総務省の「行政指導」、
   自治体を断片的に支配し、各省別々に従属させる行政が、トータルでものを考えることを妨げるなど、
   自治体から「考える力」を奪い、「愚民化」を勧めてきた政府の施策が、地方を益々疲弊化させて活力を削いできた、と言うのである。

   社会保険庁や厚労省の役人の不正、財務省役人の居酒屋タクシー、国交省の談合体質等々、毎日のように役人の不祥事がメディアの話題をさらっている等、高い公僕としての志を失くした官僚の体たらくが、これほどまでに揶揄されることも珍しいが、やはり、市場原理が働かなかった日本の官僚制社会主義体制に、根本的な欠陥がビルトインされていたのかも知れない。

   片山教授は、良かれと思ってやった政府の施策が裏目に出た結果だと優しく言っていたが、私自身も、志の高い有能な役人がいることを知っており、総て役人が悪いとは思っていないが、現状を考えれば、国会議員の数も含めて、役人の数を半減するなど、むしろ、役人の仕事を極力減らして、規制や統制等徹底的に緩めた方が日本のためになると思っている。
   ところが現実は、個人情報保護や内部統制など法制度も含めて、逆に、どんどん日本人の活動や行動を締め上げる方向に進んでいて、益々、役人の仕事や裁量を増やしており、歯車の逆行も甚だしい限りである。

   話がそれてしまったが、私が問題にしたかった片山教授の論点は、地方産業の経営者の世襲による進取の気性の衰退と言う問題で、
   はっきりとは言わなかったが、最近の総理大臣は、森さんを除いて、また、国会議長や副議長の過半も、総て2世議員であり、このことが、極めて日本の政治の質を低下させているのではなかろうかと言う問題の指摘である。
   
   現実には、国会議員の相当数が、2世議員である現状だが、これは、日本の選挙、特に、地方有権者の指向性が色濃く反映されており、跡継ぎとして議員の子孫を当然視する風潮による。男子がいなければ、政治のセも知らないような立候補選挙権を得たばかりの娘を擁立し、これを、また、嬉々として応援して選出すると言う日本国民の民主主義とは程遠い政治感覚と言うか、村政治の延長が問題である。
   結局、国民、選挙民が賢くならない限り抜け出せない罠であるが、決して褒められない日本だけの傾向ではなかろう。

   片山教授は、地場産業では、どうせ息子が跡を継ぐので、優秀な人材が地元に残らないと言うことだが、これは、地場産業に限ったことではなく、地方の大学を卒業した若者は、殆ど、その地方から離れて行く現実を見れば、地方に活躍の場がないからである。
   このグログでも書いたが、同族企業やダイナスティ企業については功罪があり、同族企業にも極めて優れた利点があり、その為に隆盛を誇っている内外の優良企業が結構あるのである。
   しかし、ビジネスに関する限り、余程の準備とセットアップがない限り、子孫が、創業者のようにイノベイティブで、企業家精神旺盛で優秀な後継者となるケースは稀であると考えた方が現実的かも知れない。

   片山教授は、機会の均等を金科玉条とする義務教育の世界で、世襲制を企図するような破廉恥な大分の事件は言語道断だと切り捨てる。

   恐れ多い話で例証するのは気が引けるが、天皇制度は有史以来の伝統だから貴いのだ、絶対に変えてはならないと言う議論もある。
   
   
コメント
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